理想郷としてのタイ・チェンマイ【タイ移住日記2024/05/09-14】
意外とネットでは知名度の高い街
チェンマイは意外と知られた街だと思う。旅行会社にいたときに、妻についてチェンマイに移住するんです、という話をしたら、「ふーん、聞いたことあるけどどこだっけ」という反応が殆ど。一方大学時代にバックパッカーやってました系はだいたい知っている。
街中で野生の日本人らしき人はコムローイの時期以外で見たことがないが、ネットには意外といる。私もその一人だと思う。
でも私のように移住者として野良の書き物をしている人はほぼいない。情報局、ユーチューバーの方は少なからずいらっしゃるが、エッセイのような日記を書き続けている人はネットを探してもいない。
私は「チェンマイ」なんてキーワードをタグ付けしても誰にも引っかからないと思いつつ、それでも自分はチェンマイにいるしと思い、「チェンマイ」のタグ付けをしていたら、noteのオススメに「チェンマイ」タグの付いた記事が出てくるようになった。それ以降、結構な数の記事が流れてきて、なんだかんだでだいたいの記事に目を通しているが、長期の移住者には出会ったことがない。
ネットで発信しているチェンマイに「いる」日本人
それじゃあネットで発信している日本人とはどんな人かというと、まとめてみるとこんな感じ。
このタイプ分けで90%のカバー率を誇っていると思う。さすがチェンマイを見続け、チェンマイに認められ、チェンマイにのみ込まれた男。
これで見ていくと、チェンマイは一時滞在者だが、少し長くいたい人に好まれるのであろう。第2の都市とはいえ、こじんまりしているし、バンコクとは異なり物価も安い。カフェも多く、安価で、作業向き。そして、外国人が多いので街の人々も結構英語が通じるので、生活に困ることはない。
でも日本人の中で怪しい犯罪者もいるからか、日本国籍者は30日の観光ビザしかもらえない。なのでだいたいみんな滞在するのは1カ月。観光ビザ延長もできるのでよっぽど気に入ったら延長という人もいる。それでもずっとはいれないのでいずれはどこかへ飛び立つか日本へ戻る。
実は日本人があまり知らないのは、外国人向けにタイ語の学校がEDビザという学生ビザを発給していること。
このことに関しては、怪しいインフルエンサーがビザ代50万円!夢のタイ生活!と喧伝しているが、15万円前後の授業費(年間)を払えばビザを出してくれるし、授業に8割出てさえいればOKということを知らない人が多い。
英語で調べたらそういうファラン(タイ語で欧米人のことを指す)のブログ記事がたくさん出てくるのにも関わらず、日本語の記事がそこまで多くないためだろう。語学学校にいる日本人はとても珍しい。
「タイ移住」というキーワードの狭さ
私は「タイ移住」というタグ付けもしているので、それで検索すると私の記事ばかり出てくる。意外とバンコクで発信している人もいない。それはたぶん、「タイ移住」という属性の広そうで、広くないことに起因すると思う。バンコクにいる日本人は大部分は企業の駐在員、そしてその1/10が現地採用の日本人、その間ぐらいがタイ人と結婚した日本人だろう。そして、ウンと百万とタイ政府とエージェントにお金を払い悠々と生活している富裕層or年金生活者。
私は一度私と同じ世代(ジャンプと言えばワンピース、ジャニー○でいえば嵐、一番好きなゲームと聞かれたらポケモンとNewスーパーマリオブラザーズ)の人がスワンナプームでタイ政府のスタッフに迎えられてひっそりと裏口からでていく人を見た。金持ちなら日本でウハウハしたらいいのにと思いつつ、金持ちの若者にとっては(金持ちでなくとも)暮らしづらい日本からは逃げたかったのだなとある種のほんの少しの羨ましさと多くの妬ましさと、そして1ミリほどの同情を抱えて彼の後姿を見送ったことがある。というかいかにも金持ってますアピールをしたがるBalenciaga兄さんという感じだったので「おおおおおぅ」と思ったのだった。
話がBalenciaga兄さんのせいでそれてしまったが(脱線させる力まである)、「タイ移住」とのマッチ度をそれぞれ考える。
当てはまらん:駐在員
駐在員は基本的には「移住者」ではなく、一時滞在者。数年いたら帰ってしまう「お客様」だ。多くはタイ語は話せず、日本語英語で生活し、タワーのような家に住んでいて家政婦や運転手がついている。移住と思っている人はいないだろう。多くは「駐妻」(駐夫)という人たちのテリトリーで、ウハウハしながらもマウンティングを恐れながら(喜んでしながら)住んでいる人たちだ。
当てはまりそう?:タイ人と結婚した日本人
当てはまりそうで当てはまらない気がする。タイに住みたくてタイ人と結婚した方もいらっしゃるだろうし、その人と結婚してタイに住むことになったから結果的に移住した人だろう。「タイ移住だ!ひゃっほい!」という感じでないと「タイ移住」というキーワードに辿り着かないと思う。ちなみにわたしの「タイ移住日記」はある種、誇張である。「ひゃっほい」タイプではない。
当てはまりそうだけど彼らは絶対そういわない:現地採用
彼らはタイに移住したかったのだろう。だからこそ、現地採用という道を選んだのだと思う。一般的に大企業では(私も大企業に勤めていたので大企業の頭の中はよくわかる)、タイ、そしてバンコクは市場としても大きいし、いろんなアジアにかかわるビジネスの中心になることが多い。企業は戦略的にタイでビジネスをしたがるので、いわゆる優秀な人々を駐在させようとする。海外部門の中ではバンコク駐在が一番人員が多いというのはよくある話だ。でもバンコクは日本のものが何でもそろうほど暮らしやすく、若い人は派遣されたいと思う人も多いだろう。(キャリアロールで絶対に駐在がある会社の中では海外に行きたくなくてもしょうがなくバンコクならという人も多いだろう)バンコクでの駐在は行きたくてもいけない人が多い。ましてや会社の規模が大きくなる程、そこで駐在したくてもできない人が多くなるだろう。
なら会社辞めて現地採用されよう!と考えてタイに来る人は多いと思う。タイを日本とは異なる理想郷と考えている人も多い。よくTwitterアカウントの中では、「タイはこんな国だから日本とは違って最高だよ」という発言をして「いいね!」稼ぎをしようとしている輩を見る。彼らは私とは違って、いいタイの側面しか見ようとしていなかったか、タイに長らく住んでいた(住んでいる)なんて嘘なのだ。
現地採用されたい人達の一部にはそういうアカウントに誘導された人は多いだろう。
現地採用されると「海外で直接雇用された」という「スゴイやつ」感が出てくる。ユーチューバーでも「現地採用」というので売り出しているタイ系ユーチューバーは多い。タイ移住というワードはわざわざ出してこない。彼らは駐在組というお客さんとは違って、現地に染まろうと必死でもがく「現地採用」という絆で結ばれている。
ネット上の日本人の「タイ」というバーチャル空間
ここまで長々とあーだこーだ言ってきたが、これはあくまでもネット上にあるバーチャル空間上で表される日本人にとってのタイであり、チェンマイであり、バンコクである。
本を出していない私もそのネット上にあるバーチャル空間上でリアルの生活とは一線を画してものを書いているだけなので、その日本人の一人であることには間違いない。
この日記を書き続けてもうすぐ1年が経とうとしているが、かぼちゃ太郎という、ださいネット上の人格からから始まるリアルな交流はいまだゼロだ。
理想郷としてのタイ・チェンマイ
なぜそこに交流が生まれないかというと、チェンマイに来たい日本人は「生活者」との関わりなんて求めていないのだ。特殊な空間に身を置きたい旅行者、自分と真正面から向き合うための場所としてのチェンマイ、日本とは異なる理想郷としてのチェンマイなのだ。
私はたぶん周りの人からは理想郷としてのチェンマイに逃れたと思われているに違いない。
でも正直お金は尽きたし、正規の仕事にはタイではビザの関係でありつくことは難しいし、オンラインで日本の仕事をしようとしても日本企業も「海外にいるというリスク」のようなことを宣う(のたまう)のであっても業務委託。それでも業務委託してくれる会社はまだ柔軟な方だ。
海外にいる日本人は少なからず英語はある程度できて(できなくてもなんらかのコミュニケーション能力が高い)、行動力があって、違う視点を持っていて有能な人は多いと思う。でも日本企業はそういった人を雇うのに消極的だ。採用されそうな流れで、最後に家族の関係でタイに住んでて・・というだけで切られる。私は働きたくないわけではないのに。
なので理想郷ではないことを証明しようと、読んでも誰も明るい気持ちにならない(インフルエンサーの情報のように得した気持ちにならない)文章をずっと書き続けている。
生活者とはそういうものだ。