Basic Income(BI)に対する批判

久しぶりの投稿です。

TwitterではJob Guarantee Program(JGP)とBasic Income(以下BI)の論争がたびたび激化してますね。

私はBIに反対でJGPを支持する立場なんですけど、今回はその理由を整理したく。

最初に列挙させていただくと、大きく5つあります。

1.BIにはビルトインスタビライザー機能が全くない
2.BIでは労働者の賃金引上げや労働環境の改善につながらない
3.BIがあるといって仕事から遠くのと再就職が難しくなる
4.JGPでは生活所得が保証されているため、ある程度のインフレでも許容できる
5.BIでは自由市場に過度に依存することになるのがヤダ

以下では順に説明していきます。


1.BIにはビルトインスタビライザー機能が全くない

BIは景気に依らず全国民に一定額を給付するので、ビルトインスタビライザー機能は全くありません

むしろ、インフレをリスクを助長しかねないと考えています。
仮にインフレが生じてBIの給付額が不十分になれば、給付額を引き上げなければなりませんよね。
そうするとさらに財政支出は増えて、民間の金融資産も増えることになります。
増えた民間金融資産が消費に向かえば、一層景気が過熱し、さらなるインフレを招いてしまいます。

「累進所得課税で徴税するから大丈夫」みたいな話をどっかで見た気がしますけど、限界税率が100%未満であれば必ずみんなの所得が増えるわけですからね。
限界税率が100%なら、そもそもみんなに配る必要はないので、ユニバーサルなBIじゃなくなりますよね。

逆にJGPは強力なビルトインスタビライザー機能を有します
不況時は失業者が多くなるので、JGP労働者は増加し、政府支出は増えます。
好況時はJGPから退出する人が増え、政府支出は減少します。

2.BIでは労働者の賃金引上げや労働環境の改善につながらない

BIだと、経営者側に賃金引き上げや労働環境の改善のインセンティブは生じませんからね。

もしかしたら、全く働かなくても十分な生活ができる水準の給付がなされれば労働者側の交渉力は高まるかもしれません。
しかし、①のとおり、これはインフレリスクが大きいので現実的ではないかと。

他方、JGPが提供する雇用の処遇は、雇用市場全体のフロアになります。
民間での処遇がJGPよりも悪ければ、民間からJGPに雇用が流れてしまいます。
これを防ぐためには、民間はJGPよりも高い処遇を提示する必要があるのです。

3.BIがあるといって仕事から遠くのと再就職が難しくなる

現実でも、失業が長期化すればするほど、再就職が難しくなりますもんね。
雇う側からすれば、長らく仕事していない人が、今も満足に仕事できるかは心配ですから。
BIがあるから少しは生活できると安心してしまい、長期間仕事から遠ざかってしまうと、いざ働こうと思った時に雇ってもらえない、ということになりかねません。

JGPでは、職業機会に加え、キャリアアップにつながる教育・訓練プログラムも提供します。
JGPで働き続けることも可能ですが、より高い処遇の職を得ることもできるようになります。

4.JGPでは生活所得が保証されているため、ある程度のインフレでも許容できる

JGPでは、多少高めのインフレ率であっても、生活所得が保証できる水準までJGPの賃金を引き上げれ、国民の生活は守られます。
国民の生活が守られている限りにおいては、インフレ率がある程度高くても問題ないと考えることができます。

なお、JGPの賃金引き上げは、インフレ率に応じて機械的に引き上げるわけではありません
CPIやGDPデフレータとかで求めるインフレ率って、経済全体の平均値ですから、生活所得を保証する際の参考値にするのは妥当ではありません。

具体的な引き上げ方法については、JGP労働者の生活所得を保証する額とするものなので、JGP労働者の消費等の生活実態を把握して決めていくものだと思います。
たぶん、今の診療報酬改定や介護報酬改定に近いかも。

MMTでは、財政当局の役割はインフレリスクを踏まえた財政運営ってことになっていると思うんですけど、個別の財政支出についてインフレリスクを正確に把握するのは困難ですよね。
だから、高い確度でインフレ率をコントロールするってのは極めて難しいんです。

でも、JGPがあれば、行き過ぎたインフレでなければ、ある程度のインフレを許容しながら国民生活を保証できるんですね。
つまり、コントロールするインフレ率に相当な幅があっても許容されるようになります。

5.BIでは自由市場に過度に依存することになるのがヤダ

これは私の価値観が色濃く出てます。
例えば、BIによってパチンコ店の売上が上がったとすると、それを受けてパチンコ店が増えますよね。
当然、パチンコ店による雇用も増えます。
言い方を変えると、労働力や土地といった大切な資源がパチンコ店に取られてしまうんですね。
そんな社会でいいんですか、もっと大事なことに資源を使うべきではないんですかってことです。

JGPの仕事は「民間では供給されない、地域や社会をよくする仕事」です。
民間では供給されないので、自由市場では取引されないものです。
私は自由市場には大きなメリットがあると思ってますけど、そこで取引される財・サービスだけでは、我々は生きていけないんですよね。

当然、JGP以外の既存の公的な制度はあるわけですけど、JGPでは、さらにそこを補強するんです。
そもそも、JGPの労働者は、JGPがなければ失業者であり、彼らの労働力は社会が有効活用できていない資源と捉えることができます。
この資源を地域や社会をよくするために活用するという考え方が、私は好きなんです。

最後に

BIに対する批判と、その対比としてJGPを支持する理由を説明してみました。

最後の最後でアレですけど、私はBIには反対であるものの、BI支持者がすべて嫌いなわけではないです。
私がJGPを好きな理由は、いろいろ理屈をつけましたけど、好き嫌いによるところが大きいです。
だから、BI支持者もある程度は好き嫌いの部分があると思うんですよね。
考え方が違うからって、激しく嫌ったり、辛辣な批判をする根性は私にはありません。


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