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新NISAとつみたてNISAの併用時の注意事項と売却戦略:どちらを先に売るべきかを比較解析!
2024年1月から新NISAが始まりました。すでにつみたてNISAや一般NISAなどの旧NISAで投資をしている方は、新旧のNISAを併用している状況になっていると思います。期限付きの状況とはいえ注意点があれば知っておきたいですよね。
この記事では、新NISAと旧NISAの違いを比較し、旧NISAの今後の流れを確認した上で、併用する場合の注意点やどちらから売却すべきかなどについて解説します。
新NISAと旧NISAは何が違う?
まず、新NISAと旧NISAは何が違うのか比較して解説します。
一般NISAとつみたてNISAが一本化
旧NISAでは一般NISAとつみたてNISAは併用できず、1年ごとにどちらかを選ばなければいけませんでした。
つまり、同じ年においては、一般NISAを選択すればつみたてNISAは利用できず、つみたてNISAを選べば一般NISAは利用できないということです。
しかし、新NISAでは両者が一本化されました。つみたてNISAと一般NISAの2つの枠が一本化され、つみたてNISAと一般NISAそれぞれのメリットを併せ持つのです。
例えば、つみたてNISAは非課税期間が20年間と長期ですが、対象商品は「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」と制限されており、投資方法も通常のスポット購入ができないといった条件があります。
一方で、一般NISAは多くの投資信託の他に株式も対象です。加えて、スポット購入も積立購入も可能ですが、非課税期間は5年と比較的短いという制限があります。
このように、旧NISAでは何かを優先すると何かを制限されますが、新NISAでは制限が緩和・撤廃されています。むしろ、非課税投資期間に関しては無期限化されたため、単に一本化される以上に制度が拡充されたと言ってよいでしょう。
つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能に
新NISAでは一般NISAが「成長投資枠」、つみたてNISAが「つみたて投資枠」と名称を変え、併用が可能になります。
このため投資枠をどちらにするか悩む必要はありません。成長投資枠は使わずにつみたて投資枠のみでコツコツ資産形成したり、つみたて投資枠で積立投資を行いながら、成長投資枠を使って好きなタイミングでつみたて投資枠の対象外の商品に投資したりなど、個々の投資スタイルに合わせた資産運用が可能です。
制度と非課税期間が恒久化
旧NISAで投資できるのは2023年が期限でした。非課税期間は一般NISAが5年間、つみたてNISAが20年間であるため、運用できるのは一般NISAが2027年まで、つみたてNISAが2042年までです。
これが新NISAでは恒久化・無期限化されました。
一般的には投資期間が長期になるほど年率ベースの利回りのばらつきが小さくなり、投資先の資産が収益を積み上げる期間も長くなることから、元本割れする可能性を低くする効果が期待できます。
つまり非課税期間が無期限化されたことで、長期投資の恩恵を受けやすくなり、NISA制度を活用してより堅実な資産形成を行うことができるようになったのです。ちなみに、非課税期間が無期限となることで、「投資枠を余らせて無駄にしてしまう」という考え方そのものが当てはまらなくなるため、無理にでも投資枠を埋めたいと思うこともなくなるでしょう。
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※期間:1993年6月末~2023年6月末(月次)
※世界株式:MSCI ACWIインデックス(配当込み、円換算ベース)
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
出所:ブルームバーグのデータをもとにアセットマネジメントOne作成
非課税保有限度額と年間投資上限額が拡大
旧NISAの非課税保有限度額は、一般NISAで600万円、つみたてNISAで800万円です。新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠が併用できるようになり、合計で1,800万円と限度額が大幅にアップしています。ただし、成長投資枠は1,200万円が限度額となります。
年間投資枠は一般NISAが120万円、つみたてNISAが40万円であるのに対し、新NISAの成長投資枠は240万円、つみたて投資枠は120万円です。満額で利用すれば、年間360万円まで非課税で投資できます。
売却すると非課税投資枠が復活する
旧NISAは資産を売却しても非課税投資枠は復活しません。しかし、新NISAでは売却すると非課税投資枠が翌年復活します。つまり仮に非課税保有限度額の1,800万円が埋まっても、資産を売却すれば非課税投資枠が復活して再利用できるということです。
例えば、まとまった資金があって、新NISAで毎年満額の360万円分を購入して5年で非課税保有限度額に達したとします。通常であれば、これ以上非課税投資枠を使うことはできません。
しかし、売却すれば売却した分の簿価金額(買付金額)の部分だけ枠が復活するので、翌年以降から再び年間投資枠の360万円を上限に投資できます。当然のことながら、再利用する場合も年間投資枠の制限は受けるので、500万円分の枠が空いたとしても1年で利用できるのは360万円が上限です。また、復活する金額は簿価で計算されるため、100万円で買った投資信託が200万円に値上がりしていて、200万円分売却したとしても復活するのは100万円となります。なお、枠の復活は翌年以降なので注意しましょう。
旧NISAはどうなる?今後の流れ
旧NISAから投資を始めている場合、その後はどのように扱われるのでしょうか。旧NISAについて今後の流れを確認しましょう。
新規の積立はできない
旧NISAで積立や買付が可能なのは2023年までで、新たに投資することはできません。ただし、旧NISAでの運用は売却するか、非課税保有期間が終わるまで続きます。なお、新NISAと旧NISAは別枠で管理されるため、新NISAの非課税投資枠が旧NISAの運用状況に影響を受けることはありません。
最長2042年(20年間)までは非課税期間が続く
つみたてNISAは非課税保有期間が20年間であるため、最長で2042年まで運用が可能です。一方、一般NISAは非課税保有期間が5年間であるため、非課税期間は最長でも2027年までとなります。
つまり、2023年につみたてNISAで投資した分は2042年まで新NISAとは別枠で運用を続けることが可能であり、新NISAと旧NISAを併用する恩恵を長期間受けられます。
一方で、一般NISAの場合は注意が必要です。非課税期間は最長で2027年までのため、2024年から新NISAで年間投資枠の限度額である360万円を投資したとしても、合計投資額は1,440万円となり、非課税保有限度額の1,800万円に満たない状態で一般NISAの非課税期間が終了してしまいます。このため、一般NISAの場合は「新NISAの年間投資枠を一時的に超えて非課税で運用できる」という以上の意味を持たないことを理解しておきましょう。
非課税期間終了後は課税口座に移管される
今まで一般NISAでは、5年間の非課税期間のあとにロールオーバーが可能でした。ロールオーバーとは、非課税期間が終了したときに保有商品を翌年の一般NISA口座へ移すことです。
しかし、2024年以降はロールオーバーができなくなります。
非課税期間終了後は、課税口座へ移管するか、非課税期間終了前に売却するかを選ぶことになります。
新NISAにはそのまま移管できないことに注意する
前述のとおり、旧NISAをそのまま新NISAへ移管することはできません。
ただし、新NISAの非課税投資枠が余っていれば、同日に旧NISAの売却と新NISAの購入を行えば、実質的なロールオーバーが可能です。
つみたてNISAの場合は、現行NISAのまま最長で2042年まで保有できるため、新NISAの非課税投資枠が余っていないケースも相応にあると考えられますが、手動で移管する方法は覚えておいて損はないでしょう。
新NISAとつみたてNISAを併用している場合の注意点は?
ここまで、新NISAにおける変更点と旧NISAの今後の流れについて解説してきました。それでは、新旧のNISAを併用している場合、何か注意点などはあるのでしょうか。特に、つみたてNISAの場合は併用期間が長く続くと考えられるため、知りたい方も多いのではと思います。
結論からいうと、運用中は基本的に口座が複数あること以外に注意すべき点がない一方で、売却の際はいくつか気を付けたい特有の点があります。
まず、NISA口座同士であっても損益通算はできないという点です。というより、そもそもNISA口座は利益が非課税のため、損失と通算できるような課税対象となる利益が存在しません。
また、利益が非課税となる点は新旧どちらも同じですが、非課税投資枠が復活するか否かという点で異なることにも注意しましょう。この点を踏まえると、翌年に枠が復活する新NISAから売却するとより多くの非課税投資枠が利用可能になります。
もちろん、新旧のNISAで違う商品を保有している場合は、それについても考慮する必要があります。それぞれの商品特性の違いも踏まえた上で、どちらから売却するかを選択するとよいでしょう。
新NISAは金融機関を変更できる?
旧NISAは新規口座開設ができないため、金融機関を変更することもできませんが、新NISAは1年ごとに金融機関を変更できます。
NISA口座の金融機関を変更するためには、一般的には変更前の金融機関から必要書類を受け取り、変更後の金融機関へ送る等の手続が必要になります。