【投資ノート#2】割安性について - PBR

投資ノート#1では株価と時価総額について整理しました。

時価総額をみる事でその会社の規模感が分かりますが、時価総額は投資家の評価を反映しているため、実際の会社の状態から乖離(割安・割高)が見られます。
銘柄選定の際にはこの乖離(割安かどうか)を見るのも重要で、その為には割安性の指標を使うのが有効です。


今回は割安性を判断する指標の中からPBRについて整理してみます。



割安性の指標の種類

割安性には、何に対して割安なのか?という点で幾つかの見方があります。

①PBR(株価純資産倍率)

会社の持つ資本(資産価値)に対して時価総額が割安かを示す指標。会社のストック(蓄積された資産)に対しての割安性評価。

②PER(株価収益率)

会社の稼ぎ出す力(利益)に対して時価総額が割安かを示す指標。会社のフロー(ある期間の収支)に対しての割安性評価。

③PSR(株価売上高倍率)

会社の売上高に対して時価総額が割安かを示す指標。まだ十分な黒字が出る前の投資が多い段階の企業ではPERでは評価ができない為、PSRを使う。

④理論株価

会社の資本面、稼ぎ出す力両方を加味した中長期的な株価水準。
理論株価と今の株価の差をみる事でその銘柄がどれくらい割安かをみたり、比をみる事で割安度を他銘柄と比較できる。


この中から今回はPBRについて見ていきます。


PBRについて

PBRは会社の持つ資本に対して時価総額が割安かどうかでした。

会社の持つ資本のイメージは『仮にその会社が解散した場合、その会社にはどれだけ資産が残るか?』です。

[会社が保有している全ての資産(=総資産/総資本)]は[その会社がもっている返済の必要がない資本(純資産/自己資本)]と[将来返済しないといけない銀行などから借りた借金(負債/他人資本)]に分かれる為、総資産=純資産+負債と表記できます。
※総資産と総資本は同意、純資産と自己資本は同意、負債と他人資本は同意ですが総資産と純資産は別物です。


負債は返済しないといけない為、会社が解散した際には純資産だけが残ります。


PBRは純資産に対して時価総額が割安かどうかですのでこれらの比で表されますが、時価総額は発行済株式数×株価でも表せるので以下の式が成り立ちます。



PBRは四季報でも確認する事が出来ますが、四季報値は発行時点での少し古いデータになってしまうので、私は現在の株価と四季報のBPS値(もしくは純資産と発行済株式数)から簡易的に現在のPBRを計算しています。
(実際にはBPSも四季報値から変動していますが株式分割や増資等で純資産や発行済株式数が大きく変化していないのであれば四季報値を用います)



PBRの判断基準

PBRは1倍よりも小さいと割安と判断できます。

PBR1倍は純資産と株価が釣り合っている状態であり、会社を解散して株の価値がゼロになっても、株価分を純資産で賄えると考える事ができるためPBR1倍が割安の基準という考え方ができます。


PBR投資のメリット

低PBRの株を買う投資はバリュー株投資といい、適正なPBRになった時の利益を狙える一方で、損失も大きくなりにくい(ローリスク)というメリットがあります。

また、低PBRかつ高配当な株を買う事で、毎年配当を貰いながら、ローリスクに投資する方法もあります。


PBRを使う時の注意点

PBRを使う時には幾つか注意点があります。

⑴業績が悪くて低PBRになっている企業

PBRが低いと割安と判断できました。

PBRの計算式より、PBRが低くなるのは以下の3通りがあります。
・株価が安くなる
・純資産が増える
・発行済株式数が減る


株価の変化については『企業内部の変化』『外部環境の変化』『投資家心理の変化』により起こりました。
このうち『企業内部の変化(業績悪化)』で株価が安くなり、低PBRになっている企業は要注意です。

業績悪化で利益が出ていない企業はPBRに影響する『純資産』も増えにくくなります。

これは、企業活動で最終的に出た利益(当期純利益)がそのまま純資産の増加に繋がる為で、もし赤字となった場合の純資産はその分だけ減少する事になります。
その結果、今はPBRが低くても先々でPBRが高くなり、割安ではなくなる場合もありえます。


⑵PBRは現在の資産しか見ていない

PBRは純資産と株価(時価総額)の比較でした。

純資産はある一時点での資産(ストック)を示していますが、どれだけ稼げているか(フロー)は分かりません。

⑴にも繋がる話ですが、PBRだけを見て銘柄を選ぶ事はフローを見ていない事になるので避けるべきです。


⑶純資産に対して負債が極端に多い企業

企業にとってある程度の負債は収益を伸ばす為に必要な事です。
一方で、純資産に対して多すぎる負債は財務悪化のリスクがあり、PBRが低くても要注意です。

利益がしっかり出ている時はそれでも良いですが、もし業績が悪化したら、純資産に対して負債が多いと返済が困難になってしまいます。

一時的な財務悪化であっても、負債が返済できない状態(債務超過)になってしまうと最悪の場合には倒産して株が紙切れになる可能性もゼロではありません。

上記のように、銘柄選定では財務健全性も見る必要がありますが、財務健全性を判断する指標として自己資本比率があり、以下の式で表されます。

自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産

業種によって自己資本比率の目安は変わりますが、私は自己資本比率40%以上を財務が健全な状態の一つの目安としています。


以下の例ではA社は自己資本比率50%なので、財務は比較的安全である一方、B社は自己資本比率20%なので、ここだけを見るとA社より財務リスクが高いという判断になります。




⑷低PBRが続いている

例えば市場全体が低迷している等に、外部要因で全体的に株が下がり、一時的に低PBRになっている銘柄であれば良いですが、長期間低PBRが続いている場合には注意が必要です。

そもそも時価総額及びそれを構成する株価は株主からの評価の結果で今の値になっています。
そのため、長期に渡って低PBRになっている銘柄は、その企業や業界に低PBRになっている理由があり、それが変わらないと今後も低PBRが続き、結局利益が出ないというリスクもある事は頭に入れておかないといけません。
低PBRを改善するのに何が必要かについても今後整理していこうと思います。



まとめ

〈PBR(株価純資産倍率)とは〉
会社の純資産(ストック)に対する時価総額の割安性を示す指標

〈会社の資産の内訳(純資産とは)〉
総資産=純資産+負債
・総資産は会社が保有している全ての資産
・純資産は返済の必要のない資本。企業活動で得られた利益は純資産に含まれる。
・負債は将来返済しないといけない借金

〈PBRとBPS(1株当たり純資産)〉
PBR = 時価総額 ÷ 純資産
   = 株価 ÷ BPS

BPS = 純資産 ÷ 発行済株式数

BPSは企業が解散した時に1株当たり幾ら割り当てられるかを示す

〈PBRの判断基準〉
PBRは1倍よりも小さいと割安と判断できる

〈PBR投資のメリット〉
低PBRなど割安な株を買って利益を出す投資をバリュー株投資という。
バリュー株投資は損失が大きくなりにくいのが魅力(ローリスク)で、低PBRかつ高配当株を狙って長期で配当を貰いつつ値上がりを待つ方法も有効。

〈PBRを使う時の注意点〉
⑴業績が悪くて低PBRになっている企業
利益が出ておらず低PBRになっている企業は純資産が増えにくく、PBRの割安感も失われるリスクがある為注意


⑵PBRは現在の資産しか見ていない
PBRでは企業の収益性(フロー)をみる事ができないため、別の指標や業績もチェックして収益性も評価する必要がある。

⑶純資産に対して負債が極端に多い企業
純資産に対して負債が多いと財務健全性が悪くなり、財務健全性から資金調達のしやすさや倒産リスクが判断できる。

自己資本比率がその指標となり以下の式で表される。
自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産

自己資本比率40%以上を財務健全性の目安にしている。


⑷低PBRが続いている企業
長期間低PBRが続いている企業にはその企業もしくは業界にその理由があり、株価が安い状態が続く可能性がある。

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