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第165回 株価が「株式の適正価格」より高くなる理由(事業価値)

株価が「株式の適正価格」より高くなる理由として、「株式の適正価格」の増加割合や、配当金などの説明をしました。
ところが、この2つでは説明できないような銘柄もあります。
例えば、第67回で説明した6085アーキテクツなどです。

先ずは、2025年度第1四半期決算短信の数字から、「株式の適正価格」を計算します。
5ページと6ページを見てください。
計算結果は、下記のとおりになります。

流動資産 - 棚卸資産 + 投資その他の資産 - 負債 = 株式の適正価格
516,822 -    0  +  72,408  -  609,274 = △20,044 千円

△20,044 千円 / 3,005千株 = △6.67円/株

つまり、6085アーキテクツの資産価値はマイナスであり、実質的には「0」な訳です。
更に配当金は、こちらも「0」です。
それどころか、実は6085アーキテクツは、全く利益を出せていないのです。
直近の結果と予想は、下記のとおりになります。

     売上高 営業利益 経常利益 純利益 1株益(円) 1株配(円)
単20.3   890  -445   -452   -524  -322.9   0
単21.3   675  -260   -248   -272  -164.4   0
連22.3   737  -260   -318   -348  -166.5   0
連23.3   553  -349   -352   -427  -174.5   0
連24.3   592  -216   -236   -361  -147.1   0
連25.3予  1,550     80    75      50   16.7   0
連26.3予  3,000   390     380    250   83.3   0

それなのに6085アーキテクツの株式には、508円(令和6年10月8日終値)という立派な価格が付いています。
これはどういうことでしょうか!?

それこそ、ちょっと前を思い出してみてください。
ビットコインが注目され、仮想通貨バブルなるものが2017年頃に発生しました。
この流れに乗ろうと、多くの投資家たちが仮想通貨に作成したり、投資したりしました。
ところが2024年現在、実際に価値ある通貨として認識されているものは、どれくらいあるでしょうか!?

例えば、比較的価値を保っていた仮想通貨の一つに、「LUNA」というものがありました。
凡そ1「LUNA」は、80米ドル程度で取り引きされていました。
ところが2022年5月、突如として値崩れが起きます。
80米ドルで取り引きされていたものが、たった1週間で0.0001米ドルにまで売られてしまったのです。
この「LUNA」という仮想通貨は、ブロックチェーン技術を利用したビットコインの単なる二番煎じであり、特段利用目的も無かったことから、多くの投資家の興味を失った時点で、無価値にまでなってしまったのです。

このことを考えれば、6085アーキテクツの株式に値段が付いていることは、6085アーキテクツに対して投資家が興味を失っていないということになります。
実は、これが仮想通貨と株式の大きな違いです。

株式には、「株式の適正価格」という資産価値について説明しました。
また、配当利回りを基本とした資産価値についても説明しました。
しかし、株式の価値はそれだけでは無いと言うことです。
それが、「事業価値」です。

株式は企業の分割所有権みたいなものであり、企業は事業活動を通じて利益を得ることを目的にしています。
その事業に将来性があれば、そこに価値を見出すのが投資家です。

- 今は利益が出てなくても、将来的に大きな利益に繋がるなら割高でも買おう -

こう考えるのが投資家だということです。

例えば、2484出前館という企業があります。
業績的には赤字続きであり、黒字には至っていません。

    売上高   営業利益  経常利益   純利益 1株益(円) 1株配(円)
連21.8  28,954 -19,157  -19,148  -21,869  -266   0
連22.8  47,314 -36,442  -36,595  -36,218  -284.2   0
連23.8  51,416 -12,259  -12,122  -12,154    -92.3   0
連24.8予 51,000 -  5,500    -5,400    -3,300    -26.5   0
連25.8予 55,000    500      600      400       3.2   0

直近の決算短信で「株式の適正価格」を計算すると、282円です。
令和6年10月4日(金)の終値は269円なので若干の割安と言えます。
ところが2484出前館は、新型コロナ流行期には、4,200円という高値まで買われていたことがありました。
当然、当時も赤字であり、適正価格的にもそこまで高価ではありませんでした。

そんな状況でも買われたのは、2484出前館が実施している「Uber Eats」と同じ事業モデルが、新型コロナ下で魅力的に映ったからです。
これからは宅配の時代だと思われ、多くの投資家の興味を惹いたからです。
ところが、当時ですら黒字にならなかったものが、新型コロナも無くなった現在で黒字化することは至難の業でしょう。
そう言う部分が投資家に気づかれてしまい、1/10以下にまで売られている訳です。
2484出前館の事業価値の魅力が薄れてしまったことで、株価は大きく値下がりしたと言えます。

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