過去の大地震でどの株が上がった/下がったのか?【前編】
注:この記事は前回投稿した「投資目線で地震に備えるには?」があまりにも情報を詰め込みすぎて読みにくかったため、同記事を2回に分け、それぞれの内容を拡充するものです。
1. 地震にそなえたポートフォリオを作ろう
日本は地震が頻発する国であり、その影響が経済や株式市場に及ぶことは避けられません。特に最近では、2023年に発生した能登半島地震が地域経済やインフラに深刻な影響を与えたことが記憶に新しいです。
過去の事例を振り返ると、地震発生時には市場が混乱し、短期的な株価の急落やセクターごとの影響が顕著に表れます。本記事では、地震が株式市場に与える影響について、過去の事例をもとに具体的に掘り下げていきます。
2. 地震と株式市場の関係
地震は突然発生するため、市場参加者が準備不足の状態で対応を迫られることが多く、心理的なパニックが株価の急落を引き起こします。ここでは、地震発生時の市場の動きについて、東日本大震災を事例として詳しく見ていきます。
2-1. 地震発生直後の市場の動き
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、日本経済と株式市場に大きな衝撃を与えました。震災発生後の2営業日で日経平均株価は10,254円から9,139円へと1,015円下落し、特に電力関連株が大幅な下落を記録しました。東京電力の株価は、震災発生前の2月末時点で2,153円だったものが、3月15日にはわずか207円にまで急落しました。この背景には、福島第一原発事故による電力供給への懸念がありました。
また、製造業や輸出関連企業もサプライチェーンの混乱により大きな打撃を受けました。トヨタ自動車の株価は震災直後に3,845円から3,135円へと約18%下落し、ホンダも同様に2,950円から2,400円台まで値を下げました。さらに、トヨタの生産台数は震災後の3カ月間で約30万台減少し、ホンダと日産もそれぞれ約20万台と15万台の減少を記録しました。一方、建設業やインフラ関連企業の株価は比較的堅調に推移し、復興需要を見越した買いが入り始めました。
2-2. セクター別の影響
電力・エネルギーセクター: 福島第一原発事故により、東京電力をはじめとする電力関連株は深刻な下落を記録しました。この影響は他の電力会社にも波及し、セクター全体の株価が軟調となりました。
製造業・輸出関連企業: 地震によるサプライチェーンの混乱が、部品供給の遅延や生産停止を引き起こし、特に自動車や電子部品メーカーに影響が及びました。東芝やパナソニックなどの株価も震災直後に大幅な下落を記録しました。
建設・インフラ関連企業: 復興需要が期待される中、地震発生後に一時的な株価上昇が見られました。例えば、大成建設や清水建設の株価は震災後半年間で30%以上の上昇を記録しました。能登半島地震でも、地域の復旧プロジェクトが進行しており、建設業界の売上高増加が期待されています。
防災関連企業: 地震後、防災用品や災害対応製品を扱う企業が注目されました。例えば、ホシザキ(災害用備蓄製品)、アドバンテスト(緊急用電力機器)、カネカ(耐震補強材)は、需要増加が株価にプラスの影響を与えました。
これらの事例から、地震が短期的に市場を混乱させる一方で、復興需要や長期的な成長を見越した投資機会を生むことがわかります。
3. 投資家として知っておくべき地震の影響
3-1. 投資家心理の変化とその影響
地震が発生すると、不確実性の高まりから投資家心理が大きく揺れ動きます。この心理的な反応を示す具体的な指標としてVIX指数(恐怖指数)が挙げられます。例えば、東日本大震災では、VIX指数が震災直後に急上昇し、投資家のリスク回避行動が顕著になりました。こうした不安は短期的な株価の急落を引き起こします。
能登半島地震(2023年)の際も、地域経済やインフラへの懸念から投資家心理が揺れ動き、一部のセクターでは売りが優勢となりました。しかし、その後、冷静さを取り戻した市場では復興需要を見越した動きが見られました。
3-2. サプライチェーンの混乱と経済への影響
地震は、製造業や輸出関連企業に特に大きな影響を及ぼします。東日本大震災では、トヨタ自動車の生産台数が震災後3カ月で約30万台減少しました。ホンダや日産も同様に大きな影響を受け、それぞれの生産台数が約20万台と15万台減少しました。このようなサプライチェーンの混乱は、部品供給の遅延や生産停止を引き起こし、関連企業の業績悪化につながります。
能登半島地震の際も、地域に拠点を持つ中小製造業が生産停止を余儀なくされ、供給網の寸断が一部の業界に波及しました。
3-3. 復興需要の高まり
一方で、地震後の復興需要は経済成長を促進する要因ともなります。東日本大震災では、大手建設会社の大成建設の売上高が震災後1年間で約25%増加しました。清水建設や鹿島建設も同様に、公共事業やインフラ再建を背景に二桁成長を記録しました。
能登半島地震でも、地域の道路や公共施設の復旧工事が進行しており、建設業界がその中心となっています。このような復興プロジェクトは、地域経済の回復と長期的な成長に寄与します。
まとめと次回予告
今回の記事では、過去の大地震への株式市場の反応をまとめました。今後、南海トラフを筆頭とした大地震が起きた際、どのように立ち回ればいいのかの参考になれば幸いです。
次の記事では、この記事の内容を踏まえ、具体的に地震にどのように備え、発生した際にはどのように立ち回るべきなのかをまとめていきます。