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配当控除とは?確定申告での配当金の計算方法までわかりやすく解説

配当金があった場合、確定申告にあたって受けることができる所得控除の一つに配当控除があります。この記事では、配当控除の適用方法や計算などについて解説します。

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配当控除とは

配当控除とは、国内株式等の配当等について、総合課税分として確定申告をした場合に適用される税額控除です。

出資者がその出資先の法人から受け取る配当金は、実はすでに法人税が課税された後のお金を分配したものです。

例えば、通常は国内株式の配当は法人税課税後の利益から株主に分配します。

しかし、出資者(株主)に配当の際、所得税などが源泉徴収されます。すると、法人税と所得税の二重課税という現象が起こります。この二重課税部分を出資者に還元するのが配当控除です。

配当控除を受けるためには、分離課税ではなく総合課税として確定申告をする必要がありますが、総所得金額が大きい人には不利になる場合もあるので要注意です。

配当金に係る税金

現在、配当金に課税される税金については、3種類の納税方法があります。

申告不要制度

確定申告を行わないで源泉徴収のみで完結させるものです。

総合課税制度

配当以外の他の所得(給与等)と合算し、所得税を計算する方法です。この場合は配当控除の規定が適用されます。

申告分離課税制度

総合課税制度と違い、他の所得とは合算はしない代わりに、上場株式等の損失との損益通算をすることができる方法です。

配当控除の適用はありません。

株式投資などによって売却損益がある人は、こちらの申告分離課税制度で納税すると得になります。

一般的には確定申告は不要

税法上、配当所得には株式の配当金のほか、公社債投資信託以外の投資信託の分配金や特定受益証券発行信託の分配金などが含まれます。以下、これらを総称して「配当金」と呼びます。

上記で見た3つの納税方法については、所有する上場株式等の状況によって選択肢が分かれます。

申告不要制度が最も一般的で、配当金が支払われるときに所得税(15.315%)と住民税(5%)が源泉徴収されます。この場合、確定申告をせずに源泉徴収によって納税を終えることができます。

確定申告をする際には、総合課税、または申告分離課税が選択できます。

配当金を受け取った人が大口株主(持株比率が3%以上の株主)である場合や、非上場株式の配当金を受け取った場合は総合課税となり、原則として確定申告が必要となります。

また、NISA(少額投資非課税制度)の非課税口座で取引した株式の配当金や投資信託の分配金は非課税です。したがって、税金が源泉徴収されることはなく、確定申告の必要もありません。

確定申告で配当金の税金を取り戻す

上記のフローチャートに配当控除の有無等を付け加えたのが下の表です。

源泉徴収された税額と確定申告した税額を比較し、源泉徴収された税額の方が多い場合には、超過した税額が還付されます。

課税方法の選択ですが、総合課税は1回の配当金ごとに選択することができます。

例えば、年間の配当金のうち、A社の配当金は総合課税、B社とC社の配当金は申告不要制度、などと選択することができます。

ただし、源泉徴収ありの特定口座内にある株式等の配当金については、口座ごとに選択することになります。

なお、申告分離課税を選択する場合には、その申告する上場株式等の配当等の全額を申告分離課税とする必要があります。A社の配当金は総合課税、B社の配当金は申告分離課税、C社の配当金は申告不要制度というような選択はできません。

そのほか、申告にあたっては上の表にあるように株式や投資信託を借入金で取得した場合は、配当所得を計算するときに配当金収入から借入金の利子を差し引くことができます。

還付される住民税、所得税の計算方法

では、次に配当控除の計算方法を、申告不要制度、総合課税、分離課税に分けて見てみましょう。実際には、源泉徴収された住民税や所得税の額がそのまま還付されるわけではありませんので注意しましょう。

配当控除の元となる所得税については、その税率は次のように所得が多いほど高い税率で課税される累進課税制度となっています。

※平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)を併せて申告・納付することとなります。

参考:所得税の税率|国税庁HP

総合課税を選択したときは、配当所得とその他の所得を合算して、超過累進税率を適用します。
累進課税には、単純に税率を上げていく単純累進課税や、課税標準を段階別に区分して前段階の超過分に対して高い税率を適用する超過累進課税などがあります。
したがって、所得税で採用する超過累進税率は、所得のうち金額の低い部分に対しては低い税率で課税され、所得の金額が増えるにしたがって、段階ごとに税率が引き上げられます。

申告不要制度の場合

配当所得の金額に、所得税と住民税、復興特別所得税を合わせた20.315%が課せられ、源泉徴収されています。(所得税15%、住民税5%、復興税0.315%)

2037年までは復興特別所得税として所得税額の2.1%(15%×2.1%=0.315%)を所得税と併せて申告納付します。所得税の税率は累進課税になりますので、その年の税率が20.315%より高いならば、確定申告をしない方がお得となり、確定申告の手間が省けます。

総合課税を選択した場合

配当控除は、課税所得が1,000万円以下であれば、所得税については配当所得の10%、住民税については配当所得の2.8%が控除されます。

課税所得が1,000万円を超える場合は、1,000万円を超えた部分について控除の割合が半分になります。

この場合の課税所得とは、配当控除の控除額を計算する元となる所得(課税総所得金額)は医療費控除、扶養控除などの所得控除を差し引いた後の金額となります。(分離課税される所得は含まれません。)

株式投資信託の収益分配金や外貨建等証券投資信託についても、株式の配当金と同じく配当所得となり配当控除を適用できますが、次のとおり控除率が異なります。

  • 剰余金の配当等に係る配当所得……10%

  • 証券投資信託の収益の分配に係る配当所得……5%

  • 一般外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当所得……2.5%

結論から言うと、所得税については、課税総所得金額が695万円以下の場合に配当控除を利用することで税金が低くなり、総合課税を選択した方が有利となります。確定申告によって源泉徴収で納めすぎた税額の還付が受けられます。

では、剰余金の配当等に係る配当所得について、所得税の配当控除額を計算してみましょう。

課税総所得が1,000万円以下の場合の配当控除額の計算
配当控除額 = 配当所得 × 10%

課税総所得が仮に600万円で、うち配当所得が50万円であった場合は、次のようになります。
配当控除額 5万円 = 配当所得 50万円 × 10%

課税総所得が1,000万円を超えた場合の配当控除額の計算

配当控除額 = イ × 10% + ロ × 5%
イ* = 配当所得金額 - (課税総所得金額 - 1,000万円)
ロ = 配当所得金額 - イ
* イの値がマイナスの場合はゼロとします。

例1)課税総所得金額が1,025万円、うち配当所得が50万円とします。

イ = 50万円 - (1,025万円 - 1,000万円)= 25万円*
ロ = 50万円 - 25万円*= 25万円
配当控除額 3.75万円 = 25万円 × 10% + 25万円 × 5%

例2)課税総所得金額が1,150万円、うち配当所得が50万円とします。

イ = 50万円 -(1,150万円 - 1,000万円)< 0 → ゼロとなります。
ロ = 50万円 - 0円 = 50万円
配当控除額 2.5万円 = 0万円 × 10% + 50万円 × 5%

配当控除の対象外となるものについて

確定申告不要制度や申告分離課税制度を選択したものは配当控除を受けられませんが、それ以外に配当控除の対象外になるものとして次のものがあります。

  • 外国法人から受ける配当等

  • 基金利息

  • 私募公社債等運用投資信託などの収益の分配に係る配当等

  • 国外私募公社債等運用投資信託等の配当等

  • 外国株価指数連動型特定株式投資信託の収益の分配に係る配当等

  • 特定外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当等

  • 適格機関投資家私募による投資信託から支払を受けるべき配当等

  • 特定目的信託、特定目的会社から支払を受けるべき配当等

  • 投資法人から支払を受けるべき配当等

また、不動産投資信託(J-REIT)の分配金なども配当控除の対象外です。

申告分離課税を選択する

申告分離課税にはメリットがあります。
上場株式や公募株式投資信託の売却損がある場合は、配当所得について申告分離課税を選択することで、売却損と配当所得で損益を通算することができるからです。
売却損と損益通算して配当所得が減少すれば、源泉徴収された税額のうち、減少した配当所得に対する税額が還付されます。

申告分離課税の税率は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)です。また、総合課税と同じく、配当所得を計算するときに配当金収入から借入金の利子を差し引くこともできます。損益通算して引ききれなかった売却損は、3年に限り繰り越すことができます。

申告分離課税について、具体的な事例を見てみましょう。

例えば、課税総所得金額が1,000万円を超えない人が、A証券会社で80万円の配当金を受けたとしましょう。

配当金80万円に対して20.315%の税金がかかります。
つまり、所得税・住民税額 162,520円 = 80万円 × 20.315%となります。

一方で、B証券会社で取引した株について40万円の損失が出ました。B証券会社における取引は利益が出ていないので、税金は支払う必要がありません。
このまま確定申告をしなければ、162,520円の税金を支払うことになります。

ところが、確定申告をし、申告分離制度を利用した場合は、80万円の配当と40万円の損失を相殺し、40万円の配当とみなします。

損益を通算することで、40万円の配当に対して税金を払います。
つまり所得税・住民税額 81,260円 = 140万円 × 20.315%となり、申告分離課税で確定申告することにより税金が還付されます。

大口株主や非上場株式の場合

大口株主である場合や、非上場株式の配当金を受け取った場合は、原則として確定申告をしなければなりません。
配当金が支払われるときに所得税(20.42%)が源泉徴収されますが、住民税は源泉徴収されません。これは、住民税の納税義務がないのではなく、別途、確定申告が必要であることを意味しています。

ただし、少額配当の場合は、所得税について申告不要制度を選択することができます。少額配当とは、1銘柄あたりの1回あたりの配当が、10万円にその配当の計算期間の月数をかけて12で割った金額以下のものをいいます。この場合でも、住民税については確定申告が必要です。

投資信託における配当控除

証券投資信託の収益の分配に係る配当所得や、一般外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当所得については上場株式の配当金とは配当控除の率が異なります。

外貨建等証券投資信託のうち、外貨建資産の割合及び非株式割合がともに75%超の場合には、配当控除の適用はありません。上記、配当控除の対象外となるものに「特定外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当等」を挙げていたものです。

配当控除の選択は慎重に!

以上ご紹介したとおり、配当所得課税にはいくつかの方法があります。

一般的には確定申告は不要ですが、所得によっては総合課税や申告分離課税を選択したほうが有利な場合があります。
個々の条件をよく確認したうえで、必要に応じた手続きを取るようにしましょう。

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