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第162回 割安でも買われない理由(資本)
前回、簿外債務について説明しました。
今回は「資本」について説明したいと思います。
以前、第82回で貸借対照表の説明をしているので二度目になりますが、もうちょっと詳しく説明したいと思います。
「資本」は「貸借対照表」の右側部分に書かれているものです。
今回も3321ミタチ産業の2024年5月期の決算短信を例に使います。
6ページに資本の部が書かれています。
この「資本」は上下で大別すると「負債の部」と「純資産の部」に分かれています。
「資本」とは、「資産」の本当の所有者という意味であり、企業が所有している資産の所有者を教えてくれます。
「負債」とは、元々「他人資本」と言われていました。
「他人資本」、つまり他人のものという意味です。
「純資産」とは、今でも「自己資本」と言い換えられます。
「自己資本」、つまり自分のものという意味です。
「負債」は更に「流動負債」や「固定負債」に分けられます。
ここの「流動」や「固定」は、「流動資産」や「固定資産」の時と同じ意味になります。
つまり「流動負債」は1年以内に返済しなければならない負債のことであり、「固定負債」は1年以内に返済する必要が無い負債ということです。
例えば3321ミタチ産業の「流動負債」は、5,125,921千円あります。
これに対して現預金同等物(流動資産から棚卸資産を控除した額)は、10,859,807千円と流動負債の2倍近くあります。
つまり3321ミタチ産業は、「流動負債」を返済する為の原資が手元にあると言える訳です。
ところが仮に、現預金同等物が1/10の1,000,000千円程度しかなかった場合は、新たに現預金4,000,000千円を調達しなければ返済不能、俗にいう不渡りとなってしまいます。
つまり、銀行からの借り入れ、増資、資産の売却など、何らかの資本活動が必要になると言える訳です。
ちょっと話が逸れましたが、「負債」で確実に言えることは、「その金額が確定している」ということです。
この前までの「資産」と違い、「負債」は確定しています。
- いやいや、利息が付いているから確定していないでしょ -
そう思うかもしれませんが、利息の元となる利率は当初の契約で決定しているので簡単に計算できます。
だから、その日、その日の負債額は、1円単位まで企業側は分かっているのです。
ここからが大事なところです。
「資産」の総額と、「資本」の総額は、必ず一致します。
そして、「負債」は増減しません。
そうなると、「資産」が増減した時は、全て「純資産(自己資本)」の増減になるということなのです。
つまり、「固定資産」などの計上額が、実際の売却額より少なければ「純資産(自己資本)」が減少し、実際の売却額より多ければ「純資産(自己資本)」が増加する訳です。
ですから、「1株当たり純資産」は「固定資産」の評価額の変動に応じて変動するということになります。
ここで、以前説明したネットネット株のことを思い出して下さい。
特に、かぶ1000さんのネットネット株の求め方を思い出して下さい。
彼は、評価額が幾らになるか分からないような資産を抜いて、確実に現金化できるもののみの金額から負債を引いています。
つまり、株主が確実に手に出来る現金を計算している訳です。
ただ、簿外債務は加味されていないのは、固定資産や在庫の実際の売却額が不明であるのと同様で、分からないもの同士で差引き「0」と考えているからでしょう。
私も、この考えには賛成します。
ですから、「株式の適正価格」は、かぶ1000さんのネットネット株の求め方の数式で良いと考えます。
そこで、3321ミタチ産業の適正価格を計算すると下記のとおりになります。
流動資産 - 棚卸資産 + 投資その他の資産 - 負債 = 株式の適正価格
18,091,413 - 7,231,606 + 704,467 - 5,641,666 = 5,922,608 千円
この株式の適正価格を発行済み株式数で割ります。
すると、1株当たりの株式の適正価格が出て来ます。
5,922,608千円 ÷ 7,965,401株 = 743円54銭/株
ということで、1株あたりは743円54銭になると言うことです。