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第84回 営業CFの間接法

キャッシュフロー計算書には、「直接法」と「間接法」の2種類の作成方法があります。
直接法とは、営業収入、原材料または商品の仕入れによる支出など、主要な取引ごとにキャッシュフロー総額を計算する方法のことです。
間接法とは、「「貸借対照表」と「損益計算書」に記載されている数字を基に計算する方法のことです。
個々の取引は一般的に公表されていないので、投資家が「直接法」で数値を求めることが出来ません。
ですから、基本的に「間接法」を用いて数値を求めることになるのですが、この「間接法」を知ることによって、「キャッシュフロー」に内在する問題点を知ることが出来ます。

例えば、「営業CF」は、以下の数式で求めることが出来ます。

➀当期純利益(+)    or 損失(-)額
②減価償却費など非資金費用(+)
③売上債権の増加(-)  or 減少(+)額
④棚卸資産の増加(-)  or 減少(+)額
⑤その他流動資産の増加(-) or 減少(+)額
⑥購入債務の増加(+)  or 減少(-)額
⑦その他債務の増加(+) or 減少(-)額

つまり、「営業CF」のプラス(+)を大きくするには、以下の条件になります。

➀当期純利益(+)が多ければ多いほど良い
純利益と言うものは、単にキャッシュの増加と言い換えることが出来るので、利益額が多ければ多いほど、キャッシュが積み上がると言えます。

②減価償却費など非資金費用(+)が多ければ多いほど良い
ここで「非資金費用」とは、現金支出を伴わない数字上の費用のことです。
減価償却やのれん代を考えて貰ったら分かるように、減価償却などは資産価値を減少させることから、当期純利益上はマイナス(-)で計算されます。
しかしながら、実際に支払う訳では無く、キャッシュが減る訳では無いため、計算上マイナスされた分が、キャッシュ上プラスとなる訳です。

③売上債権が少なければ少ないほど良い
売上債権は、未収金に分類されるものです。
つまり、売ったけど、未だ収入していないお金ということで、当期純利益には計算されていますが、キャッシュとしては未だ回収できていません。
ですから、売上債権が増加すればキャッシュはマイナス(-)になるので、少なければ少ない方が良いのです。

④棚卸資産が少なければ少ないほど良い
棚卸資産は在庫のことで、販売または消費する目的で仕入れたものがまだ社内に残っているものです。
つまり、商品として作ったけど、売れ残っているのが棚卸資産なので、売れればキャッシュへと変わるのですが、売れなければ不良在庫となり、ゴミへと変化してしまいます。
ですから、棚卸資産が増加すればキャッシュはマイナス(-)になるので、少なければ少ない方が良いのです。

⑤その他流動資産が少なければ少ないほど良い
その他流動資産とは、当座資金、棚卸資産以外のもので、1年以内に現金化されるものです。 前渡金、短期貸付金、未収入金、仮払金、立替金などが、これに該当します。
売上債権の時に説明した通り、全てが未収金とみなしてよいものです。
ですから、当期純利益には計算されていますが、キャッシュとしては未だ回収できていないため、少なければ少ないほど良いのです。

⑥購入債務が多ければ多いほど良い
購入債務は、売上債権と真逆のもので、買ったけど、まだ代金の支払いをしていないものです。
ですから、当期純利益には計算されていますが、キャッシュとしては未だ支払っていません。
つまり、購入債務が増加すればキャッシュはプラス(+)になるので、多ければ多い方が良いのです。

⑦その他債務が多ければ多いほど良い
その他債務は、主に銀行からの借り入れだと考えてみてください。
「借金が増える = 手持ち現金が増える」ことですから、その他債務が増加すれば、それだけ手持ち現金が増えていることになります。
また、未払金も含まれます。
未払金は未収金と逆だと覚えてください。

ですから、「営業CF」に大きな変化があった時は、この細分化された条件のどれが変化したかによって、影響を読み取ることが出来ます。
営業利益は大きいのに、「営業CF」が小さい時に、「棚卸資産」が大幅に増加していたら、売れ残りが急増していて近い将来に損失計上の「risk」があることが分かります。
同じように、「売上債権」が急増していたら、本当に売れているのかを確認する必要があります。
例えば、最初の3ヶ月無料のお試しで契約し、それを売上計上しているなんてことがあるかもしれません。
このようにして、投資しようと考える企業位は、細分化された「営業CF」の数字を確認して「risk hedge」を図るべきでしょう。

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