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【エッセイ】物を作る人間になるなら

「物を作る人間になるなら、
 人と違った物の見方をしようとするのは
 当然のことだと思うけど」

昔知った言葉が頭の片隅に強く残っていたのを実感する時がある。
毎日noteを書くようになって、先のセリフをよく思い起こすようになった。

冒頭に書いたのは『こっちむいて!みい子』に出てきたセリフである。
美術の時間、二人の生徒が教師に誉められた。一人は『校舎』を正確に描いた。一人は『植え込みの光と影』を描いた。
光と影について、「こういう影もよく観察すると、いろんな色が混じっているのよ!」と教師が絶賛する。それを聞いて校舎を描いた生徒は「フン、そんなの。人と違ったものを描いただけじゃないか」と吐き捨てる。そこに冒頭のセリフが返されるのだ。

もちろん話の最後に、主人公の働きかけで二人はお互いに認め合い和解する。
初めて読んだのは小学生当時。素直に面白いなぁ、と思うと同時に、おえかきや漫画を描くのが好きな身として、冒頭の言葉は気になっていたのである。

人と違った見方も、ただ違っていればいいものでもないだろう。
植え込みの光と影も、ただ植え込みを描くだけではそれこそ「人と違ったものを描いただけ」という指摘のとおりだったはずだ。(事実、主人公は違うものを描こう!とだけ考えて『水のみ場の蛇口』を描いていた。)タイトルに「光と影」と入れたからこそ、それが主題と伝わるようになる。人と違った物の見方をした上で、なぜその見方をしたのか、そこが定まっていなければ意味がない。

と、小学生の頃に読んだものについて、やっと自分なりに噛み砕いて言語化できた気がする。遅い、遅いが成長していることを喜んでおこう。バンザーイ!!

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