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第248回 放下著
「放下著(ほうげじゃく)」という言葉は、仏教用語の中でも禅語になりますので、耳にしたことがある人は殆どいないと思います。
そんな言葉をワザワザ持ってきたのは、当然理由があるのですが、その話は後段で・・・・。
さて、「放下著」の意味ですが、「一切の執着を捨てろ」ということになります。
「放下」とは、投げ捨てる、放り出す、捨て去るという意味です。
「著」は助詞であり、漢文的には置き字のような扱いで、意味合い的には命令文になると理解して下さい。
だから直訳は、「投げ捨てろ!!」となります。
さて、この「放下著」は、「従容録」の中にある言葉です。
「従容録」とは、「万松老人評唱天童覚和尚頌古従容庵録」のことで、曹洞宗で重んじられる公案集の一つになります。
曹洞宗は、日本では道元が開いた禅宗の一つと理解されています。
私の妻の実家は禅宗でも臨済宗の方なので、私個人としてこの言葉をお寺で聞いたことは無いです。
さて、この「放下著」ですが、その成り立ちには次のような話が伝わっています。
中国の高僧である趙州従諗に対して、弟子の厳陽善信が尋ねました。
「修行の甲斐あって、煩悩妄想を完全に捨て去ることができました。禅の高みに到達することができた私にとって、これから先はどのような修行をしたら良いのでしょうか?」
すると趙州は、一言だけ答えます。
「放下著(一切の執着を捨てろ)」
しかし、言われたことの本意が悟れなかった厳陽は、更に尋ねました。
「煩悩妄想を完全に捨て去り、もうこれ以上捨てるものがありません。それなのに、何を更に捨てろと言われるのですか!?」
「捨てるものが無いと言うが、まだ己を捨て去っていないだろう。さっさと捨てて来い!!」
そう言って、趙州は厳陽の考え違いを理解させたのでした。
最初の厳陽の言葉の中に、「煩悩妄想を捨て去った自分を評価して欲しい」という思いがあることを趙州は見抜いていた訳です。
師匠に評価して欲しいと思うこと自体が「煩悩」であることから、それが残っているのに「捨て去った」と思っていることが間違いだという訳です。
それを端的に著した言葉として、「放下著」だけが現代まで伝わっています。
執着を捨てるのは、非常に難しいことです。
例えば、新しく活力に満ち溢れていた国が、時代と共に活力を失い、滅亡の道を進むのは、既存の諸制度に執着するからです。
今の日本で言えば、税制、年功序列、年金制度等、制度の良し悪しに関係なく、行き詰っていると感じるものが多くあります。
そこにメスを入れて、大きく改善させることができないところが執着している証とも言えます。
同じように7201日産自動車は、過去の栄光に執着し続けています。
リーマンショック以前の2000年に入ったすぐの頃には、既に7201日産自動車は傾いていました。
ですから、仏国のルノーに支援を仰ぎ、カルロス=ゴーンがやってきた訳です。
そのゴーンを追い出して、僅か5年で再び傾いたのです。
そこで今回は、7267HONDAが救済に乗り出したのです。
7201日産自動車と言えば電気自動車と、一時期は持て囃されました。
欧州が7203トヨタ憎しで電気自動車に傾倒したことにより、昔のように7203トヨタに並んだと錯覚したのかもしれません。
しかしながら、電気自動車には色々と問題があります。
特に、国土の広い米国のようなところでは、燃費が非常に悪くなってしまいます。
欧州は狭いことから売れる市場なのですが、中国勢に価格競争で後塵を拝しているため、ほぼ競争力を失った状況に追い込まれています。
それなのに、当の7201日産自動車は過去の栄光に執着し、プライドが捨てられませんでした。
7267HONDAが求めたリストラが遅々として進まず、時間切れを憂慮した結果の子会社化の提案に逆切れして、破談にした訳です。
そもそもスピード感を持って企業経営ができていれば、これほど業績が悪化することは無かったでしょう。
そして、7201日産自動車自身が追い詰められて変わることを、7267HONDAは期待していた訳です。
ところが一切変わろうとせず、逆切れしたという愚かな結果に行きついたのです。
そもそも気位が高いだけで中身の無い人間では、誰も相手にしてくれません。
当然企業でも、同じことが言えます。
今回の件で、7201日産自動車は、プライドを捨てきれず自ら死地に飛び込んでしまいました。
自助能力の無いことが未だに理解できていない7201日産自動車には、もう打つ手が無いでしょう。
行き着く先は、民事再生法の申請か、台湾・中国企業辺りの吸収合併かなと思います。