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ベース(4481)が受託開発で高収益・高成長を続けられる秘訣とは?

こんにちは、今回はベース株式会社についての記事です。

最近、システム開発企業の四季報を写経していたのですが、その中でもベースという会社が特に目に留まりました。なぜかというと、同社の営業利益率が25%を超え、かつその利益が年平均で30%ほど成長し続けていたからです。

同社はソフトウェアの受託開発を行う企業なのですが、受託開発メインはもちろん、システム開発全体を見回しても、営業利益率が継続的に20%を超えている上場企業は片手で足りるくらいしかありません。

かといって四季報を読んでみても、同社が他社と比べて何か特別な収益モデルをしていたり、実は自社パッケージ商品があったなどということはありませんでした。

例えばオービック(4684)の「OBIC7」のような、複数の企業に提供できるパッケージ商品があれば顧客ごとの対応への工数が減るためその分利益率を高めることもできますが、ベースには目立った自社パッケージはなく、都度開発を受託しているようです。

他の開発受託をメインとする企業が営業利益率20%以下、それどころか10%を下回っている企業もたくさんある中、同社はどのようにして年30%の成長を行える投資を行いながら営業利益率25%を維持しているのか、調べてみました。

ベースのビジネスモデル

同社はソフトウェア受託開発100%の単一セグメントですが、その70%がシステム開発事業であり、更にシステム開発は開発、その保守運用、そして社員支援と分かれています。

システム開発を受託し、その保守運用、および関連する支援を社員がその顧客企業に常駐して行うといったごく普通のビジネスモデルとなっています。

ビジネスモデルに関しては特に特殊な部分がないためこれくらいにして、これからベースがどのようにしてこのビジネスモデルで高収益・高成長を維持しているか、説明していきます。

高収益の理由

1.少数の大手顧客へのリソース集中(柱顧客戦略)

ベースの売上の顧客別の内訳を見てみると、いくつかの大企業に集中していることがわかります。具体的には富士通、みずほ証券、野村総研、NTTデータなどで、これらの企業が売上全体に占める割合は、グループ企業なども含めると70%に達します。

ベースはこれら少数の大手顧客との深く長い付き合いを大切にしており、それによる信頼感の醸成、そして営業・業務の効率化を狙っています。
まず初めに案件を受注→その案件をこなすことによりその会社の業務等に関する知識、ノウハウを蓄積→それによって生産性を向上して顧客評価につなげる→更なる案件を獲得するというサイクルを重視しているわけです。

2024/12期3Q決算説明会資料より

2.現場での受注活動

ベースは、主要顧客に営業人材を配置していません。では誰が顧客に提案を行い、案件を獲得しているのか?それは現場に常駐しているエンジニアメンバーです。

実は各顧客先には意思決定権を持ち、エンジニアでもある部長が常駐しており、部長自身が案件の提案を行い、更に部長自身もその案件に参画します。
これにより迅速な意思決定が行えるだけでなく、SE自身がヒアリング・見積もりを行うため不採算案件も抑制でき、顧客視点においても、常駐して自社の業務をより理解してくれており、さらにその案件の責任者でもある人間が提案を行ってくれるのでより安心感があります。

また、実はベースは社員のエンジニア比率が95%と非常に高くなっています。これはエンジニア自身が現場で提案、案件の獲得を行っているためで、これにより営業の人材を雇う必要がなくなっています。通常の受託開発では営業が新規開拓を行なわなければならず、大きなコストがかかってしまいます。
前述の少ない大手顧客の深堀りと常駐エンジニアによる案件獲得が組み合わさり、利益率の向上につながっているという点が同社と他社の大きな違いとなっています。ちなみに2023年の同社の販管費率は6.0%と非常に低く抑えられています。

2024/12期3Q決算説明会資料より

3.全社での稼働率の平準化

ベースは前述のようにエンジニアの比率が高いだけでなく、エンジニアの稼働率も95%と非常に高いのが特徴です。
自社で独自に開発した「b.mat」という工数の管理システムがあり、これを活用して適切な人員の配置を行うことにより、開発を効率化しています。
部門を超えて要員の調整も行うことがあり、人的資源を最大限に稼働させることによって利益率の最大化につなげています。

2024/12期3Q決算説明会資料より

成長戦略

ベースの高い利益率の理由が分かったところで、同社がこれからどのように高成長を続けていくか説明していきます。

既存および新しい柱顧客の育成

最新決算によると、既に5、6社目の新しい柱顧客の育成が進んでおり、うち5社目の売上は全体の9.1%を占めるまでになったそうです。
柱顧客が売上全体に占める割合は依然として70%を超えており、この5社目も合わせると80%ほどになると思われます。

芝生戦略

現在、ベースには部長が30人以上いるそうです。つまり、その数だけ部が存在するということで、部の中で課を増やしていかないというのが同社の組織構造の大きな特徴です。
これにはいくつかの理由があります。

・中間管理職が存在せず組織の階層が少ないため、現場中心での活動が維持できますし、意思決定を迅速に行うことができる。
・部長に多くの権限が与えられ、また利益責任も負うため、責任感や主体性が向上し、パフォーマンス向上につながる。
・エンジニア自身が部長になることにより、同社の高いエンジニア比率を維持でき、販管費を抑制することができる。
・毎年部門が新設されるため、若手社員に多くの機会が提供され、モチベーションの向上に繋がる。

この芝生戦略のため、同社は幹部育成を積極的に行っています。

2024/12期3Q決算説明会資料より

人材育成・新しい技術ニーズへの対応

今更言うまでもありませんが今日のIT技術は日進月歩ですから、エンジニアの技術習得・育成を行ったり、新しい技術ニーズの出現には積極的に対応してノウハウを蓄積することは不可欠です。
同社は社内での人材育成制度、教材の提供、新技術を使ったアイデアのコンテストなどを実施しており、特に今期の生成AIコンテストは社員側が能動的に開催し盛況だったという話もありました。(決算説明会動画より)

2024/12期3Q決算説明会資料より

新規人材の獲得

ここまで言及するタイミングがなかったのですが、ベースの大きな特徴として、エンジニアチームが日本人と中国人が50:50の混成チームであることが挙げられます。価値観の違い、長所の違いなどが混ざり合ってチーム全体としてのシナジーを生むという考えのもとのようですが、これにはまた別の利点もあります。
それは、人材獲得のチャネルが2つあるということです。

最近IT人材の不足が叫ばれ、良い人材の確保は争奪戦となっています。
そんななか、日本国内だけでなく中国の人材市場にも手を伸ばせるというのはかなり大きいと考えられるでしょう。

以上でベース株式会社に関する記事は以上となります。
同社の高い利益率はもちろん、受託開発という案件獲得が入り口となる事業において、平均30%という割合で、さらに安定的に成長を続けている企業は本当に限られています。
DXの需要はまだまだ衰えることを知らず、IT市場はまだまだ拡大を続けそうです。そんなマーケットの状況も味方して、同社の成長にはかなり期待が持てると思っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。これからも企業のビジネスについて、分かりやすく解説した記事を更新していきますので、本アカウントやXのフォロー、そして記事へのスキをよろしくお願いいたします!

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