gumi 2025年第2期決算について

以下は、株式会社gumi(3903)が公表した2025年4月期 第2四半期決算短信を踏まえた記事である。序盤では今回の決算短信の要点を整理し、中盤では市場全体の文脈や業界トレンドとの対比を行い、終盤では筆者としての所見を述べる。


【決算概要と注目ポイント】

2025年4月期第2四半期のgumiは、売上高が5,494百万円(前年同期比6.1%減)とわずかに後退した一方で、営業利益は179百万円(前年同期は約19億7千万円の損失)、経常利益は990百万円(前年同期は約21億円の損失)、最終利益は599百万円(前年同期は約14億3千万円の損失)と、明確な黒字転換を果たした。これまで同社は主力であるモバイルオンラインゲーム事業で苦戦し、多額の赤字を計上してきたが、今回は暗号資産評価益やブロックチェーンゲーム分野の拡大によって収益構造を改善させた格好だ。

特に注目すべきは、ブロックチェーン等事業の急成長である。前年同期比で売上が4倍超(353.4%増)に拡大し、営業損失から一転して営業利益を確保した。また、暗号資産評価益約9.8億円が計上されており、これが最終黒字化の大きな原動力となっている点も見逃せない。財務体質面では、自己資本比率が約61.8%から68.4%へと改善し、増資や暗号資産に係る評価益・有価証券関連の処理を背景に、純資産が大幅に増加した。

一方で、従来の柱であるモバイルオンラインゲーム事業は減収傾向が続いている。既存タイトルの「寿命」や撤退などが続く中、コスト適正化によって営業利益は改善しているものの、トップラインの弱さは明確だ。配当は依然として未定で、業績予想も非開示。非常に不透明な環境下で、同社は新規事業への投資やポートフォリオ再構築に注力している。


【市場・業界動向との関連と分析】

この決算を評価するにあたり、まず背景にあるゲーム市場・ブロックチェーン市場の動向を踏まえる必要がある。2020年代後半に差しかかり、国内のモバイルゲーム市場は成熟期にあり、新作を出しても大きく成長する余地が限られ、かつライフサイクル管理が難しくなっている。海外IPとの競合激化やユーザー獲得コストの上昇もあり、旧来型のモバイルゲームビジネスを軸に成長戦略を描くことは困難になりつつある。

そのため、多くのゲーム関連企業は新領域であるWeb3、NFT、ブロックチェーンゲーム、トークンエコノミーの活用へとシフトする動きを強めている。gumiは早期にこの領域へ本格参入し、ブロックチェーンゲームやアセットマネジメント領域に踏み込んだ。今回、暗号資産の評価益が一時的な利益押し上げ要因として顕在化していることは、裏を返せばこのビジネスが依然として価格変動リスクや流動性リスクに晒されていることも意味する。

市場全体として、暗号資産やブロックチェーンゲームは依然として不確実性が高く、法規制や税制、国際的なコンプライアンス整備が未成熟だ。ユーザー数や利用実態も試行錯誤段階が続いており、同社が得た評価益は、現時点では「紙上の利益」、あるいは「トークン価値の評価差益」に過ぎない可能性もある。

また、gumiは財務活動によるキャッシュフローで増資や借入による資金調達を積極的に行い、アセットの組替えや成長領域への先行投資を行っている。これは成長戦略としては悪い手ではないが、株主にとっては既存株式の希薄化や将来の回収可能性が問われる局面ともいえる。今後、「OSHI」トークンやアセットマネジメント領域を含め、どれだけ持続的に価値を生み出せるかが焦点となるだろう。


【筆者の見解】

今回のgumiの決算は、表面上「黒字転換」という見栄えの良い結果となった。しかし、その中身は暗号資産評価益という極めてボラタイルな要因が効いており、これを持続的収益とみなすのはリスクが高い。モバイルオンラインゲーム事業の衰えは明らかで、収益基盤としての安定性は年々揺らいでいる。一方で、ブロックチェーン等新規事業へのコミットは中長期的な成長戦略として理解できるが、その成功を裏付けるには市場整備・規制動向、ユーザー獲得、安定収益化など、まだ多くのハードルが存在する。

率直に言えば、今回の黒字転換は「たまたま運が良かった側面」も否めない。トークン価値の上下や資産評価といった不確定要素に収益が大きく左右される事業構造は、投資家から見て極めて不透明だ。成長ストーリーが明確でない中、同社が「次の柱」を確立できなければ、今後の株価や信用力は不安定なままであろう。

とはいえ、極めて変化の激しい市場環境下では、保守的な戦略よりも、一定のリスクをとって新規分野に踏み込むことが長期的には正しい選択となる可能性もある。gumiはその道を選んだ。投資家としては、この舵取りが次の1~2年でどのような形で実を結ぶのか、慎重かつ冷静に見極めたいところだ。リスクは多いものの、その先に大きなリターンが存在するならば、同社は「チャレンジャー」として、新たな成長曲線を描く可能性がないわけではない。

総じて、「黒字化」としての見出しは良いが、中身を見ると楽観できる状況ではない。しかし、この不確実性の中にこそ、同社が抱える将来の成長オプションが隠れていると考えれば、今回の決算は単なる通過点と捉えるべきだろう。読者には、このような複合的視点からgumiを捉え、次の判断材料を冷静に待つことを推奨したい。

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