【詩】岸辺の向こう
ピアノ曲 メンデルスゾーンの「岸辺にて」を練習している
アンダンテ ゆったりとしたロマンチックな曲なのに
弾いているうちにどんどん速くなってしまう
なんとかしなければ
そうだ「ボートを漕ぐ速さで」と絶えず念じていればいいんだ
うん いい感じ
ちゃんとゆっくり弾ける
けれど謎が生まれた
ボートを漕ぐ速さだと思ったけれど
私はボートを漕いだことはない
一体このゆらゆらした速さは何だろう?
海の波?違う
アヒルのおもちゃ?違う
さっぱり思いつかない
でもこの心地良い速さを私は知っている
なんだろう?
ああ 今思い出した
小さい頃家にあった大きな揺り椅子だ
私は手すりに乗ってゆらゆら漕いで遊んでいた
幸せいっぱいだった
たぶんお母さんもそれを見て幸せだった
すっかり忘れていたけれど
思い出は暗い嵐に吹き消されてしまったけれど
私は今それを取り戻した
岸辺にて
私は岸辺の向こうの小さな自分を見つけた