見出し画像

第236回 4676フジHDの企業統治と労働者保護

ここ最近、中居氏の問題が連日大きく報道されています。
ところが、その内容は核心部分が報道されないことで、第三者の憶測でしかない部分が非常に多くなっています。
この状況は示談による守秘義務があると言うことらしいので、仕方ないことだと考えます。
ただ、示談で守秘義務があるのに、雑誌等で明るみになったことに第三者による強大な悪意が感じられます。
被害者、加害者、本人たちの関係ないところで、個人的利益だけを求める餓鬼たちが蠢いているようです。

さて、私としては既に示談が成立し、守秘義務が発生している件については、全く興味がありません。
あるのは、様々な憶測により批判を受けている4676フジHDの企業統治と労働者保護に関する部分です。
対応自体は、事件に関係なく表沙汰になるので、この点を「risk management」的に考えてみたいと思います。

先ず、事件が実際に発生しているのは確かなようです。
示談金が実際に9,000万円だったのかどうかは分かりませんが、中居氏から謝罪文が出されていることで、中居氏が加害者で事件が発生したようです。
これに対して被害者は、4676フジHDの社員となっています。
また、中居氏が発表した示談の内容から、「中居氏の芸能活動継続を被害者が容認している」ようです。
それなのに、4676フジHDの経営陣が「番組継続を優先するために社員の被害を黙殺したのではないか!?」と世間的には考えられているようです。

そこで先ず、中居氏の謝罪の相手が、4676フジHDの社員だということも確定させます。
なぜなら、もし4676フジHDの社員でなければ、社長の会見の辻褄が合わなくなるからです。
そして、今、世間で流布していることに関して、事実と認定できる部分は下記のことだけだと思います。

➀中居氏が4676フジHDの社員に対して、加害行為を行った。
➁この事件については、示談が成立している。
4676フジHDは、被害社員から報告を受け、社長までが事実を把握していた。
4676フジHDは、主要取引先であり、加害者でもある中居氏に対して聞き取り調査などは実施せず、テレビ番組は引き続き制作、放映されていた。

ここではまず、大前提として法的責任と道徳的責任は、全く別物として扱います。
法的責任には、冤罪の「risk」「Hedge」するために「疑わしきは罰せず」という罪刑法定主義の理論がありますから、限りなく黒に近い灰色であっても、責任を問うことはできません。
しかしながら、道徳的責任であれば、ある程度の濃さのある灰色なら、「李下で冠を正さず」ということで、疑われたことについてある程度の責任を問うことができます。
このことは、未だに世間を騒がして収束の兆しが見えない齋藤兵庫県知事の問題でも、共通して言えることです。

そして、法的責任に関する問題は、現時点で存在していないことは明白だと考えます。
法的責任に関しては、刑事と民事がありますが、まず検察や警察が動いているという話は聞かないので、現時点で刑事的責任は存在しないと思います。
また、民事的責任に関しては、示談が成立していることから解決済みとなります。
示談が成立しているのに非難するのは、刑期を終えた犯罪者を延々と疎外することと同じです。
犯罪者を阻害し続けると、円滑な社会復帰が果たせず再犯するという社会にとっての「risk」が高まるため、これを「hedge」する目的で保護司たちが活動してくれている訳です。

そして、ここで多くの国民が勘違いしている刑罰のことについて書きます。
それは、違法行為に対する民事の刑罰は、現代日本では全て金銭の支払いによって為されると規定されていることです。
日本でも、江戸時代までは仇討ちなどが認められていましたが、現代では私的制裁が禁止されていることから、損害賠償以外あり得ないのです。

例えば、交通事故で子供が殺された。
だからと言って、ひき殺した運転手に対して、今の日本では直接の報復をすることは出来ません。
出来るのは、財産的補償を求めることだけです。
ですから、「金を支払うだけで罪を償ったつもりでいるのか!!」という発言をよく聞きますが、「金を支払うだけで罪を償わせる」のが、今の日本の法律です。
つまり、当事者間で金銭の受け渡し等の条件で示談が成立している限り、第三者が介在することはできないのです。

そこで、4676フジHDは当事者でないのですから、法的責任が無いのは明白です。
つまり、今、問われているのは道徳的責任ということになります。
その問題は、下記の2点なるのではないかと考えます。

➀社員に違法行為を働いた顧客に対して、取引停止等の制裁を加えなかった
➁他の社員が、違法行為に至ることを誘導した

先ず、ここでも勘違いしてはいけないのは、中居氏が何ら制裁を受けていない訳ではありません。
少なくとも、示談が成立し、示談金を支払っています。
先ほども書いた通り、現代日本での制裁の手段は、示談金の支払いしかありません。
ですから中居氏は、既に当事者の間では制裁を受けて完了しているということになります。

続いて、4676フジHDが取引を停止しなかったことですが、主要顧客との取引を停止することは、企業にとって大きな「risk」になります。
一つの番組には、そこに携わる社員、制作会社からスポンサーまで、多くの人たちが関わっています。
そのような中で、特段の理由も無く番組を終了させることは、大きな反発を招いてしまいます。
下手をすれば、スポンサーを失い、社員や制作会社を路頭に迷わせることにもなりかねませんから、このようなことにならないよう「hedge」しなければならないのです。

- スポンサーたちに理由を説明したら良いだろ!! -

そう考える人は多いでしょうが、そもそも当事者間で示談が成立し、口外しないと言う守秘義務が発生しているなら、企業として説明することはできません。
また、問題を臭わせるような発言も、できないのです。

そしてもう一つの問題、他の社員の関与に関してですが、それこそ、その疑われている社員の人権に関わることですから、企業としてそう簡単には出来ません。
例えば、その社員を社内処分にするとしても、その社員が加害者に加担したことを、4676フジHD側が証明しなければならないのです。
もし、風聞や被害社員の一方的な発言だけで処分をすれば、4676フジHDの人権侵害問題になります。
もし、その風聞や被害社員の発言が虚偽だった場合、加害者に加担したと思われている社員が、被害者になってしまうからです。
そして、もし社員の加担が明確になっても、処分を下すことは生易しいことではありません。
と言うのも、その加担の度合いが、処分されるべき非行であるということの証明が更に必要になるからです。

例えば、私自身、今も会社に勤めている兼業投資家です。
今、会社に対して感じていることは、親会社や上司に対する「度を越えた無能さ」です。
その無能さの原因ですが、時代の流れを無視して、30年前の仕事のやり方を未だに踏襲し、社員にも強制している、ところです。
例えるなら、多くの農家が機械化して生産性を向上させているのに、手作業でやる方が心が籠ると言って機械化に反対している、ような感じです。
そのくせいつも、金が無い、金が無いと言って、俺たちの米作りを理解ない消費者はバカばっかりだと言い続けるような人たちです。
私自身、資産もありますから、いつFIREしても良いと考えています。
ですから、このような愚かな考えを強制し、将来に禍根を残すようなことをする奴らと、刺し違えてやろうかと考えることもあります。

それでも、そんなことを実行しないのは、彼らが無能なだけで、法的責任が問えるような明確な非行が無いからです。
無能と言うだけでは、処分はなかなかできないでしょう。
また、処分できたとしても、残された後輩や部下たちが困ることになりかねません。
いくら自分たちは違うと言っても、問題があった会社と取引を続けてくれる企業は、そう多くは無いと考えるからです。
会社を立て直すために、非常な労力を後輩たちに強いることになります。
ですから、中途半端な非行は、安易に公表することが出来ないのです。

もし、私が当時の4676フジHDの経営者なら、最初は被害者の社員に弁護士を立て、中居氏に対して多額の賠償金を被害社員に渡すよう調整しようと考えたでしょう。
また、調整して、中居氏が出演していた番組を順次終了させて、企業として関わらない方向に仕向けたと思います。
ただ、理由を告げずに終了させるのは、容易なことではありません。
視聴率が悪ければ簡単でしょうが、視聴率が良いのに終了させるのは、制作会社もスポンサーも納得しないからです。
また、納得しない中で、中居氏を干すようなことをすれば、何か事件なりの不都合があったのではないかと勘繰られてしまいます。
そうなれば、被害に遭った社員が恐れていたことが起こってしまいます。
今回のように、広く知れ渡って、多くの国民の関心事にされてしまうという二次被害が出てしまいます。

更にここから怖いのは、「中居ヅラ」と呼ばれる中居氏の熱狂的なファンの存在です。
近年問題になっているのが、一方的な偏った情報しか信じない人たちの存在です。
もし、こういう人たちの中のたった一人でも、報復を考えるようなことになれば、被害社員が、更なる被害に遭うことを想定しなければなりません。
ですから、細心の注意を払いつつ、バレないようなゆっくりとしたスピードで実行しなければならないと思います。

そして、関与が疑われている社員の処分については、もっと注意が必要です。
その事件が起こった当日に、その社員が被害を受けるであろうことを知っていたことを証明できなければ、罪に問えないからです。

しかしながら、次の瞬間、私はこの方法を思いとどまると思います。
なぜなら、この方法は限りなく「dange」に近い「high-risk」なことだからです。
その理由は、「人の口に戸を立てられない」からです。

いくら緘口令を敷いても、スキャンダルは必ず漏れます。
今回も漏れ出ています。
そしてスキャンダルとして漏れ出た場合の被害の大きさは、直ぐに公表した時の10倍以上になるからです。
今の状況を見ていれば、この10倍以上が事実だということは理解頂けると思います。

ですから、4676フジHDのことを考えるなら、示談で当事者の意向が固まる前に表沙汰にした方が良かったのです。
中居氏と社員の間で、何らかのトラブルが発生したと発表すれば良かったのです。
例え被害社員が拒否しても、企業としては強引に説得して公表した方が良かったのです。
なぜなら、示談が成立して守秘義務が盛り込まれた後では、被害社員から守秘義務を前提に公表する許可が降りないからです。
つまり、最近の企業統治を考えれば、被害社員の意向を無視して直ぐに公表するべきであるからこそ、大株主であるファンドから第三者委員会の設置を求められることになるのです。

- 被害者を無視して酷い!!!!!! -

そう思われるかもしれませんが、この点に関しては、企業と被害社員の利益の方向性が相反してしまっていることなので、仕方が無いのです。
被害社員が表沙汰にしてほしくないと本当に要求し、被害社員に問題なく示談金が支払われるよう中居氏との取引を続ければ、そのこと自体が今の状況を作り出すからです。

最後にですが、もし今回の事件が会社ぐるみということなら、そもそも今も在籍している社員たちの感覚を疑います。
ですから、会社ぐるみでは無いと推定できます。
4676フジHDとしては隠す必要が無いことなのですが、それを隠したような印象を持たせてしまっているのは、企業や経営者の「risk management」に対する意識が非常に低いからでしょう。
また、そのような人物が経営者に上り詰めているのは、偏に4676フジHDの企業風土が、組織として最も重要な「risk management」を無視して良いという考えで築き上げられたからと言えます。
投資家としては、経営者は須らく「risk management」を正しく理解している人に務めてもらいたいものです。

いいなと思ったら応援しよう!