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第203回 「risk」を敬遠し過ぎる理由

先日、投資未経験者の人たちと話す機会がありました。
やはり彼らが投資を敬遠する原因は、値下がり「risk」を過大に評価してしまうという洗脳を受けているからでした。
「risk」は、ありとあらゆるものに存在しているのですが、現代の日本人はそのことをほぼ自覚していません。
殆どの人は、国や会社が「risk hedge」してくれているので、「risk」を意識する必要が無い社会でぬくぬくと生きているのです。

しかしながら、我々一人一人の人生は、国が保障してくれるようなことは無くなってきました。
年金額が減少し続けているのが、その理由です。
結局は、自分で道を切り拓かなければならないのです。
ある瞬間、「後は自分で!!」そう言われて、大自然に放り出されるような状況が目に浮かびます。
ですから私は常々、どのような時でも「狡兎三窟」を心がけます。
いれが、「high-risk」社会で生き抜くために必要な手段だと、信じて疑わないからです。

さて、人生の「狡兎三窟」は、「仕事」「趣味」「投資」だと、前に書きました。
ですから少なくとも私の周囲にいる投資未経験の人たちには、是非とも投資を始めて欲しいのです。
が、始めれば良いと言うものではありません。
しっかり学習して、勘違いしないで正しく始めて欲しいのです。


- どうやって説明したら良いのだろう・・・・・・ -

こういうときに、いつも悩むことです。
そこで、思いついたのが以下の説明でした。

元々、昔の人の社会は、物と物とによる等価交換が原則でした。
ただ、物と物とによる交換では、互いに交換しても良いと考えないと成立しないことが大きな欠点でした。
そこで、この欠点を補うための中間財として、「お金」が発明されます。
交換したい自分の物を先ずは「お金」と交換し、その「お金」を欲しい物と交換すれば良くなったのです。
つまり、交換できないという「risk」が低くなった訳です。

ところが、この「お金」の誕生は、新たな「risk」を生み出しました。
それは、物の価値が細かく分類されるようなったことです。
つまり、等価の認識が厳密になり過ぎて、逆に交換し難くなるということです。

例えば、「魚」を「肉」と交換したい人がいました。
そこで、持ってきた「魚」を「お金」と交換しました。
この「お金」は1,000円でした。
そして、「肉」を持っている人を見つけて「お金」と交換しようとしたのですが、1,000円では交換してくれず、1,200円を出すように言われました。
実は、「肉」を持っている人は「魚」と交換したかったらしく、「魚」か「お金」1,200円分か、どちらかと交換するつもりでいたのでした。
このように、「お金」の誕生によって、「お金」が物差しと化して、物の価値を細分化させてしまったのです。

そして現代人は、この細分化された物差しによって、振り回されています。
売る方は1円でも足りなかったら売りませんし、買う方も1円でも安いものを買おうとします。
物々交換の時代は、良い意味でどんぶり勘定でした。
それが現代では、一切なくなってしまったのです。

更に、1円にこだわり過ぎるあまり、物の評価額に対して過敏に反応するようになりました。
今年も、鳥インフルエンザが猛威を奮う「risk」が高まっています。
既に猛暑の影響で、卵価格は上昇傾向にあります。
この冬は、更に価格が上昇しそうです。
1円でも過敏に反応するのに、100円も値上がったら、当然ながら食べる量を減らすようになるでしょう。

ですから、現代人は、1円でも損をする、値下がりすることを嫌がるようになっています。
当然ながら、それを大きな「risk」と考えているからです。
しかしながら、本来の「risk」は、何だったのでしょうか、思い出して下さい。
それは交換できない「risk」だったはずです。
1円という単位を意識し過ぎて、交換できなくなることの方が「risk」が大きいことを理解するべきでしょう。

さて、ここからが本題なのですが、株式の特性として、その価格は簡単に上下に動くというものがあります。
この特性は、株式取引の安全性を担保するために必要なものです。
その瞬間、瞬間に、投資家それぞれが最適だと自分が考える価格で取引することが出来るからです。
ところが多くの国民は、このような価格形成に参加するという経験は殆どありません。
価格は、一方的に与えられるものだと考えているからです。
ですから、日々目まぐるしく変わる価格について行けないことから、それを値下がり「risk」と考えて投資に二の足を踏む訳です。

本来、価格と言うものは、目まぐるしく変わるものです。
それが安定的に見えるのは、大企業や大金持ちに支配されている社会で、守られていると勘違いして生きているからです。
大企業や大金持ちが価格を安定させるのは、その方が自分たちにとって都合が良いからです。

そして、これからの時代、物価は上昇します。
物価上昇と言うのは、「お金」の交換価値が下がるということです。
「お金」の交換価値が下がるということは、これまで交換出来ていたものが出来なくなったということです。
つまり、1円以上を損することと同じ事態が生じてしまいます。
ですからこれからの時代、「お金」を持ち続けることは、最も嫌な値下がり「risk」を被ることになる訳です。

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