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10倍株ハンターの後継者が解説、次の大化け株を見つける方法と注目株

ダノフさんは、「フィデリティ・コントラ・ファンド」のポートフォリオ・マネージャーになる前に、ピーター・リンチさんが運用していた「フィデリティ・マゼラン・ファンド」のアシスタントを務められました。彼からどんな教訓を得ましたか。

ピーターと一緒に働けたことは非常に光栄でした。実際に一緒に仕事をしたのは9カ月くらいですが、彼は非常に素晴らしいアナリストであり、リーダーであり、投資家でもありました。

ピーターがすごいのは、企業を徹底的に知ろうとする姿勢です。彼は投資先の企業を知り尽くすことをモットーにしていました。初心者の目線で事業を根本から理解しようとしていたのです。


私が小売りのアナリストだった1990年代に、米国でコストコ・ホールセーが上場しました。当時は「会費を払った顧客に低価格商品を売る」というビジネスモデルが小売り業界で初めてで、本当に利益が出るのかと懐疑的に見られていました。

そこでピーターはコストコや卸売企業などのあらゆる企業ミーティングに参加して、ビジネスモデルを理解しようとしました。今後事業が拡大するか分からない状況であっても、「安価に売ることで在庫の回転率を高めて利益を出す」というコストコの潜在的な成長可能性を把握して投資をした結果、「マゼラン・ファンド」は大きなリターンを得ることができました。

ピーターは著書の中で、実際に自分が投資する会社を知ることがいかに重要かをうたっています。これは投資をする上で一番重要な部分です。多くの投資家は「人工知能(AI)の恩恵を受けそうだ」「新製品を出して売り上げが伸びそう」などと、実態を調べずに投機的に株を買っていますが、これは控えるべきでしょう。

ピーターは、米ホームセンターのホーム・デポ(HD)や米玩具大手のトイザラス、米家電販売のサーキット・シティなど、当時その分野で大きな話題となった企業のミーティングに参加しました。そして、業界で一番いい業績を上げられる企業かどうかを知ろうとしました。

読者の皆さんには、投資先の企業が本当に成長しそうか探る姿勢が大切だと伝えたいです。例えば、私はバイオテック業界に簡単に投資はしません。私が生物学を勉強したのは45年前ですから。よく知らない業界に投資をする時は、より慎重にならなくてはいけません。そのために自分の専門分野を広げる勉強が求められます。

花咲く株を刈り取らない

リンチさんは将来上げると予想される収益に比べて、株価が割安な銘柄を購入する収益バリュー(割安)株投資を実践しました。ダノフさんがグロース(成長)株を選好しているのはなぜですか。

ピーターが投資した株は単に「株価が安い株」ではなく、「今後収益の改善が見込める株」でした。新製品、経営陣の刷新、M&A(合併&買収)、コスト削減など、何らかのきっかけがあれば価格の上昇が見込める株を指します。

ピーターの言葉に「雑草と思って花まで刈り取ってはだめだ」というものがあります。コストコは最初の倉庫店がオープンしてから約40年がたち、店舗数が873(1月下旬時点)まで増えました。初期の段階で、この先花が咲くかを見極める目が必要です。

その意味で「株価が10から20に上昇したので高くて買えない」ことはなく、今後収益が200になるのであれば20でもまだ割安と言えます。加速度的に業績が伸びるならむしろ買いのチャンスです。

足元では、米テクノロジー大手7社を総称する「マグニフィセント・セブン(壮大な7銘柄)」が注目されていますが、投資家が事業内容を理解しきれていない中小型株をいち早く見つけて、ポートフォリオに組み込むべきでしょう。

今後のグロース株の見通しを教えてください。

私が尊敬している友人は米国の主要株価指数は10年で2倍になると言っています。米S&P500種株価指数は年率平均で7%上昇しているので10年では約2倍の計算です。

それなら投資の際は、それ以上のリターンが狙える銘柄を探さなければいけません。S&P500の構成銘柄数は500ですが、世界には何千もの銘柄があります。その中からいい銘柄を数社選んで投資すればよいでしょう。

米投資会社バークシャー・ハザウェイを率いるウォーレン・バフェットの盟友で、昨年死去した副会長のチャーリー・マンガーは、「銘柄分散は必要だが、成功を収めるかは数少ない有望株を選べるかにかかっている」と述べました。

それならば、業界トップの銘柄は外せません。とりわけIT(情報技術)企業は強固な収益基盤を持ち、業績も改善しています。加えて市場規模も大きい。関連企業のテクノロジーは生活の利便性を向上させ、トレンドは上昇傾向にあります。

(動画投稿サイトの)ユーチューブを開けば、米メタ・プラットフォームズ(META)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)らテック大手の経営陣の発言内容、つまり私が見ている動画と同じものを誰もが視聴できます。

私はコントラ・ファンドを33年にわたって運用していますが、企業収益が改善する企業の株価は当然、上昇する傾向にあります。その意味で、これらテック大手は向こう3年間で年率15%程度の株価上昇の可能性に期待しています。

ヘルスケアも有望視

IT以外の有望業種は。

ヘルスケアです。特に革新的かつ魅力的な新薬を開発している企業に注目しています。米イーライリリーやスイスのノバルティスのような製薬大手は医薬品開発において先手を打っているという意味では有利と見ていますが、それに追随して競合他社がより良い新薬を世に出すかに目を配っています。

バイオ医薬品分野では、大きく成長してM&Aをしっかり行えるようなバランスシートを持ち、研究開発投資ができる企業が存在します。例えば、米リジェネロン・ファーマシューティカルズは自己炎症症候群、米バーテックス・ファーマシューティカルズは嚢胞性線維症(呼吸器や消化器に重度の感染症や機能不全を引き起こす遺伝性疾患)向けの医薬品を造っています。政府が医療費をどの程度カバーできるかの問題はありますが、画期的な薬品を出したということで期待しています。

その他、環境関連やグリーンテクノロジーも有望と見ています。特に電力、再生可能エネルギー発電、送配電網関連の有望な企業は欧米・アジアで複数あります。イートン(ETN)などが電気設備の配電投資を手掛けています。 

ただ投資の際は、ご自分で企業を調べてくださいね。3カ月ごとの決算では、経営陣が半年前・1年前に話したことが本当に実現できているかを確認してください。もちろん未達だからといってすぐに投資対象から外すのではなく、改善の機会があるかを見てください。今後5年で収益が2倍に拡大することが見込めるのなら、株価上昇の期待が持てます。

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24年の株式相場の見通しは

2024年の相場の展望とリスクを教えてください。

国株相場は10〜11%上昇すると想定しています。インフレも金利も落ち着いているので株価は良好だと思います。ただし、バフェットが08年のリーマン・ショック時に楽観的かつ現実的な見通しを持ち合わせていたように、私も現実主義的な考えを持っています。

今後は当然インフレ再燃のリスクもありますし、失業率が低いので、想定より金利が下がらず高止まりする可能性もあります。米政府の債務の水準も高い。

金利は重力と同じです。金利が下がれば株価が上がるし、金利が上がれば株価は下がります。22年は急激な利上げで、相場展開を見通すことが難しくなりました。

この先も金利上昇のリスクを過小評価してはいけません。相場にとってはマイナス影響を及ぼすことになりますから。ただ、金利がどう動こうが、有望な企業は順調に業績を伸ばします。

現在コントラ・ファンドで組み入れ比率が最も高い銘柄はメタです。12年に米ナスダック市場に上場した時には10億人に満たなかったメタの月間アクティブユーザー数は、今や約38億人。「フェイスブック」と画像共有アプリ「インスタグラム」、対話アプリ「ワッツアップ」などを展開しています。

中国を除く世界の人口は約65億人ですが、そのうちSNSを使えない子どもを除いて何人いるかと考えると、世界でいかに多くの人たちがメタのアプリにログインしているかが分かります。金利や相場全体がどうなろうと、事業基盤が確立している上、AIのアルゴリズムを使って生活に身近なコンテンツを提供したり、訴求力のある広告を出したりできます。

現在トヨタ自動車に投資をしていますが、非常に魅力的な車を生産しており、業績もいいです。ハイブリッド車(HV)が貢献していますね。2、3年前は、これからHVではなく電気自動車(EV)の時代といわれていましたが、今や株式市場はEVだけではどうにもやっていけないとHVの有望性に期待しているとみています。

今回訪日して日本企業の素晴らしさが分かったので、ボストンに戻ったらさらに調査を重ねて、日本株に注目していきたいです。

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