第111回 1518三井松島HD
次は、1518三井松島HDです。
この銘柄は、2020年10月30日(金)に、670円の安値を付けています。
その後、2022年8月9日(火)に4,590円の最高値を付けた後は、利食い売りに押されて2,235円まで反落しました。
普通なら、ここで相場は終わるのですが、2024年4月から息を吹き返し、5月15日(水)に6,210円という最高値を付けています。
まず、最初の相場です。
多くの銘柄は2020年3月のコロナショック時に最安値を付けていますが、1518三井松島HDは珍しく、半年遅れで最安値を付けました。
その原因を探ると、まず2020年8月7日(金)に「非開示だった今期経常は57%減益」予想を出しています。
そして、次の四半期決算発表が2020年11月6日(金)だったので、更なる数字の悪化を懸念されて売られたということでしょう。
しかしながら実際は、「上期経常は25%増益・通期計画を超過」ということで、問題無かったことから買い戻されたようです。
そして、実際に上放れたのは、2021年2月8日(月)です。
そこで、前営業日に当たる2月5日(金)の材料を確認すると、1518三井松島HDのホームページにありました。
① 第165期第3四半期報告書
② 特別損失の計上及び業績予想の修正に関するお知らせ
③ 配当予想に関するお知らせ
④ 2021年3月期第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
⑤ 2021年3月期第3四半期決算説明資料
この中で確認するのは、「②特別損失の計上及び業績予想の修正に関するお知らせ」と「⑤2021年3月期第3四半期決算説明資料」ですね。
まず、営業利益、経常利益を上方修正し、最終利益を下方修正しています。
売上高 営業利益 経常利益 純利益 1株益
前回発表予想 54,500 200 1,300 700 53.83
今回修正予想 55,300 1,400 2,600 △3,200 △246.04
これはのれん償却の特損ですから、業績的には大幅上方修正と投資家に捉えられたという訳です。
更に特筆すべきは、「⑤2021年3月期第3四半期決算説明資料」に書かれ内容です。
それは、中期計画の達成でした。
「中期経営計画(非石炭生産事業利益47億円)の達成により、仮に石炭生産事業利益がゼロとなる場合でも、十分な収益基盤により、安定配当を中心とした株主還元策を継続」と書かれていた訳です。
1518三井松島HDは、石炭で儲けている会社だと誰もが思っていたのですが、実はそうでは無かったということです。
また、この時に配当金が50円と決定されています。
この頃の株価は800円ほどだったので、配当利回りは6.25%となり、これだけでも買える理由となっていた訳です。
そして、2022年8月5日(金)に、第1四半期決算を発表します。
石炭価格の上昇により、大幅な増収増益となり、配当金も230円と大幅増になった訳です。
その後は、材料出尽くしとなり、配当利回り5%に相当する2,000円前後の株価に落ち着いていきました。
ところが、2024年5月15日(水)に6,210円まで大きく買われます。
実は、ここに材料らしきものはありません。
業績も石炭価格の下落により大幅減収となっているからです。
ところが、複数のファンドが買っているということが、大量保有報告書で分かりました。
このことが思惑を生み、コバンザメがちょうちんを付けているのだと思われます。
ただ、減収と言えども、1株益は503円であり、PER10.5倍なら、買われ過ぎと言えるレベルではありません。
逆に、石炭価格の反騰という材料が出れば、業績が大きく好転する可能性もある訳です。
そういう思惑で、ファンドは買っているのかもしれません。
このように、1518三井松島HDの「兆」は、本業である石炭関連以外でも、十二分に儲ける力を得られたことを発表したことだと思います。
そこに石炭価格の上昇が加わり、大きく成長することが出来たのだと思います。
同じような会社として、6209リケンNPRなんかは面白くなるかもしれません。
6209リケンNPRは、6462リケンと6461日本ピストンリングが合併して出来た会社です。
両社とも、ピストンリング主力の会社です。
ピストンリングとは、自動車のエンジンなどの欠かせない部品なのですが、電気自動車が普及すると、ピストンリングの需要は大きく削られてしまいます。
このため両社は、他事業へと積極的に進出していた中での合併となりました。
このことから、6209リケンNPRも、ピストンリング無しでも、安定的な経営が出来るようになったことが発表されれば、上放れるかもしれません。