【社業、地主。】「地主」株式会社のビジネスと株としての魅力
こんにちは!今回は「地主株式会社」について調べてきました。地主株式会社(以下、「地主」)は、社名の通りまさに地主を社業として行う会社で、同じような業態の会社は上場している会社では他に見当たりません。
同社はテレビでCMも放映しており、モーサテをご視聴の方であれば見覚えのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
同社はこのビジネスを「JINUSHIビジネス」と銘打ちブランド化しており、ホームページでそのスキームや来歴が非常に分かりやすく説明されています。
今回はその説明や有報、決算資料等を読んだ私が、「JINUSHIビジネス」とは具体的になんなのか?「地主」はこのビジネスにどういった強さを見出しているのか?そして、株式投資をする私たちは「地主」株をどういった株として見ることができるのか分かりやすく簡潔にお伝えします。
JINUSHIビジネスとは?
地主ビジネスという名前ではありますが、その実態はただ土地を持っているだけの言葉通りの地主とは異なります。いくつかのステップに分かれていますので、順番にご説明します。
1.土地を購入
まずはもちろん土地を買うところから始まります。周囲の人通りや人口、周辺の環境等を鑑み、将来にわたって転用ができる有望な土地を購入します。おおまかな分布としては首都圏、名古屋、大阪等の都市が多いようです。
2.テナントに土地を貸す
JINUSHIビジネスは建物を建設したり所有したりせず、そこに建物を建てたいテナントを誘致し、そこと定期借地権設定契約と呼ばれる契約を結びます。
この契約は要はその土地を利用できる代わりに、その土地の所有者(つまり「地主」)にテナント料を支払います、という契約です。
この契約は20~50年程度で交わされ、これにより所有する土地から長期的に安定収入が得られることになります。
3.その土地を売却
ここからが一般的な地主と明確に異なってくる部分になります。
締結した契約から収入を得るのではなく、JINUSHIビジネスではその土地を売却して利益を得ます。売却先は「地主リート」をはじめとした投資家たちです。
4.「地主リート」の運用
今「地主リート」という単語が出ましたが、この「地主リート」がJINUSHIビジネスの非常に重要な部分となっていますので説明しますね。
まず、「地主」は子会社に「地主アセットマネジメント」という会社を持っているのですが、この会社が「地主リート」という私募リートを運用しています。
私募リートというのは、簡単に言うと上場しておらず、機関投資家を相手にしている不動産投資信託のことです。機関投資家から出資を受け、その資金で購入した土地を運用し、それで出た利益を出資した投資家に分配します。
「地主リート」の説明に戻りますが、本リートは日本唯一の底地特化型の私募リートであり、現在の運用資産は2216億円に及びます。運用開始以来8年連続で増資を続けており、10年目の2026年には3000億円、次の目標として5000億円を目指しています。
「地主」は仕入れ、テナントと契約を結んで安定長期運用が約束された土地を地主リート等に売却し、子会社が運用するそのリートの運用報酬を更にストック収入として得ることで成長を続けているわけです。
こうしてみるとスキーム自体は他にもありそうな形のように見えますが、JINUSHIビジネスを独特たらしめている部分は、「土地」に特化しているところにあるのではないかと考えられます。
しかし、なぜ「地主」は建物、もしくは土地+建物ではなく「土地」に特化してビジネスを行っているのでしょうか?
私は、建物にはない、土地の不動産としての良さを非常によく引き出しているのがJINUSHIビジネスだと考えました。それについて、次章でご説明したいと思います。
JINUSHIビジネスの強み
不動産流通、運用において建物には関与せず、土地のみに特化する。会社が社業としてそれを行うからには、当然そうすることによる利点、つまりビジネスとしての強みが存在します。
追加投資が不要
これは「土地」が持つ建物にない利点になりますが、テナントと契約と交わした後には、建物の建設やそれにまつわる費用、そしてその運用にかかるお金はすべてテナント側の負担となるため、一切の追加投資が必要ありません。契約を交わした時点で、そこからの収益が約束されるわけです。
長期にわたって安定した収益
JINUSHIビジネスにおいては、テナントと20~50年程度の契約を行います。よって、その土地からは長期にわたって安定した収益を見込むことができます。
資産価値が下がりにくい
例えば、建物を建設もしくは所有する場合、それによって収益を出すためには当然リスクが伴います。
例えば商業ビルを建てた場合、想定した収益が上がらずテナントが撤退したり、地震等の自然災害によって修繕が必要となった場合には修繕費がかかったり、建物の老朽化によって賃料を下げざるをえなくなったり…
など、これ以外にも建物の所有にはさまざまな不確定のリスクが存在します。
それに対し、土地の運用にはそのようなリスクを負う必要がありません。
土地は老朽化しませんし、自然災害によっての修繕費もかかりませんし、建物ほど不動産市況の影響を受けにくい傾向にあります。
また、契約終了時には更地で返還されるため、一般的な不動産と比べて資産価値が下がりにくいのです。
私募REIT「地主リート」
さきほどこの「地主リート」については軽く説明しましたが、「地主」の決算説明資料を読むと、この「地主リート」がこのJINUSHIビジネスへの高い参入障壁であると説明されています。
確かに、JINUSHIビジネスを行おうとした場合、土地を仕入れ、テナントと契約し、それを売却するということは行えるかもしれません。しかし、「地主リート」に後発で追いつくことは簡単ではありません。
先ほども説明しましたが、「地主リート」運用すでに8年目であり、運用資産2216億円(2024年1月時点)は私募リート58銘柄中8位、運用物件数154件は1位となっています。
さらに、「地主」は仕入れた土地のうち約31%を「地主リート」に売却していますが、他機関投資家やリース会社とブリッジスキームと呼ばれる形で提携しており、そちらにも優先的に土地を売却していますが、その分も合わせると全体の64.6%にもなります。
つまり、それだけ仕入れた土地の売却先が安定的に供給されているということです。
何が言いたいかというと、地主リートがあることにより、そこからストック収入を得られるだけでなく、土地の売却先を探す負担が減るというシナジーが発生しています。
そのシナジーは私募リートの規模が大きければ大きいだけ強くなりますが、運用8年目で高い運用実績を誇る地主リートに対抗するのは簡単なことではなく、このことがJINUSHIビジネスへの高い参入障壁となっているのではないでしょうか。
「地主」の株としての魅力
ここまで「地主」のビジネスについて説明してきましたが、ここからは株式「地主」(3252)にどのような魅力が見いだせるか、決算資料も参考にしつつ、私なりの考えを述べたいと思います。
「地主」のこれから
地主株式会社、そしてJINUSHIビジネスはこれからどうなっていくのでしょうか?もちろん決算資料に色んなことが書かれていますが、全部ここに書くわけにもいきませんので私が特に注目したい部分を3点にまとめました。
1.底地マーケットは拡大途上
日本不動産研究所によると、底地マーケットの規模はリーマンショックが起こった2008年には0.86兆円、しかし長期にわたって安定した収益が得られる底地商品への理解が深まり、その後の13年で6.7倍に拡大し、2022年には5.80兆円となっており、更に5年後の2026年には9.9兆円まで拡大すると見込まれています。
このことに合わせ、「地主」はこのマーケットにおける先行者であり、先ほど言及したように参入障壁も高いことから、同社は市場拡大の恩恵をよく受けることができると考えられます。
2.土地のオフバランス提案
決算資料を見ると、中期経営計画には「土地のオフバランス提案」という見出しがあり、強調されています。オフバランスとは所有と利用の分離、つまり、建物とその土地両方を所有しているテナントに対し、土地のみの売却を提案するということです。
土地を売却することにより、その分のキャッシュが手に入り財務体質を向上できるという点では土地・建物両方の売却と同じです。しかし、土地のみを売却するのには独自のメリットがあります。
それは、「売却前と変わらない事業運営が可能」であるということです。
例えば建物を他者の保有にしてしまった場合、改装や追加の設備投資を行いたい場合、所有者の許諾を得る必要がありますし、再開発等によって立ち退きを余儀なくされる可能性もあります。
対して、土地のみの売却の場合、建物は自社保有ですし、地主リートは契約満了時に再契約を前提として再開発や無理な賃料増額を要請しないため、安心して変わらず事業運営を続けることができます。
このように、「土地のオフバランス提案」は、「セール&リースバック」と呼ばれる土地・建物両方の売却提案に対しての競争優位性を持つと強調されています。
「地主」は今後この形態のセールスにより、他社との競争で優位に立とうとしているようです。
3.「地主リート」の安定性
先ほども説明した通り、「地主リート」は土地という安定性の高い不動産を運用しており、「地主」が仕入れた土地の売却先の安定供給元となっています。
また、「地主リート」が大きくなれば地主は土地の売却が容易になるだけでなく、ストック収入であるだけでなく、利益率73%(今期の四季報より)というとても優秀な収入源の拡大により、地主全体の業績も引き上げることができます。
今後の「地主」の成長のカギは「地主リート」であると言えるでしょう。
「地主」株が満たせるニーズ
最後に、「地主」の株はどのような方のニーズにマッチしているのか、私なりの考えを述べます。こちらも同じく3点挙げます。
1.不動産市況に影響されにくい不動産株が欲しい
「地主」株は不動産株でありながら、取り扱う「土地」という不動産の特性により、不動産全体の市況に影響されにくいという特徴も持ちます。例えば大きな地震が起きた等の要因により不動産市況が悪化した場合にも、同株は他の不動産株ほどの悪影響を受けないのではと考えます。
2.安定した成長が見込める株が欲しい
先ほど「地主」のこれからで説明した通り、「地主」には今後も安定した成長が見込めます。急激な株価の成長が起こるかは業績次第ですが、同社の優秀なビジネスモデルに下支えされた業績および株価の成長が見込めるのではと考えます。
3.高配当株が欲しい
「地主」は2023/12期末を最後に株主優待を廃止し、代わりに現金配当で還元する方針へと変更しました。具体的には、55円→85円と大きく増配との予想が出ており、これは廃止された株主優待相当分を上回る増配です。
同社は今後も利益成長による増配を目指すとしています。売買によるキャピタルゲインも期待できると思いますが、株主還元にも積極的なため配当で稼ぎたいという方にもおすすめできると考えます。
さいごに
以上、私が「地主」に関して調べたことのまとめになります。本当に魅力的な企業で、資料も分かりやすく、調べていてとても楽しかったです。もし同社に興味の出た方は実際にホームページをご覧になってみてはいかがでしょうか?
最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございました。
このような記事を書くのは初めてで、至らぬところもあるかと思います。
ご意見・ご感想等あればぜひぜひコメント欄までよろしくお願いいたします!