【サイバー子会社】稼働率99%を誇るリノベーション不動産会社リアルゲイト
今回は2021年にサイバーエージェントの子会社となり、2023年に東証グロースに上場した不動産会社であるリアルゲイトについて調べてきました。
代表取締役の岩本氏の話では、代表取締役社長である藤田氏に会社の買取の話を持っていってから数週間でイエスの返事をもらった(PIVOTより)ということで、正直この話を聞いて興味を持った部分も大きいのですが(笑)、いざ調べてみると他の不動産会社と一味違ったビジネスで、この会社なりの魅力があるなぁと感じましたので、この記事にまとめてみようと思います。
リアルゲイトホームページ:https://realgate.jp
リアルゲイトIRライブラリ:https://realgate.jp/ir/library/earnings_release.html
四季報オンライン-リアルゲイト:https://shikiho.toyokeizai.net/stocks/5532
リアルゲイトの事業
リアルゲイトは現在単一セグメントの会社となっており、その内容は、大別するといわゆる「不動産再生事業」に分類されるのではないかと思います。
不動産再生事業とは簡単に言うと、築年数の増加等の要因により市場価値が下がってしまった物件に対してリノベーションを行い、不動産価値を高める事業のことです。リノベーションの施工等を請け負う企業もあれば、買い取ったうえでリノベーションを行い、売却して利益を上げる企業もあります。
リアルゲイトも自社でリノベーションを行うのですが、リノベーションでフレキシブルワークプレイスを作るという点が他社と比べて独自の部分となっており、このことからリアルゲイトは自社の事業を「フレキシブルワークプレイス」事業と呼んでいます。
ワークプレイスとは文字通り働く場所、つまりオフィスのことですが、リアルゲイトは一般に想像されるようなオフィスだけではなく、コワーキングプレイスだったり個室型、フロア型など柔軟(フレキシブル)な働き方に合わせられるオフィスを作ります。建物のフロア単位で貸すのではなく、小分けにして貸すことで坪単価を上げることができるようです。
また、リノベした建物を全部オフィスにするのかというとそうではなく、地上階をバー、カフェ、スタジオ等にすることもあり、あくまでも建物全体としてのシナジーを出し、賃料を最大化することを重視しています。
この方針があるため、リアルゲイトの建物はシリーズ化されておらず、物件ごとにその区分けや内装、雰囲気も異なります。
こちらから同社の物件一覧を見ることができますが、どの建物もすごくおしゃれで格好よく、「この建物で働きたい」と思わされるようなものばかりです。
このこともあってかリアルゲイトの物件は稼働率が99%(最新決算より)と驚くほど高い水準を維持しており、このことは次に説明する収益モデルもあり、同社の大きな強みとなっています。
リアルゲイトのビジネスモデル
先ほども説明した通り、リアルゲイトは不動産再生事業を行う会社ですが、そのビジネスモデルは他社とは異なる部分もあります。
その違いとは、不動産のリノベーションを行ったあとに売却するのではなく、マスターリースやプロパティマネジメントを行い、ストック型の収入につなげている点です。
リアルゲイトの収益モデルはおおまかに5つあります。
プロパティマネジメント(以下PM)(ストック型)
物件のオーナーと契約を行い、建物の管理運営を行ってその手数料を得るモデル
マスターリース(以下ML)(ストック型)
物件のオーナーから建物全体を借り上げ、それを転貸して賃料収入を得るモデル
施工・設計(フロー型)
不動産再生の施工を請け負うモデル、ここからPMやMLにつなげることもある
再生物件保有(ストック型)
物件を購入し、リノベーションを行い、そのまま保有して賃料収入を得るモデル
キャピタルゲイン(フロー型)
保有と同じくリノベーションを行い、売却してキャピタルゲインを得るモデル。売却後そのままPM、MLにつなげることも
こうしてみると、リアルゲイトが積極的にフロー収入へとつなげる方針をとっていることがわかります。
本日発表されたリアルゲイトの24年9月期決算資料を見てみると、売上高7948億円のうちストック型が5520億円と全体の約7割を占めており、この安定した収益構造は、売却を出口とすることの多い不動産再生事業の会社にはあまり見られない特徴であると言えます。
リアルゲイトの強み
リアルゲイトが他の会社とは一味違うビジネスを行う会社であることは分かりましたが、ではその強みはどこにあるのでしょうか?
決算資料や私なりの考えでわかることを大きく3点、まとめてみたいと思います。
1.売上高の大部分がストック収入
前章でも書きましたが、リアルゲイトの売り上げはその大部分をストック型の収入が占めています。
ストック型収入の強みは、定期的に決まった額の収入が入ってくるために売上高が安定することです。
ストック型収入が売り上げの多くを占めることにより、仮にフロー型のビジネスが振るわなくてもある程度の売り上げが約束されていますし、収益の予想がしやすいため経営計画も立てやすくなります。
具体的には、その期に入ってきたストック型収入が来期にも入ってくることがほぼ確定しているため、「次期に向けて大きな投資をしたが、業績が振るわなかったために経営が苦しくなった」といった心配が減ります。
つまり、同じ売上高でも、フロー型が多くを占めるビジネスよりも積極的に未来への投資を行うことができるのです。
2.高い稼働率
リアルゲイトの物件は、「リアルゲイトの事業」でも説明したような理由から、稼働率が99%という非常に高い水準を誇っています。稼働率が高いということは同社がマスターリースを主要な収益源としていることから非常に重要なこととなっています。
マスターリースはオーナーから建物を借り上げ、それをさらに転貸することでその差益を得るビジネスなので、賃料が固定の場合、物件の稼働率に損益分岐点が存在することになります。
仮に稼働率90%がボーダーである場合、稼働率92%と94%では粗利に2倍の差が出ることになります。
稼働率を高く保つために賃料を下げてしまうと下手をすれば逆鞘になってしまいますが、代表取締役の岩本氏の話では、これまでに逆鞘になってしまった物件は会計上の問題等の特別な事情以外ではない(動画)とのことで、リアルゲイトの企画力・技術力の高さ、そして適正賃料の見極めの正確さが伺えます。
3.物件を狭い範囲に密集させるドミナント戦略
現在リアルゲイトの担当する物件は71件ありますが、渋谷区に29件、港区に18件、目黒区に14件と狭い範囲に密集しています。
これは同社の戦略の一つで、狭い範囲でビジネスを行うことにより、その地域に関するデータを集積してより適切な賃料を設定したり、その地域のニーズに合った物件を企画したり、運営の効率を高めるといった目的があります。
また、ザイマックス不動産研究所のフレキシブルオフィス市場調査2023によると、東京23区内のフレキシブルオフィスは2022年の時点で1260拠点、総面積は23.9万坪ありますが、そのうち拠点数の66.3%、面積の84.1%は都心5区(港区、渋谷区、千代田区、中央区、新宿区)に集中し、いずれの数字も伸び続けており、需要が特に高い地域となっています。
港区、渋谷区を特に得意としているリアルゲイトにはフレキシブルオフィス市場の状況を見ても追い風が吹いていると考えられます。
リアルゲイトの今後
リアルゲイトの2024年9月期の通期決算が本日10月29日に発表されました。その業績のまとめと、今後の目標について超簡潔にですがお伝えします。
営業利益はYoY+39.7%
まず前提として、リアルゲイトは年25%以上の成長を目標としています。今期もその目標を達成し営業利益はYoYで+39.7%となりました。
また、驚くべきことに稼働率が前回3Qの97.91%から更に増加して99.04%という驚異的な数字に達しています。
このこともあってか営業利益率も前期と比べ7.9%→9.6%と伸びています。
代表取締役の岩本氏はこちらの動画において、3~4年以内に12~13%の利益率を想定していると話しており、会社の資金が増えるにつれて事業の効率化がさらに行われいくとの期待ができます。
過去の決算資料を見ると、リアルゲイトは年間成長目標を昨年度は15%、今年度の2Qは25~30%、3Qは25%としていますが、今期の業績を受け、今回の資料では年30%以上の成長へと引き上げ、7年後の営業利益の目標を今期の約7倍の50億円としています。
1.3の7乗は約6.2ですので、毎期30%+αの成長ができれば十分現実的な目標といえます。
さいごに
以上がリアルゲイトの事業について私が調べたことの内容です。もしこれを読んでリアルゲイトの事業について興味を持った方がいらっしゃいましたら、まずは是非、リアルゲイトのホームページで物件を見てみてください。リノベーションだけでなく新築のものもありますが、どの物件も良い意味でオフィスビル感があまりなく、一つ一つに個性があって見ているだけでも楽しめます。
決算資料も分かりやすく作られていますし、代表取締役の岩本氏が出演する決算説明動画もIRライブラリから見れますのでそちらもどうぞ。
今回もお読みいただきありがとうございました。
今後もこのような面白い事業を行う企業について調べ、お伝えしていきますので、是非フォロー、記事へのスキ等よろしくお願いいたします!
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