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日経平均が上昇する影響と最高値突破の背景?将来の価格動向を解説

日本を代表する株価指数である日経平均が2024年2月、バブル期の1989年につけた最高値を34年ぶりに更新し、節目の4万円も突破しました。

そこから一度下がったものの、再び上昇し、7月4日には3ヶ月ぶりに最高値を更新しました(41,100円台)。

証券会社の社内ではくす玉が割られ、社員から喝さいと拍手が沸き起こる。

そんな場面をニュースで見た方も多いことでしょう。

景気を占う重要指標の最高値更新はとても喜ばしいニュースです。でもその一方、

といった、生活者の声や投資家の不安が聞こえてきます。

そこで本記事では、生徒数日本一の投資スクール「グローバルファイナンシャルスクール(GFS)」監修のもと、個人投資家としてふだんから経済指標をウォッチしている筆者が、日経平均最高値更新の理由とその影響、さらにここから株価がどうなるかについて、可能な限り客観的なデータを使いながら徹底解説していこうと思います。


日経平均が上がるとどうなる?

日本を代表する株価指数である日経平均の最高値更新。これが具体的に意味することは何か。いったいどんなものに影響を及ぼすのか。
この章では、日経平均の上昇がもたらす影響や効果について様々な視点から考えます。
考察するのは次の3つ。

  1. 日本経済全体への影響

  2. 企業や社員への影響

  3. 個人投資家への影響

1-1 日本経済全体への影響

日経平均の上昇は、日本経済全体にさまざまな影響を与えます。
このセクションでは、日経平均が上昇することで生じるマクロ的な経済的影響について、あくまで一般論として考えうることを3つ取り上げました。

①景気浮揚効果
日経平均の上昇は、企業の業績向上を反映した結果です。日経平均などの株価指数はもともと景気動向をはかる尺度としてあり、これ自体が日本経済の好調さを示しているとすれば、われわれ国民の気持ちにプラスに働き、消費や投資への意欲を高める心理的効果があるといえるでしょう。この好循環が働くことで経済全体の景気が浮揚するわけです。
②企業の信頼回復
日経平均とは日本の大手企業225社の株価平均なので、個々の企業によって業績は異なりますが、一般的に株価の上昇は資本の増加を示し、企業の信頼感を高めます。これが新たな投資を呼び込み、さらに銀行からの資金貸出も旺盛になることで、設備投資や新たな販売促進などの事業拡大につながります。個々の企業活動がこのように活発化することで、総体としての日本経済の成長も促進されます。
③金融政策への影響
日経平均の上昇は国の金融政策にも影響を与えます。株価の上昇により資産価格が増加し、金融機関の貸し出しや投資活動が活性化するほか、国民の消費意欲が高まれば、現在採られている景気浮揚のための緩和的な政策は必要なくなります。これがいきすぎて過熱感が増すと、今度はインフレ懸念が高まることから、金融政策は逆に緊縮財政に向かいます。具体的には政策金利が上げられ、市中に出回るマネーが絞られていくことになります。


1-2 日本企業や社員への影響

日経平均の上昇が企業の信頼回復につながることを先に述べましたが、これは当該企業やその従業員にもよい影響を及ぼします。
ここでは株価の上昇が日本企業の業績や従業員にどのような影響を及ぼすのかもう少し深堀していきます。

①企業価値の増加

日経平均の上昇は日本全体に投資を呼び込むため、個別企業の業績の好悪にかかわらず企業の資産価値を向上させる方向に働きます。これにより事業が拡大し、売上・利益の増加にもつながります。これが配当や株価上昇という形で株主へ還元され、企業と投資家の安定的な関係が保たれ、企業の信用力がさらに向上する好循環が生まれます。

②従業員のモチベーション向上

株価の上昇は働いている従業員のモチベーションの向上にもつながる可能性があります。大手企業には持株制度などを通して自社株を保有している従業員も多く、株価上昇は固定給とは別の資産増加を促します。もちろん株を保有していなくとも、投資資金の増加は前記したように企業の業績向上と信頼回復につながることから、必然的に従業員の賃金やボーナスなどに反映されます。

③リストラの抑制

株価の上昇により企業の業績が向上すれば、研究開発や新規事業への投資も進みます。これにより、従来なら統廃合(リストラクチャリング)や人員削減が必要だった事業が息を吹きかえし、それらの懸念が抑制されることで、従業員は雇用が守られ、安定的に仕事に打ち込むことができます。


1-3 個人投資家への影響

日経平均の上昇は個々の企業の株価上昇でもあり、これは当然のことながら個人投資家にも様々な影響をもたらします。

ここでは、個人投資家が日経平均の上昇によってどのような影響を受けるかについて、投資家目線で考察してみたいと思います。

資産価値の増加

日経平均の上昇は、保有する株式の株価上昇、企業業績の向上による配当増などを通して、投資家にキャピタルゲイン(値上がり益)とインカムゲイン(配当益)の両面から利益をもたらします。また、個別株を保有していない場合でも、日経平均や日本株全体を投資対象とするファンド(投資信託)を持っていれば、個別株同様に投資家のポートフォリオの資産価値を増大させます。資産が増加することで資産形成にもプラスの影響を与えるでしょう。

投資マインドの改善

株価上昇のトレンドは個人投資家の投資マインドを改善に向かわせます。空売りなどに精通しているのでない限り、一般的に投資家は株価が下落しているより上昇中の方が投資意欲が高まります。個々の企業の生産活動、ひいては日本全体の経済が右肩上がりになっているほうが積極的に投資リスクを取ることができるからです。また保有している資産が増えることが新たな投資への呼び水にもなります。あるいは自分以外の投資家が儲かっている姿を見て、負けじと投資する人も増えるかもしれません。こうした上昇トレンドを見越して外国人投資家がさらに日本株への投資を加速させるなど、投資が投資を呼び込む好循環が生まれます。

消費意欲の高まり

株価上昇で保有資産の含み益が増大すれば、投資家の消費意欲は高まります。仮に利益を確定していなくとも、含み益の状態でも資産が増えていることが確認できればいいのです。これは企業業績が上がって従業員の賃金に反映されるよりずっと早く、直接的に消費に影響を与えるでしょう。日本人の資産に占める株式投資の比率はまだまだ低いとはいえ、消費意欲の高まりは支出の増加となり、内需の拡大、ひいては経済活動の活性化につながるはずです。

ここまで日経平均の上昇が日本経済や企業、個人に与える影響を見てきました。

「景気が上がっている実感がない」「儲かっているのは投資家だけ」といった声があるのは確かですが、これだけ細かく見てみると、国民一人ひとりの生活に多かれ少なかれ影響を与えていることがわかっていただけるのではないでしょうか。

もちろん、日経平均上昇の恩恵をより大きく享受するには、日本株投資を始めるのが一番であることは言うまでもありません。

日経平均が上がった4つの要因

この章では日経平均が上昇してバブル期の最高値を超えた理由について、考えうる要因を挙げていこうと思います。
取り上げる要因は主に次の4つです。

  1. 半導体関係がけん引

  2. 東証からのPBR改善指令

  3. 新NISA効果

  4. 外国人投資家の資金流入

2-1 半導体関係がけん引

日経平均が上昇した要因の1つは、半導体関連株の強さです。

半導体業界は、デジタル化の進展や新技術の台頭により高い成長性を示しています。人工知能(AI)、自動運転技術、スマホやPC、クラウドサービスなどの需要増が、すべての半導体関連企業の業績を押し上げているのです。

特に近年では、生成AI向け半導体の大幅な性能向上と需要拡大によって、米国のエヌビディア(NVDA)が急成長をとげています。下記はエヌビディア(NVDA、緑)とフィラデルフィア半導体指数(SOX、黄色)そして日経平均(赤)を比較した2023年年初から2024年4月までの騰落率を示したチャートです。

SOX指数が約90%増、日経平均が約50%と伸びる中、エヌビディアは約6倍(+500%)も株価が急騰しています。

米半導体の好調さに引っぱられる形で日本の関連企業も大きく株価を伸ばしました。

日本企業には半導体生産に欠かせない部品や検査装置を提供している企業も多く、米国の半導体の急騰と連動して伸びた株がたくさんあります。

下記の表は日本の主な半導体関連企業の2023年の1年と2024年年初来から2月までの騰落率です。エヌビディアほどではないにせよ、上位の企業がやはりすさまじい勢いで上がっているのがおわかりいただけるでしょう。

出典:IG証券『半導体株の勢いどこまで?』より

こうした半導体関連企業の急伸が日経平均を押し上げた大きな要因の1つとなったことは間違いありません。

2-2 東証からのPBR改善指令

日経平均が上昇したもう1つの要因として、東京証券取引所からのPBR(株価純資産倍率)改善指令があります。

PBRとは現在の株価が1株あたりの純資産の何倍かを示す指標で、値が低い場合、企業の資産価値と比較して株価が低く見られていることを意味します。

特にPBRが1倍割れの場合、企業を解散して全資産を売却分配したほうが投資家の得になることを表しており、企業は資産価値を高めていないとみなされます。

下図は日米欧の上場企業のPBRを比較したもの。日本の上場企業はおよそ4割がPBR1倍割れという状態が長く続いています。

東証(東京証券所)は2023年、このPBRが1倍を下回る企業に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を指示し、改善計画を提出するよう求めました。

企業側は改善のため、業務効率化などのほか、株主還元を増やすため配当を増やしたり自社株買いを進めたりする必要が生じました。

これらの対策を打った企業の株価は上昇し、さらに投資家がPBRの低い企業に投資するようになることで、全体の株価が上昇した側面があります。

即効性はありませんが、これも日経平均がじわじわと上昇した1つの理由と考えられるのです。

2-3 新NISA効果

日経平均の上昇要因として新NISA効果が挙げられます。

新NISAとは2024年から大幅に制度が変わった少額投資非課税制度のこと。

政府の肝いりで始まったNISAは年々利用者が拡大しており、非課税枠が大きくなった新NISAも直近の口座開設数が急増しています。

下記は証券会社19社の2023年3月から2024年1月までのNISA口座数の推移です。

(日経新聞「新NISA口座、開設ペース2倍に 9割超がネット証券で」より)

日経新聞の調べによれば、NISA口座の開設が2024年に入ってから直近3ヶ月の2倍の勢いで増えているとのこと。

これは資産形成のために制度の利用を始めた日本人が増えていることを意味します。

日経平均は構成銘柄が安定的に成長している銘柄や高い配当の銘柄が多く、新NISAでもこれらの銘柄が買い付けられています。

これが日経平均全体の株価上昇に寄与している側面があるのは確かでしょう。

2-4 外国人投資家の資金流入

日本の株式市場は機関投資家など海外の投資家による取引が全体の約6割を占めます。

つまり日本市場の株価の騰落には外国人投資家がかかわっているのです。特に日経平均は、構成する銘柄が海外投資家によく知られる大型有名企業が多いため、彼らの売買動向が大きく株価を左右するわけです。

日経平均はどこまで上がる?今後を予測するための4つのポイント

日経平均はこの先どこまで上がるのか。はたまたここをピークに落ち込んでいくのか。投資家なら気になるところでしょう。

ここで株価の未来を正確に予測することはできませんが、今そろうデータや現状を元に、日経平均の今後を予測するためのポイントをまとめてみました。

どれをどう見て日経平均の今後を占うかは読者次第ですが、いい材料も悪い材料も知っておくにこしたことはありません。

4-1 PERをもとにした現在価格の割安度

前章3-1でも触れた通り、日経平均が最高値更新した時期の日本株のPER(株価収益率)は16~17倍と、過去平均と比べてもほぼ適正な水準に戻したイメージです(グラフ中でPERが28倍近くまで急上昇したのはコロナ禍で企業業績が悪化したため)。

(出典:日経新聞「日本株、割安さ解消進む」)

この水準は歴史的に見たら適正ですが、米国株のPER(約23倍)に比べるとまだまだ低く、日本市場への期待度がさらに高まればおのずと上がっていくと推測できます。

コロナ禍の世界的な金融緩和が生んだ「金余り」、日本人個人資産における現預金比率の異様な高さから言っても、日本企業の株価はまだ上昇する余地が残されていると言えるでしょう。

その意味では、PER16倍はまだまだ割安と考えてもいいのと思います。

4-2 数年以内に5万円超え、10万円超えもある?

2024年正月の日本経済新聞に、元日恒例、経営者20人による日経株価予想がありました。

半数の経営者が年内の最高値更新を予想していましたが、その中身はというと、1~2月はまだ年内安値をうろうろ、高値となるのは年末という声が大勢でした。

(出典:日経新聞「日経平均株価、半数が「最高値を更新」経営者20人予想 2024年の株価見通し」より)

高値予想の平均は約3万7900円で、40,000円到達を予想していた経営者が4人。最も早い人が9月到達を予想し、残り3人はやはり年末株高を見込んでいました。

経済の先を読むプロ経営者たちがこのように予測をはずしまくったのは無理もありません。

2023年末の日経平均終値はやっと33,464円。しかも、この年の上げ幅7,369円は、1989年に記録した8,756円に次ぐ高さでした。

この終値からバブル最高値(38,915円)までの値幅は5,451円、節目の40,000円までは6,536円もあり、まさかそれを年明け2か月でクリアするとは、年末段階ではだれも想像できなかっただろうと思います。

日本を代表する経営者たちが様々なファクターを考慮しても、未来の株価を正しく予想することはできないってことです。


でもそれじゃあつまらないので、ここで1つ、指標を使った株価予想をしてみましょう。

それはPER(株価収益率)とEPS(1株あたり純利益)を使った予測です。

PER=株価÷EPS、株価=PER×EPSで求めます。

2024年4月1日の日経平均は39,803円、EPSは2,357円だったので、その時点のPERは39,803÷2,357=16.87と計算できます。

またEPSは過去10年で1,024円から2,357円に上昇しているため、伸び率は43%。年率換算で+4.3%です。

これらの数字を元に、仮にPERはずっと同じ、EPSも同じ伸び率で増えていくと仮定すると、X年後の株価=X年後のEPS×PERなので、

  • 1年後 2,357×(1+0.043×1)×16.87=41,472円

  • 5年後 2,357×(1+0.043×5)×16.87=48,311円

  • 10年後 2,357×(1+0.043×10)×16.87=56,860円

と算出できます。

日本株への期待値が上がり、PERが米国並みの23倍となれば、10年後の日経平均は75,895円まで駆け上がることになります。

物価上昇率や複利を加味していない単純計算ですが、データの上では最低これくらいの株価上昇は期待していいでしょう。

この株価以上に日経平均が上昇するには、過去の平均を上回る各企業のEPSの伸びと、それに伴う株主還元策で投資家の資金を呼び込む未来が必要です。

ちなみにこの計算式で2023年末に予想していたとすると、EPS2,241円、終値33,464円、PERは14.93倍なので、2024年の株価は

2,241×1.043×14.93=34,896円

という結果になり、見事にはずしていたことになります(笑)。

まとめ

日本人として、投資家のひとりとして日経平均の最高値更新は喜ぶべきことです。

ただ、この先のさらなる上昇、将来も上がる資産として「買い」なのかどうかとなると半信半疑なところもあります。

国際比較した日本のGDP成長率の推移や子供の出生率低下なんかのデータを見るたびに、暗澹(あんたん)たる気持ちになってしまいます。

お金の種はお金が増える畑に撒(ま)くべし!

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