たった2つだけ。歌舞伎観劇で避けるべき服装
「なんとなく、ちゃんとしなきゃいけない」の幻想
「歌舞伎ってちゃんとした格好をしなきゃいけないんでしょ?」
よくこんなご意見をいただきますが、「いやそうでもないですよ」とお答えしてます。
Tシャツにジーンズも、サンダル履きも禁止されてはいません。
理由は、歌舞伎観劇におけるドレスコードは定められていないから。
とはいうものの、絶対に避けたほうがいい服装、やっぱりあります。
ただこれは「公式に定められているルール」ではなく、
「観劇という環境を鑑みた上で避けるべき服装」として紹介するモノです。
歌舞伎独特の暗黙の了解で知らなきゃ恥・・・という部類のモノではなく、「一般的な観劇TPO」として認識いただいた上で読み進めてください。
①「シャカシャカ音が鳴る服」は避けて
シャカシャカ音が鳴る服。
ウィンドブレーカー、ダウンベストなどなど・・・
動いたときに衣擦れの音がなる服は観劇中の着用は避けるのがベストです。
理由は以下の三つです。
観劇中は客席がサイレントだから
観劇中、人間の五感は研ぎ澄まされているから
歌舞伎には無音の「間」があるから
この三つの理由を解説します。
観劇中は客席がサイレント
映画館での映画鑑賞中を思い出してください。
鑑賞中は、基本的には声を出さないですよね。
同様に劇場での観劇中も、客席の方は基本的には声を出しません。
(「大向こう」という文化もありますが、一部の人のみのものなのでここでは基本的に出さない、と記載をします)
上演中、上演と関係のない音を、人はノイズとして認識します。
ノイズは目の前の演目に集中することを阻害してしまうので、ノイズを出す可能性は先に無くしておきましょう。
観劇中、人間の五感は研ぎ澄まされている
観劇中は客席がサイレントなことに加えて、見ている人の五感は通常より敏感になっています。
歌舞伎に限らず、お芝居には同じ日、同じ芝居というものがありません。
たった一回きり、目の前で消えていくという性質があります。
そのため観客には目の前で起こる一挙手一投足を、息遣い一つを逃すまいと集中して見ている方も少なくないです。
そんなとき、人間の五感、特に観劇中は視覚・聴覚は敏感になります。
これぐらいの音なら大丈夫だろう…という「カサ…」一つも、自分の席の人の前後3列、横10席となりぐらいまでは届いていたりします。
歌舞伎には無音の演出がある
歌舞伎には無音の演出、というものがあります。
例えば、全く音の演出がない空間で、意思決断を見守る・・・ようなシーン。
舞台上も観客席も固唾を飲んで次の言葉を待つ、その緊張感を無音で表現されることがあります。
そんなとき、客席から「カサ…」が聞こえたら。ちょっといい気分はしないですよね。
おまけに、歌舞伎を上演するような劇場というのは結構音が届きやすいようにできてます。
生音が劇場の隅まで届くように工夫されているため、だそうです。
無音で固唾を飲む瞬間、音が届きやすい空間で発生するノイズが、観劇中おいてどれほど集中を削がれる原因になるか。
この記事をここまで読んでるみなさんなら、想像に容易いものかと思います。
発生するノイズは思う以上に聞こえるし、思う以上に集中力を阻害する。
これが「シャカシャカ音が鳴る服」を推奨しない理由です。
②観劇中は帽子は脱いで
この理由はかなり想像しやすいのではないかなと思います。
映画館でみなさんも帽子は脱ぎますよね。アレと同じです。
単純に後ろの人が見づらくなってしまうためです。
映画館などもそうですが、基本的には観客席は傾斜がついていて、後ろの席でも見えるように設計されています。
その基本設計を守るために、帽子は脱ぎましょう。
まとめ
今日は、歌舞伎観劇で避けるべき服装二つ「シャカシャカ音が鳴る服の着用」「観劇中の帽子の着用」を紹介しました。
映画を見る時をイメージしたら、そんなに堅苦しい物じゃないかな…と思いますがいかがでしょうか?
繰り返しになりますが、この二つは「一般的な観劇TPO」つまり「快適な観劇環境」を作るためのポイントです。
劇場に行けば、あなたには「観客」という役割が待っています。
観客がいなければ、どんな舞台も成立しません。舞台は観客も一緒に作り上げる空間芸術です。
一役者になった気分で、役のポイントを押さえた、「良い観客役」をぜひ楽しんでみてください。
服装編と合わせて「持ち物編」も紹介してます↓