第61回 自己資本比率
四季報の中で、真ん中上段に、自己資本比率が書かれた箇所があります。
自己資本比率とは、総資本の中で自己資本の占める割合のことです。
総資本には、自己資本以外には、他人資本というものがあります。
他人資本=他人のもの=返済しなければならないもの=借り入れ=負債
このようになり、他人資本とは負債のことになります。
ですから、自己資本と言うものは、返済しなくてよい資本ということになり、つまりその企業自体の純粋な財産と言うことが出来る訳です。
このことから、自己資本比率が高いと負債が少ない、自己資本比率が低いと負債が多いという意味になります。
- 負債は良くないから、自己資本比率は高ければ高い方が良い -
自分の生活に当て嵌めたら、単純にそう考える人が多いでしょう。
確かに、負債が多いと、支払う利息も多くなり、不渡りを出すと倒産してしまいます。
株主として、『倒産=株式の価値「0」』となる訳ですから、最も避けるべき事象です。
だからと言って、盲目的に自己資本比率の高い銘柄だけに投資するというのは、余り褒められるべきものではありません。
俗に、「自己資本比率が40%以上あれば倒産しない。」と言われています。
これは、あくまで目安と考えてください。
「黒字倒産」という言葉があるように、赤字で無くても倒産することはあるのです。
ですから、自己資本比率が40%以上あるから、絶対に大丈夫とは言い切れないのです。
まぁ、「40%以上は100%と同じ」という程度の意味だと理解してください。
- ならば、自己資本比率は50%程度が良いのか -
そう聞かれそうですが、100%よりは50%の方がマシだと答えます。
良いとは言いません、マシだということです。
実は、自己資本比率が低いと言うことは、財務レバレッジが効いているという意味にもなるからです。
企業が活動する中では、当然ながら必要となる資金があります。
自己資本比率100%なら、その資金は株主が出資してくれたものと、過去に稼ぎ出した利益の総和ということになります。
今手元にある資金だけで、企業を成長させようと考えているという訳です。
その資金が1億円なら、1億円だけを遣って成長しようと言うことです。
それに対して、自己資本比率50%ということは、半分が借入金ということになります。
先ほどの例と比較すれば、手元資金も含めて倍の資金があり、その資金で企業を成長させようと考えているという訳です。
つまり、1億円+1億円=2億円を成長のために投資するということです。
このことを小売店で単純に考えれば、店舗展開が倍の速さで進むと言うことです。
ここにも当然ながら複利効果が出るので、5年後、10年後には、全く違った企業の形に成長していると言える訳です。
理解してもらえたでしょうか!?
ただ、店舗展開も全国隅々まで行き渡ってしまえば、新規出店の余地が少なくなります。
そうなると、「お金が足りないから出店できない」から「場所が無いから出店できない」へと変化します。
そうなれば、当然ながら借入額は減少し、自己資本比率は高くなってしまいます。
つまり、成長企業は自己資本比率が低くなり、成熟企業は自己資本比率が高くなる傾向がある訳です。
ですから、成長企業を探すに当たっては、新興企業であっても自己資本比率が高過ぎる企業は内容を確認するべきです。
成熟企業で自己資本比率が低い企業は、信頼できそうに見えても、しっかりと内容を確認するべきでしょう。
また、自己資本比率は、業種によっても変わります。
飲食業や宿泊業などの日銭のやり取りをする業態は、運転資金の確保が必要となることから、自己資本比率は低くなる傾向があります。
不動産開発業は、土地の仕入れから、建設、販売までに相当の日数が必要となるので、こちらも借り入れで賄うことになり、自己資本比率が低くなります。
反対に、情報センター等大規模な固定資産が必要となる情報通信業などは、設置後は仕入れなどの運転資金の確保が必要となることは無いので、借り入れの必要性が低くなり、自己資本比率が高くなります。
そして最後にですが、現在のように日銀の金融引き締めの動きになれば、自己資本比率の低い企業の株価は売られることになります。
金融引き締めは金利上昇と同義であることから、利払い負担が増えることが嫌気されるためです。
ですから、金利上昇局面では、新興市場は挙って売られます。
ところが、中身が充実している企業は連れ安しているだけで、何の心配もありません。
ここから更に売られることがあれば、それは「risk」ではなく、明らかな「chance」と捉えるべきでしょう。
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