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株の短期売買はおすすめできない理由と、初心者がそれでも挑戦する場合の2つのポイント
「株」といえば、投資の中でも短期で売買して利益が得られるものだと、あなたは思っているのかもしれません。
確かに、You TubeやTwitterなどをみると1日から数日で利益を何十万と上げる方もいますし、「今が買いだ!」「今が売りだ!」という情報もみるので、そういうものだと思っているかもしれません。
果たして株の短期売買は安定的に効率よく儲ける事ができるものなのでしょうか?
答えは、NOです。
10年ほど前なら時間的に余裕がある方なら、儲けることはできたかもしれません。しかし、今は(特にデイトレードに関しては)ほぼ無理だと思っていただいて結構かと思います。
この記事では、株の短期売買がなぜおすすめできないのか?
そんな中でも、どうしても株の短期売買をやりたい人におすすめする2つの短期売買手法を解説します。
まずは、どうして株の短期売買がおすすめできないのか?
理由は4つです。
*HFT(高速取引)が注文件数で7割、人が株の短期売買をする妨げになっている
取引の速度・変動幅が大きく、心身の疲弊が大きい
デイトレ専門の証券ディーラーの多くが廃業に追い込まれるほど、株の短期売買は難しい
株の短期売買で利益を出す技術を習得するのが、容易では無い
*HFT・・・「High Frequency Trading」の略で、取引手順などを組み込んだプログラムに従って高速、高頻度で自動売買を繰り返す取引のこと。
短期売買をお勧めしない4つの理由
![](https://assets.st-note.com/img/1726743887-poI8beXyOSMWT6VrilxkzZHj.jpg)
冒頭で述べました、株の短期売買をおすすめしない4つの理由を順番に解説してきます。
1-1.HFT(高速取引)が注文件数で7割、人が株の短期売買をする妨げになっている
私が株の短期売買をおすすめしない一番の理由は、HFT(高速取引)のせいで、自分が希望していた値段で株の売買をすることが難しくなってしまったからです。
現在、株の短期売買で利益を独占しているのはHFT(高速取引)業者です。HFT(高速取引)業者は人よりも遥かに高速に注文が出せるので、人よりも有利に取引ができるのです。
以前「ガイアの夜明け」で日本のHFT業者である「ダルマキャピタル」が特集されていましたが、1日に何千万回も取引を繰り返し、「日時取引でマイナスを出すことはほとんどない」と言っていました。
そんなHFT業者が株式注文の7割を占めているのです。そのようなマーケット環境で、人間が人力で株の短期売買(特にデイトレ)をすることを推奨することは、私にはとてもできません。
1-2.取引の速度・変動幅が大きく、心身の疲弊が大きい
私が株の短期売買をおすすめしない2つ目の理由は、心身の疲弊が大きいからです。
なぜならば、「高速取引が増えたことでことで判断が難しくなった」「変動幅が大きくなった」ことで、株の短期売買の難易度が上がってしまったからです。
下のチャートを見てください。取引開始直後の変動幅と出来高が異常に大きい事がわかると思います。数年前からこの傾向は顕著になっており、人が株の短期売買をするには心身への負荷が強くなっているのです。
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さらに、変動幅が大きくなったことにより、いわゆる「だまし」がチャート上でよく見かけられるようにもなりました。
本当の売り注文が少ないのに、一瞬だけ株価が損切りポイントまで下がり、そんなに時間をかけずに元の株価まで戻ってくることがあります。単純に逆指値を利用して損切りを設定しておくと、実勢を反映しない損切りをさせられることもあり、正しく取引をすることが難しくなりました。
1-3.デイトレ専門の証券ディーラーの多くが廃業に追い込まれるほど、株の短期売買は難しい
私が株の短期売買を勧めない3つ目の理由は、株の短期売買のプロである証券ディーラーでさえ儲けるのが難しいからです。
東証は2010年に新株式取引システム「アローヘッド」を導入しました。HFT(超高速取引)のような高速・高頻度の取引に対して高速処理対応を可能にしたシステムです。アローヘッドの稼働によって、日本(東証)でもHFTなどの高速取引に耐えうる市場インフラが導入されたと言えます。
すると、HFT業者の市場参画の勢いが増し、株の短期売買を生業としてきた証券ディーラーは徐々に仕事を奪われていきました。
多くの証券会社はディーリング部を閉鎖しました。
ディーリング業務専門の証券会社は現在数えるほどしかありません。
私はこれまでに、5社の証券会社でディーリングを経験しましたが、ディーリング部が残っているのは1社だけです。
毎日短期売買を繰り返すことを生業にしていた人たちでさえ、株の短期売買で稼ぐ事は難しいのです。昔と違って、初心者が軽い気持ちで手を出すには、あまりにもハードルが高い取引であると思ってください。
1-4.株の短期売買で利益を出す技術を習得するのが、容易では無い
私が株の短期売買を初心者の人におすすめしない4つ目の理由は、そもそも株の短期売買で利益を出す技術を習得することが容易では無いからです。
株の短期売買の世界は、利益の奪い合いの世界です。なんの武器(技術)も持たず闇雲に飛めば、何もかも奪われ尽くされます。株の短期売買の技術は、一朝一夕で身につくようなものではありません。失敗を繰り返しながら、少しづつ身につけるしかないのです。
私も証券ディーラーで、株の短期売買を始めて3ヶ月は損しかしていませんでした。
そんな私が、その後15年ほどディーラーを続けられたのは、三人のディーラーの先生と出会う事ができ、ノウハウを吸収できたからです。
つまり、株の短期売買で儲けるには、株の短期売買で儲かっている人(今現在トレードをしている)から指導を受け、それを吸収し、自分流にアレンジして、成果を出せるようになるまで努力を続ける必要があるのです。
金融緩和下の、非常に儲かりやすい相場だけを経験して、なんとなく株で儲かった素人が書いた本や、セミナーを見聞きしただけで、株の短期売買を始めるのだけはやめた方が良いと、強く言っておきたいと思います。
それでも株の短期売買がしたい人へ 株の短期売買2選
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そうは言っても、株の短期売買をやってみたい人は多いと思います。
そのような人に、まだなんとか私がおすすめできる株の短期売買は以下2つの基準をクリアした手法です。
① 心身の負担が少ない
② HFTの影響を受けにくい
この2つをクリアしているのが、「IPO株投資」と「スイングトレード」です。以下では、それぞれについて特徴等を解説していきます。
2-1.IPO株投資
1つ目は、IPO株投資です。
IPOとは「Initial Public Offering」の略で、「新規公開株」のことです。
株を投資家に売り出して、証券取引所に上場し、誰でも株取引ができるようにすることをIPOといいます。
IPO株投資とは、これから上場する企業の”株を買う権利”を抽選で手に入れ、初値(上場して最初につく値段)で売却して利益を狙う投資手法です。この初値は、公募価格(売出価格)を上回っていることが多く、上場と同時に売却すれば短期投資と言えるでしょう。
もちろん、その銘柄の長期的な成長性や収益性に期待して長く持ち続ける投資家もいます。その場合は、長期投資になります。
参考:IPOとは?POとの違いやIPO投資のメリット、注意点
2-1-1.IPO株投資のメリット
・株の短期売買に必要なテクニカル分析(チャート分析)がいらない
IPO株の購入は、*ブックビルディング(需要申告)への参加と購入申込みをするだけです。企業情報を調べる必要はありますが、まだ取引がされていないので、株の短期売買に必要なチャート分析などは必要がありません。
*ブックビルディング・・・証券取引所に新たに上場する(新規公開する)株式の公開価格を決める方式の1つ。「需要積み上げ方式」と呼ばれ、投資家の需要状況を積み上げ、その結果などを勘案し公開価格を決定する
・勝率が高い
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2020年は、92社が新規上場をしましたが、公開価格と初値の関係を見ると、「68勝23敗1分」と大きく勝ち越しています。
この数字でも、例年よりも勝率が若干悪いのですが、原因はコロナショックで相場が大きく崩れている時期があるためです。3月だけで17敗をしています。しかし、その17敗した銘柄も相場が落ち着きを取り戻した後は、上昇に転じた銘柄が多いことを考えると、初心者でも利益を得やすい短期売買の方法だと考えられます。
2-1-2.IPO株投資のデメリット
・当選確率が低い
IPO投資は、勝率・利益率が非常に高いので、抽選に参加する人が非常に多いです。必然、IPO株を購入できる確率は低くなります。当選確率を上げるため、複数の証券口座を開設するなどの努力が必要となります。
2-1-3. IPO株投資がおすすめな人
・ 投資初心者
抽選に当選して初値で売るならば、非常に勝率が高い取引ですので、初心者の方にはお勧めです。作業としては抽選に応募する際、どのような会社かを調べるだけですので、取引に関する技術は必要ありません。
・日中に株の売買が難しい人
抽選に当たったら、あとは上場日に売りを出しておくだけですので、売ったり買ったりを株の取引時間中に考える必要はありません。売り注文を出して、あとは仕事や用事が終わった頃に取引口座を確認するだけです。
IPO株投資の注意点
大型株を避け、小型株に投資をする
IPO株投資をする上で気をつけるべき点は、大型株(東証1部)を避け、新興市場(マザーズやJASDAQなど)に上場する株にだけ投資をするということです。
大型株は発行済み株式総数が多いため、公開価格を大きく上回って初値がつく事があまりありません。
場合によっては、公開価格を下回ってしまう事も、ままあります。短期的に利益を得るつもりであるなら、新興市場に上場する、小型株のIPO株投資をおすすめします。
2-2.スイングトレード
2つ目は、スイングトレードです。
1日で売買を完結させる取引を「デイトレード」といいますが、短期間でデイトレードよりも大きな値幅を狙う取り引きのことを「スイングトレー ド」といいます。スイングトレードの指す短期間は、 「2日~2週間程度」が一般的です。
どちらも、短期間で取引を完結させるため、ファンダメンタルズ分析よりもテクニカル分析(チャート)を重要視することに なります。しかし、スイングトレードの良い点は、 相場の変化をつかむ必要性はありますが、デイトレードのように日中の値動きに一喜一憂す る必要もなく、肉体的・精神的な負担も比較的小さいところです。
2-2-1.スイングトレードのメリット
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・高度なファンダメンタルズ分析を必要としない。
ファンダメンタルズ分析とは、業績や財務状況などを研究して企業価値を見出し、株価を予測する分析方法です。
スイングトレードでは、この「ファンダメンタルズ分析」よりも「いつ買って、いつ売るか」のタイミングを株価チャートのみを見て判断する「テクニカル分析」がより重視されます。
ファンダメンタルズ分析は財務諸表の見方に加え、投資する企業毎に業界や商品・サービス等を研究していかねばならないので手間がかかることに対して、株価チャートのみを見て買いと売りのタイミングを図ることのほうが手間は少ないです。
・短期売買ではあるが、デイトレードのように相場に張り付く必要もない。
基本的に「日単位」での売買となるため、日中の細かな動きをそこまで気にする必要はありません。相場や銘柄は1日に1度チェックすれば良いので、デイトレードほどの負担はありません。
・HFTの影響を受けにくい
現在、デイトレードで儲けることを困難にしているHFT(高速高頻度取引)の影響を、日をまたいで取引していくことで軽減できます。私の証券ディーラー仲間で儲かっている人はスイングトレードを上手に活用しています。
2-2-2.スイングトレードのデメリット
・テクニカル分析やイベントの利用法の勉強が必要
株の短期売買は「いつ買い、いつ売る」が重要ですので、その方法を身につけるための知識の習得と訓練が必要です。
私の経験上、正しく訓練できれば身につきますが、そもそも正しく訓練できているかの確認が必要ですし、時間的な余裕と強靭なメンタルも必要となります。
・短期取引のため、一度に大きな利益を得るのが難しい
スイングトレードはリスクをコントロールしながら、コツコツお金を増やしていくことが一番の目的になります。
中長期投資ように、投資金額の5倍、10倍を狙うことはできません。
・決算や指数銘柄の組み替えなどの一時的なイベントに巻き込まれる
*マーケットは、4半期ごとの決算発表や指数銘柄の組み替え等によるリバランスなど多種多様なイベントが1年を通してあります。自分の買った銘柄がイベントに巻き込まれると、一時的に激しい値動きをしてしまう事があり、結果投資判断を難しいものとしてしまいます。
2-2-3.スイングトレードがおすすめな人
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・株の長期保有が苦手な人
性格や考え方により、長い期間株を保有することができない(苦手)人はスイングトレードが良いかもしれません。デイトレードほどのリスクやHFTによる取引の不利はないですし、中長期投資のように投資結果がわかるまで時間はかかりません。
・決めたルールを徹底して守れる人
スイングトレードを含む短期売買は、株を買う前に「損切りは買値から5%下」「利食いポイントは買値から5%上」といったような、取引ルールを決めておかなければ続けることができません。決めたルールを実行する能力が高い人にはスイングトレードはおすすめできます。