第36回 ゆでガエルの法則
「ゆでガエルの法則」とは、危険が迫っているにもかかわらず変化がゆるやかなためになかなか気がつかず、気づいたときには手遅れになっている、という状況をあらわす造語です。
カエルも、熱湯に投げ入れれば、即座に熱くて逃げだします。
ところが、水をゆっくり過熱していると、熱さに気づかず、気づかない間に死んでしまうということです。
まぁ、さすがにカエルも、実際にはそこまでアホではなく、途中で飛び出してしまいますが・・・・。
この「ゆでガエルの法則」は、株式投資をしていれば、常に実感できます。
損切り前提の短期投資を行っている時、その銘柄が大きく下がれば、損切りするのに躊躇することは無いでしょう。
ところが、評価額が1,000円ずつとか、呼値で1円ずつとか、直ぐに戻りそうな範囲で下げ続けられれば、なかなか損切りすることが出来ません。
「明日反騰すれば、直ぐに買値に戻る」と考えられるからです。
その結果、株価はジリジリと値を下げ、気が付けば損切りする機会を失っていたなんてことになります。
投資家であれば、誰でも1度はある経験ですね。
このような小さい問題でも、積み重なれば大きな問題に育ってしまうことは、投資以外でも良くあります。
前回も触れた日本の失われた30年。
日本国内だけを見れば、リーマンショックなど世界と同じように景気の波はあったものの、比較的安定した年月を送れていました。
しかし、日本の国力が相対的に低下したことで、日本全体が貧しくなってしまっています。
こうなることは、多くの投資家が気付いていたくらいです。
政治家が気づいていないなんてことは無いでしょう。
もしそうなら、それは無能すぎます。
他にも、最近になって、やっと大問題と認識された「少子高齢化」です。
この問題は、私が小学生の頃から問題視されていましたから、既に半世紀も前の話です。
私が小学生になる前の頃から、「少子高齢化」という言葉はありました。
延々と言われ続けていたものの、この間、ほぼ何の対策も打たれなかったのは、明確に「ゆでガエルの法則」でしょう。
「ゆでガエルの法則」の最大の問題は、手に負えなくなるまで気づかない、または対策しないことにあります。
ゆっくりと悪化していて、まだ大丈夫、まだ大丈夫と考えることが「ゆでガエルの法則」なのですから、仕方ないと言われれば仕方ないです。
でも、気づいている者からすれば、対策しようとしない人たちがこれほど無能に見えることも無いでしょう。
今の我々の目から見て、最も酷いのが、年金制度です。
「少子高齢化」とリンクしている為、問題点は少子高齢化へと置き換えられますが、現実には違います。
それは、年金制度は国民生活の根本を保障する制度だからです。
その制度が、社会情勢の変化によって不安定になるようなことは、制度設計上あってはならないことだからです。
それなのに、「少子高齢化」という社会情勢の変化により、制度が改悪され続けています。
既に気づかない「ゆでガエルの法則」の時期を通り越して、誰もが気づいてしまう時期となり、ほぼ死に体になっているという訳です。
年金制度は破綻しないと言いますが、この場合の破綻は、制度は存在し続けるということです。
年金制度は破綻するという人は、年金だけで老後も安定した生活が送れないという意味で言っています。
年金制度は、社会の根幹を形成している大赤字の巨大企業と同じで、問題があっても倒産させられない状況と同じです。
これから年金を支払う若者たちにとっては、年金制度は詐欺に近い制度だと感じることになるでしょう。
このように、「ゆでガエルの法則」により悪化した状況は、小手先の対策ではどうしようもありません。
投資でじり安が続いた銘柄の含み損の大きさに気づいたとき、出来ることは大出血を覚悟して損切りするしかありません。
だから、「ゆでガエルの法則」と名前が付けられ、十二分に注意するよう警告されている訳です。
最初は小さい悪化でも、時間経過とともに複利的に悪化するのが、「ゆでガエルの法則」です。
侮るようなことをせず、被害が大きくなる前にシッカリと対策を取りましょう。
最後に一つ。
もし、「ゆでガエルの法則」から、出血を伴わず、上手に挽回する方法があるなら、是非とも教えて欲しいです。
じり安銘柄の対処だけでなく、年金制度や少子高齢化の対策にも応用できるからです。
私の経験では、大出血を覚悟して対策するか、更に状況を悪化させるか、しかないと思っています。