楽しいことを見つけられない人へ
子供の頃のことを思い出して欲しい。えっ?大して面白い思い出もないって?
そうか、それはしょうがないね。
・・・。
僕の小さな頃の話をしようか。
僕は、小学生の低学年の頃、親からもらったお小遣いで、セロハンテープを購入した。多分200円くらいであったと記憶している。青色の小さなセロハンテープで、どこにでも持っていけそうなお手頃サイズだった。
当時、小学生の間で、原爆というゲームが流行っていた。ゲームといってもテレビゲームとかではなく、スポーツ?のような感じのものだ。地面に二つ長方形を並べて記し、その枠内でテーブルテニスのようなことをする、ボールはバレーボールくらいの大きさだが、ゴムボール?という感じの素材であっただろうか。
その日も、僕らは原爆というゲームを楽しんでいた。当時は、車の数も多くなかったため、都内でありながらも、レンガの欠片を使って、コンクリートの道路に長方形を二つ描き、その上で堂々とゲームをしていた。
僕は、原爆ゲームを楽しんでいる時にも、先日購入したセロハンテープを後生大事にポケットの中にしまっていた。ただ、ゲーム中には、かさばることが分かったため、僕は長方形の枠外にセロハンテープを大事に配置した。今思えば、なぜ、セロハンテープを外に持ってきて、遊んでいたのだろう?と思わなくもないが、当時、小学生の低学年であった僕にとって、宝物はいつも肌身離さず持っていたかったのだろう。
そして、事件は起きた。
車の数は多くない、それは確かにそうであったのだが、まるっきり通らない、というわけでもない。この日、たまたま、その道路に大型のトラックが通ったのだ。僕らはゲーム途中ではあったが、トラックに轢かれたいはずもなく、トラックがこちらに向かってくるのが見えた時に、急いで道路脇へと隠れた。
その時、僕は大事にしていたセロハンテープを片すのを忘れていたのだ。すると、無残にも、僕の大事にしていたセロハンテープの上をトラックが走り去った。
トラックが通った後に、僕の大事にしていたセロハンテープは、ものの見事にペチャンコになっていた。
そして、その姿を見て、僕はこらえきれずに涙を流した。大事にしていたセロハンテープを失ったことが、当時の僕には衝撃的な出来事であった。そして、その姿を見ていた近所のおばさんが
「大事にしていたセロハンテープが、残念ね」
と、言葉を発したのだが、それが追い打ちをかけるように、僕の悲しみを助長したのを覚えている。
人は、悲しい時に声をかけられると、より悲しくなるのだ。
と、かなり横道にそれてしまったが、楽しいことを見つけられない人は、子供の頃にどんなことを大事にしていたのか、そんなエピソードを思い出して欲しい。すると、そこに自分が楽しいと思えることのヒントが隠れているのかもしれない。
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