第151回 ネットネット株とミックス係数
前回、ベンジャミン・グレアムの銘柄選択法について書きました。
そこで今回は、その選択法を先日の四季報秋号銘柄に当て嵌めてみました。
すると・・・・、たった2銘柄しか出て来ませんでした。
そこで、一番厳しいネットネット株の条件を緩和して、もう一度当て嵌めてみました。
すると今度も、2銘柄でした。
そもそも成長率が高くて配当があって財務的に超割安という銘柄は、殆ど存在しないということですね。
そしたら今度は、なぜ2銘柄だけが該当したのか不思議になってきたので、今回はその2銘柄を調べてみたいと思います。
まずは、その2銘柄は以下のとおりです。
3321ミタチ産業
8904AVANTIA
【3321ミタチ産業】
まずは、7月5日(金)に発表された決算短信からの流動資産です。
流動資産 18,091 百万円
現金及び預金 3,123 百万円
受取手形及び売掛金 5,132 百万円
電子記録債権 2,282 百万円
棚卸資産 7,231 百万円
その他 351 百万円
貸倒引当金 △29 百万円
流動資産の内訳を見ると、「棚卸資産」が7,000百万円と半分近くを占めているのが分かります。
棚卸資産とは、営業目的で保有する資産、または資産になる過程のもののことで、いわゆる在庫と呼ばれるものです。
つまり、悪い言い方をすれば、売れ残りということになります。
この点を考慮して、かぶ1000さんの考え方では、ネットネット株の流動資産から棚卸資産を削除します。
代わりに、固定資産に計上されている投資有価証券、関係株式等を追加します。
固定資産か流動資産かは、会社側の考え方次第であって、有価証券の現金化は簡単に出来るからです。
投資有価証券 106 百万円
関係会社株式 150 百万円
つまり、かぶ1000さん流の流動資産は、以下のとおりになります。
18,091 - 7,231 + 106 + 150 = 11,116 百万円
次に、負債です。
負債 5,641 百万円
つまり、流動資産111億円に対して負債は56億円しかないということですね。
特段怪しい部分も無く、問題なさそうです。
【8904AVANTIA】
まずは、7月11日(木)に発表された2024年度第3四半期決算短信からの流動資産です。
流動資産 64,237 百万円
現金及び預金 11,361 百万円
受取手形・完成工事未収入金等及び契約資産 1,049 百万円
販売用不動産 25,308 百万円
開発事業等支出金 22,184 百万円
未成工事支出金 3,560 百万円
材料貯蔵品 12 百万円
その他 763 百万円
流動資産の内訳を見ると、「販売用不動産」、「開発事業等支出金」、「未成工事支出金」、「材料貯蔵品」が在庫に相当するようです。
ですので在庫は、下記のとおりになります。
25,308 + 22,184 + 3,560 + 12 = 51,064
つまり、流動資産の8割方を棚卸資産が占めているということになります。
一方、固定資産の有価証券は、下記のとおりです。
投資有価証券 442 百万円
その他 1,210 百万円
結果、かぶ1000さん流の流動資産は、以下のとおりになります。
64,237 - 51,064 + 442 + 1,210 = 14,825 百万円
次に、負債です。
負債 42,628 百万円
つまり、流動資産148億円に対して負債は426億円もあるとなってしまうことから、ネットネット株とは言えないですね。
在庫も、販売できる状況であるなら問題ないのですが、以前のリーマンショック時みたいに不動産が全く売れなくなった時は、完全な不良在庫になってしまいます。
そもそもネットネット株を選出する目的は、不景気時にも安全に投資を続けられるようになることが目的ですから、やはり在庫は含まない方が良く、結論としても、8904AVANTIAはネットネット株では無いということになります。