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銘柄分析②_アシロ
本日は保有株のアシロについて銘柄分析を行ってみたいと思います。
銘柄選定理由
今年の9月に3年程の長期のボックスを上抜けていた
営業利益の減少により株価が低迷していたが、その間も売上高が+40%以上と高い伸びを継続していた事。
また、中期経営計画にて2年間は成長投資に充てると明記されており前期がその2年目であったが、計画よりも営業利益の改善が早かった事。
今期の売上高・営業利益の会社予想が中期経営計画の値よりも上振れており、次に発表されるであろう新しい中期経営計画の期待が高まっていると考えたため人口が減少する中で弁護士の数が増え、弁護士間の競争が激しくなっているという構造的な問題があり、ユーザーとの接点を増やすべく同社サービスのニーズは堅調と考えるため。
以上の3点より、この銘柄を選びました。
会社概要
会社名 株式会社アシロ
設立 2009年11月
本社 東京
上場区分 東証グロース
時価総額(2024年12月13日現在)92.3億円
中期経営計画の有無:有(2023年~2025年の3か年)
事業内容
まずは簡単に現状の把握を行いたいと思います。
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事業としては下記の4事業を運営
リーガルメディア
派生メディア
HR事業
保険事業
売上の9割以上、営業利益については下2つの事業が赤字のため、現状では100%を広義のメディア事業で稼いでいる状態。
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事業ごとの成長率を見てみると、
特に第三の柱の事業に育ちつつあるHR事業の伸びが著しい。
前期ではまだ赤字となっているが、早い段階での黒字が待ち望まれる。
ここから各事業について確認していきたいと思います。
①リーガルメディア事業
各法律問題に特化したサイトを運営。「ベンナビ」ブランドとして展開。
例えば、離婚問題、労働問題、遺産相続など個別の問題ごとにサイトが存在している。
顧客となる法律事務所からは掲載料を月額固定で得るビジネスモデルとなる。
法律事務所から見ると、総合型のサイトと比べて広告費を最適化しやすいのが強みと言える。例えば、離婚問題は強いが、遺産相続にはあまり強くないという風に事業者ごとに得意領域が存在するはずなので、必要な分野にのみ広告費を投入できるのはメリットと言える。
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また、そもそもリーガルメディアは参入障壁が高いビジネスモデルと言える
そのためこの事業の24年10月期の営業利益率は31.1%と非常に高く、この事業で稼いだキャッシュを他の事業の投資に回していると考えられる。
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弁護士の数が今後も増加が予想される中で、人口減少が進んでいく。
弁護士1人あたりの国民数が減少する事で、弁護士も売り上げ確保のために広告費を捻出する必要性が高まると考えられるため、今後も拡大が続くと見込まれる。
②派生メディア事業
①に派生して起こるトラブルや悩みを解決するためのサイトからなる。
例えば、離婚問題であれば訴訟を起こす前の浮気調査であったり、労働問題であれば転職サービスであったりといった具合である。
問い合わせ数がそのまま売上・利益に直結するため(成果報酬・フロー型)、先のリーガルメディア事業とは異なり「広告宣伝費」を比較的必要とする事業となる。
そのため、今後この事業が伸びる場合、販管費における「広告宣伝費」の伸びが大きくなる傾向にあるので、その点を踏まえて決算を読む必要がありそうです。
1QにFX関連のサービスに関して、減損処理を1億3700万円行ったので前期の営業利益は低く見えるが、そういった特殊要因がなければ営業利益率が約23%とこちらも非常に高い利益率を誇る
③HR事業
人材紹介ビジネス(成果報酬/フロー型)と人材派遣(ストック型)の2つから成る。同社の説明によると人材紹介の方がメインの様である。
転職希望者を企業にいかに成約させるかがKPIとなってくるため、コンサルタントの教育や拡充を急いでいるとの事。
前期は売上高が+117.5%と大幅に伸びるも(2億9500万円)、1億8200万円の赤字となっている。
決算説明資料p18にて「翌期の黒字化に向けて順調に進捗」とあるので、今期黒字化を達成できそうか注視、今後の決算において赤字幅が縮小(黒字転換)に向かっているかがポイントと考える。
④保険事業
弁護士費用を補填するための少額短期保険を扱う事業。
前期の2Qにのれんの減損を行っている。
その前にも23年10月期末に、前もって減損を行っていたため、のれんについては全て減損した形となっている。
この点は大きなリスク要因となり得ると感じている。
もし、今期実施する施策がうまく行かないようだと会社予想の数字を実現する足かせとなる可能性が十分あると見ている。
前期は「個人向け商品の拡販」に注力していたが、法人向け保険の方が収益拡大が見込まれれると判断したため、今期の出来るだけ早い段階で新商品をリリースできるように注力している との事。
新商品のリリースおよび、その後の進捗を注視する予定
競合分析
リーガルメディアと聞いて読者の皆様がパッと浮かぶのは、「弁護士ドットコム(6027)」ではないでしょうか?
同社の説明資料に記載のA社と言うのは恐らく、弁護士ドットコムを念頭に置いていると思われます。
大きな違いとしては、弁護士個人か法律事務所という事業所単位での契約か
また、サイト数の違いかと思っています。
先ほども記載しましたが、同社は総合型ではなく、分野ごとに分離したパーティカルサイトのため企業としては必要最低限の広告宣伝が行えると考えております。(ユーザーからしても関係ない分野の広告や記事がサイトに載っていても分かりづらくなると思いますので、双方にとって良いと思います)
その意味で、資料に記載の「マッチング精度の高さ」「安定した広告効果」による、競合と比較して高い単価を獲得 というのは事実ではないかと考えております。
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さらに直近の決算短信を確認いたしました。
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これによるとセグメントの利益率では25.7%となります。
やはりリーガルメディアというビジネスモデルは非常に儲かる事が良くわかります。
売上の規模で言うと弁護士ドットコムが2倍近く大きいですが、利益率と言う観点で言えば、現状アシロの方が高いようです。
規模が大きくなれば、現在の利益率を維持できるかどうかは不透明ですが、現状ではうまくいっているように思われます。
現在の株価
2021年8月~2024年9月まで、約3年間
600円~1000円のボックスを形成
2024/9/13に3Q決算が発表。
中計では、前期はまだ投資期間という位置づけであったため、営業利益が前期比5.9倍の黒字という発表は市場にとってサプライズだったものと思われる。それにより翌日大きくギャップアップ。
その後は、1000円~1100円のボックスを形成。
昨年の12月に入り、決算を前に買いが入り1200円近辺で取引される。
中計では、今期の会社予想をV字回復と見込んでいたため、それを先回りした買いが12月頭から入っていたと推測。
中計最終年度の値を上回る売上高・営業利益予想(どちらも中計+15%)を会社が発表した事、営業利益率が投資期間前とほぼ20%に改善する事から出来高を伴って大きくギャップアップ。
ギャップアップしたタイミングで、シンガポールの機関投資家(ゴーディアン)が年末にかけて換金売りを立て続けに実施。
その結果、12.43%→4.41%まで減少。
需給面では機関投資家の売りを個人投資家が吸収する形となっており、年明け以降は出来高が細っているのが気になる。
上値を積極的に追う展開になっていないのが少し気がかりである。
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業績の安定性
2023年10月期に一度、下方修正しているものの
基本的には上方修正傾向であることが伺える
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中期経営計画および新たな長期ビジョンについて
まず、現在継続中の中計について見てみたいと思います。
これは2023年10月期~2025年10月期の3か年計画で策定されておりました。
2023年および、2024年については「中長期的な成長のための投資期間」
2025年を利益創出期と位置づけ ているようでした。
ここまでの実績及び、今期予想についてまとめてみました。
これを見ると中計の値をしっかりと達成出来ている事が伺えます。
また今期の予想についてもおよそ、過去2年間の達成度合いと近いものでありストレッチ目標には見えないため、十分達成可能と考えます。
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24年10月期の本決算発表と共に提出された資料では、来期以降も最低CAGR+25%以上を目標とするという目標を掲げている。
過去の決算内容を見る限りでは、3期連続で+40%以上の成長を見せているためこの数字は夢物語の数字ではないと考えている。
目標株価
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売上高については、過去の3期分においては前期比+40%以上を維持しており、投資抑制による売上高の伸びが多少減少する事を踏まえると、
今期の+31.8%という数字は低くもなく高すぎる目標でもないと考える。
今期の予想営業利益率が20%となっているが、投資期間である過去2期の営業利益率より前の数字を確認すると平均22%程度となっており、こちらも十分実現可能な数字の様に見える。
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今期はメディア事業のみで、営業利益は16億9300万円程は達成可能
決算説明資料より、HR事業は今期黒字化達成を見込んでいるため損益0と仮定。
保険事業は前期は減損もありながら赤字幅が縮小。今期も新商品投入までコストが先行するため、引き続き赤字が継続するも、減損がなくなるため保守的に今期の赤字額から減損分を引いた6300万円の赤字と仮定。
足し合わせると、16億3000万円となる。
資料より全社費用が約4億円程なので、トータルで12億3000万円となる。これは会社の今期見通しの12億6500万円の営業利益と近しい数字になる。
過去の上方修正の履歴を踏まえると会社計画を上回る可能性も高そうだが、いったん上方修正はないものとして考える。
今期の予想営業利益を用いた営業利益倍率は、126億円÷12.65 = 約10倍
(過去に営業利益と経常利益の差がほとんどない事を確認済み)
現在のPERは15倍となっている。
リーガルメディア・派生メディア事業のオーガニックな成長のみでも、保守的に見て今後2,3年のCAGR20%は達成可能と考える。
(実際にはHR事業の上乗せ分や、メディア事業についても会社説明の25%成長の達成が過去の実績やビジネスモデルの強さから達成出来る可能性は高いと見ている)
その場合、PEGレシオの観点および成長投資前の平均PERが21倍程度だった事から予想PER20倍は許容されると考える。
今期会社予想のEPS114円×PER20倍 = 2280円
1月9日の終値で1701円なので、上値余地が34%
今後のHR事業や保険事業の進捗が良さそうな見通しが発表されれば、PER25倍程度までは評価されるシナリオも考えております。
今後注視する事/追加で調査したい内容
派生メディアの成長率が過去3年は+70%以上の伸びを示していたが、今期の予想成長率がわずか+20.8%しかない点が気になる
次回の中計の発表について
合同IRセミナー内の質問に答えておりました。それによると、「保険の販売の蓋然性が見えてこないと、蓋然性の高い中計を発表する事は難しい」
つまり、保険事業の見通しがある程度たったタイミングでの発表を予定しているとの事で、1~2年先ごろになるのかなと感じました。リーガルメディアにおける顧客獲得は、「直販」を基本に行っている。
・代理店を通さない事で、高い利益率の確保
・顧客の声を直接聞く事ができ、サービスの改善に繋げられる
上記の説明があったが、今後安定的に成長していくにあたり、どこまで直販で進める事が出来るのか、顧客数と掲載枠数の伸びについては注視決算説明会資料を読んでいると何度か「のれんの減損」を行っている
非連続な成長のために、M&Aが必要であると理解できるが過去のM&A案件とその後についてはしっかりと調べる必要があると感じました。https://ssl4.eir-parts.net/doc/7378/tdnet/2460794/00.pdf
https://ssl4.eir-parts.net/doc/7378/tdnet/2410640/00.pdf
IRセミナーにおいては、M&Aの規模感について言及あり。規模が小さ過ぎる事で内部体制が整っていないなど問題があった。買収後に成長させることが難しかったという実感があったため、今後はもう少し大きな規模でのM&Aを検討しているとの事。
また、会社のQ&Aより、「M&Aについても積極的に検討していく方針ですが、M&Aに頼るのではなく、あくまで事業開発によるオーガニックの成長を基本としております」との事でした。将来の成長を見据え、弁護士費用の保険事業の種まきを行っている。
保険事業という性質上、準備金を用意する必要があり一時的に営業利益が落ちるとの事。
当該事業が成長する初期の段階では、見た目の数字が悪くなることによる売りが短期的には発生する可能性がありそうと思いながら注視
上記動画の「15:30~17:30」で説明
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終わりに
今回は時間の都合で、まだIR取材を行っておりません。
質問は沢山出てきているのですが、まずは記事を書ききってしまいたかったので😥(前回、気合を入れ過ぎて記事作成に時間がかかってしまったので、その反省もございます)
相場環境が悪い(新高値を見ていても、大型株かIPO銘柄が多く、小型・グロースには資金が入っている様に見えない)ので、しばらくはレンジの中でのもみ合いが続くのかなと思いながら見ております。
バリエーションの一段の見直しには、HR/保険事業のグロース・早期の黒字化の青写真を投資家に示せるかどうかにかかっていると思っております。そのため、決算では特に上記2つの見通しについて注視していく予定です。
含み益はそれなりに出ているので、焦らず値動きや出来高を観察しながら買い増しのタイミングを探っていきたいと思います。
本日もお読みいただきましてありがとうございましたm(__)m