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「6月28日はパフェの日(?)」について1人の野球ファンが思うこと。

「6月28日はパフェの日」。

ということになっている。

一般社団法人日本記念日協会では、「パフェの日」をこう説明している。

フランス語で「完全な」を意味する「パルフェ」からその名をとったとされるデザートの「パフェ」。その美味しさ、美しさ、オリジナリティの豊かさをより多くの人と楽しみたいとパフェの愛好家が制定。日付は同じように「完全」を意味する「パーフェクトゲーム」がプロ野球史上初めて達成された日(1950年6月28日)にちなんで。また、完全数の最初の二つは6と28だからとの説もある。さらに、パフェに使われるメロンなどの果実が出回る季節からも。

https://www.kinenbi.gr.jp/

私は野球が好きで、パフェも好きだ。
だが、その2つが関係する「パフェの日」には課題があると思っている。
むしろ、パフェと野球は不完全な関係とすら言えるかもしれない。
28年ぶりに完全試合が達成された2022年、今後のパフェと野球の良好な関係構築のためにも、「パフェの日」について考えてみたい。

論点1「パフェの愛好家って、誰?」
記念日の成立過程が不明瞭


まず、誰が制定したのかが不明瞭である。
協会の説明文には「パフェの愛好家」とあるが、それ以上の説明はない。
サイトでは「パフェの日」は「その他の記念日」になっている。
協会に問い合わせたところ、これは協会が認定する「記念日協会認定記念日」ではないという意味で、管理していない協会としては説明文以上のことはお答えできないそうだ。

また、時期も不明瞭である。
協会が編集した「すぐに役立つ・366日『記念日事典』」(創元社)には、2009年の初版から2016年の第3版まで「パフェの日」の記載はない。
2020年の第4版から記載されているため、2016年以降に協会が「パフェの日」の存在を認識して追加したと推測されるものの、時期を特定する情報は得られなかった。
記念日に関する本では1999年「記念日の事典」、2006年「記念日・祝日の事典」(いずれも加藤迪男編、東京堂出版)などがあるが、どちらも「パフェの日」の記載はなかった。

▲「すぐに役立つ・366日『記念日事典』」(左が第3版、右が第4版)。

「パフェの日」って、誰が、いつ決めたんだ。

論点2「パフェ、関係ないのでは?」
パフェの日なのに、野球が由来になっている


そして、最大の論点はその由来である。

”日付は同じように「完全」を意味する「パーフェクトゲーム」がプロ野球史上初めて達成された日(1950年6月28日)にちなんで。”

たしかに読売ジャイアンツの藤本英雄が、西日本パイレーツを相手に青森市営球場においてプロ野球初の完全試合を達成したのが6月28日ではある。
2022年、千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希が28年ぶりに達成して話題となったが、達成者は佐々木を含めて16人しかいない。野球ファンにとって完全試合が偉大な記録であることは間違いない。

しかし、それと「同じように」という理由で「パフェの日」の由来にするのは、はっきりいって無理があると思う。
ともすれば野球が主でパフェが従のように感じてしまう。
完全試合の偉大さと、パフェを楽しむことの素晴らしさは別のものだ。
何かの記念日を決めるのに、別の何かの記念日を持ってくるのはどちらにとっても居心地が悪い。

論点3「パフェの日は、盛り上がっていない?」
当日のパフェ店と球場の風景


2022年のパフェの日。
横浜スタジアムでの観戦前、馬車道のパフェ屋さんでパフェを食べた。
お店の方に「今日はパフェの日みたいですね」と聞くと「ああ、そうでしたね...」と苦笑い。
「あまりパフェ業界は盛り上がっていないですね」と続けるお店の方。
誰がいつ決めたか分からない由来が野球の記念日に、あまり乗り気でない様子だった。
なんか、申し訳ありませんでした。
パフェは最高に美味しかった。

その後に行った横浜スタジアムでは、石田健大プロデュースの「マスカットパフェ」が登場していた。
「フローズンのブドウとスッキリしたマスカットゼリーがポイントの夏にピッタリ爽やかパフェ!」。
せっかくのパフェの日、ということで購入。
ビールの売り子さんに「今日がパフェの日って知ってましたか」と聞いたところ「そうなんですか?」とやはり苦笑い。
気づいたら右手にビール、左手にパフェを持つことになってしまった。
パフェと野球の距離は遠いのだろうか。
パフェは意外と美味しかった。

▲石田健大選手プロデュースの「マスカットパフェ」。えらい勢いでアイスが溶ける。

ここまでいろいろ考えてきたが、また違う話をしなくてはならない。
数字の話だ。

補足「6と28は完全数?」
偶然に翻弄されるパフェと野球


日本記念日協会の説明の後半にはこうある。

”また、完全数の最初の二つは6と28だからとの説もある。”

完全数perfect numberは「その数自身を除く約数の和がその数自身と等しい自然数」のことて、
6(1+2+3)と28(1+2+4+7+14)がまさにその完全数なのだ。
そして次の完全数は496(1+2+4+8+16+31+62+124+248)まで飛ぶため、「完全数が揃う日は1年で6月28日の1日だけ」ということらしい。

つまり6月28日は「プロ野球初の完全試合の日で、パフェの日で、1年で1日しかない完全数の日」ということになる。
すごい偶然だ。
なんだかややこしくなってきた。

▲丸山和郁選手の「マルヤ・マロンパフェ」。
(同選手は今年も「ベリーベリーカスタードパフェ」を出しており、注目である)

まとめ「野球の完全試合とパフェの日は別の話だ」
野球ファンとして取りたいスタンス


「パフェの日」について、既出の情報も含めて私なりに調べてきた。
また、「パフェの日」については、先行研究がある。
パフェ評論家である斧屋さんが、放送プラットフォーム「シラス」にて、「パフェの日」の話をしている。
有料だが体系的にかつ深堀りされた内容が説明されており、たいへん(本稿よりよっぽど)参考になるので、興味がある方はご一聴を。

このツイートに続けて斧屋さんは下記のようにお考えをまとめている。

野球とパフェのどちらも好きな私としても、この考えを支持したい。
「パフェの愛好家」様には申し訳ないが、制定の経緯が不明瞭なのをいいことに、方針転換するべきだと思う。
野球自体は「長くて展開が見えづらい」ものであり、パフェの楽しみとは完全には一致しない。
一方、「完全数の日にプロ野球初の完全試合が達成」という偶然は、数字や記録が大好きな野球ファンとしては捨てがたい魅力がある。

なので、「6と28が完全数だから6月28日はパフェの日」と「プロ野球初の完全試合は6と28の完全数の日に達成された」という、この2つを分けて語っていくことを、特に野球ファンの立場としては意識して生きていこうと思う。
斧屋さんからも歩み寄りいただいている。
野球ファン側からも発信していくことが重要だと思うので、これを読んだ皆さまにぜひ同じように意識していただければ幸いである。

2022年は完全試合の話をするにはもってこいの年のはずだと思う。
なにしろ佐々木朗希の完全試合は、プロ野球28年ぶりなのだから。

28は、完全数。


※「文春野球フレッシュオールスター2022」ベンチ入り賞を加筆修正

https://bunshun.jp/articles/-/56284?page=1

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