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地下アイドルオタクは、いつになったら前方チケットを買えばいいのか?

気持ちはいつでも最前。

地下アイドルオタクのかべのおくです。


12月に入り、クリスマスから年末に向けて大規模な対バンが開催されつつあります。また、夏フェスが終わってから各地でツアーを行っていたグループも、年末には凱旋公演として東京の大きめのライブハウスでツアーファイナルを予定していることでしょう。

そんなときに「行こうかな?」の次に悩む段階は「どのチケット買おうかな?」ではないかでしょうか?大きな会場でのライブでは、前方チケットと一般チケットのように、複数種類のチケットが用意されるからです。前方チケットを買うと、ライブハウスの前方エリアに入れるだけでなく、限定の特典が付いていることもあります。


「そんなの前方に決まってるじゃん?」と思われるかもしれないが、実はそんなことないと思います。なぜなら、地下アイドルオタクは他のオタクと比べて現場数が異常なほど多くなるからです(月に10~20程度)。このため、経済的に全てのライブで前方チケットを買うのは勿体ないと考えてしまいがちです。

そこで今回は、普段オタクはどんなことを考えながらチケットを買っているか、地下アイドルオタクの頭の中を大解剖してしまうnoteとなっています。

※ちなみに前方チケットと言っても前方「エリア」チケットと前方「優先」チケットは異なります。前方優先チケットは単に入場する順番が早いだけのこともあるので購入時に注意しましょう。今回は前方エリアチケットを前提としています。


※2023年8月20日に「夢と金」を読んだ感想を追加しました。


貴方は、前方に見合うオタクか?

【メリット】推しは、近ければ近いほどいい

前方エリアのメリットは、推しが間近で見られてレスが貰いやすいことでしょう。ことさら最前まで行ければ、遮るものは何もありません。最前の風景には一種の魔力があります

ちなみに前方チケットは大体5,000〜8,000円、一般チケットは無料〜3,000円なので、差額は2,000円〜5,000円になります。しかし、推しを近くで見られるのはそれだけ尊いことですし、これだけでも差額を払って余りあるでしょう。


また前方券はこういった情緒的価値以外にも、規制にかからず楽に入れるという機能的価値もあります。@JAM EXPO 2022のブルーベリーステージやキウイステージで、人気グループの前に入場規制がかかってしまったのは記憶に新しいのではないでしょうか?

このように、前方チケットによって得られるのは単なる「ステージまでの距離が近い席」ではありません。前方エリアには、入ってみないと分からないことが沢山あります。したがって、推しがいるなら1回でも前方で入ってみる価値はあると言えるでしょう。


【デメリット】前方に問われるメンタル

と、ここまで前方券を激推ししてきましたが、前方券で入るといらぬ苦労を強いられることがあります。精神的・体力的に疲れるのです。

先述したように前方エリアには、推しをできるだけ近くで見たいという血の気の多いオタクが沢山やってきます。なので色んなトラブルに巻き込まれたり、シンプルに空気がピリ付いていることもあるでしょう。

そういった空間で自分を保ってライブを楽しむには、「推しを応援する」という強い気持ちが必要になります。なので安易に入ってしまうと気後れしてしまうこともあるでしょう。


また、気付いたら前方券でないとライブが見られなくなってしまうこともあります。「自分ともあろうオタクが、後方でライブを見るなんて考えられない」という感情に取りつかれてしまうのです。

それが純粋にライブを楽しみたい気持ちと結びついているうちは問題ありませんが、プライドだけが独り歩きするようになってしまってはこれほど厄介なことはありません。

こうならないためにも、後方席でライブを楽しむことも知っておくのが心身の健康のためには良いと言えるでしょう。


後方彼氏面オタクの本音

【デメリット】後方エリアに入るときに覚悟しておくべきこと

後方エリアに好んで入るオタクは多くはないと思います。それは色んなデメリットがありますが、まとめてしまえば推しが物理・心理的に遠くなることでしょう。

後方エリアからの視界は、会場の作り(傾斜や段差があるか)、前に立つオタクによって大きく変わってきます。単純に考えることが多くなるのに、そこまでしてもよく見えないことだってあります。当然推しから見つけられにくくなるため、サイリウムは必携でしょう。


また先述のように熱量の高いオタクは前方エリアに行きがちなので、後方エリアだとそれほどグループのことを認知していないオタクが多くなります。そのため、どうしても会場の温度感は違ってくるでしょう。

逆に後方エリアには、ただ騒ぎたいだけのオタクが集結して治安が悪くなる現場もあります。それが楽しめるのならいいですが、実は静かにライブを見たい人だっているはずです。どちらにせよ結果としてライブの楽しさが差し引かれることは多くなります。


【メリット】後方エリアに魅力を感じるオタクたち

じゃあ後方エリアで見ることのメリットは何なんだというと、それは気軽に見られて、出入りがしやすいことです。後方エリアでは前方のようなギスギスした雰囲気などはあまり感じません。そしてこれは、ライブに対して「推しを見る」以外の価値を感じているオタク達にはメリットを感じられるでしょう。


例えばスペースが広いので振りコピ・オタ芸をしたいオタクにはうってつけでしょう。

また、複数グループの兼オタはライブと特典会を行き来することになり、もはやライブを見に来ているのか、チェキを撮りに来ているのか分からなくなります。このような人にとって後方エリアのチケットは「比較的安いチケ代でライブも見れて、チェキも沢山撮れてお得!」という思考になると思います。

また、実は後方エリアは前方エリアよりも音質が良いことがあります。ライブハウスの音響はフロアの中央付近がスイートスポットになるよう設計されているからです。したがって楽曲派オタクは無理に前方に行かずに後方最前付近を陣取る方が良いのではないでしょうか。


また、後方で見るとライブ全体を俯瞰できることもメリットでしょう。前方だと、自分の視界に入る一部分しか見れません。しかし後方ならフォーメーションや、オタクが曲のどこで盛り上がってるのかなど、多くの情報が得られます。

これは僕がそうなのですが、「ライブ中に起こってることの全容を把握しておきたい」という分析したがりなタイプのオタクには重要です。なので、初めての会場だったり様子見程度のグループなら、無理せず後方、という選択肢は十分に候補に入ってくるわけです。


結論

まとめると前方チケットを買った方が良いオタク、一般チケットを買った方が良いオタクはこのようになります。

  • 前方チケット:推しを見ることに価値を感じるオタク

  • 一般チケット:様子見・推しを見ること以外に価値を感じるオタク


そのうえで、今回の僕の結論は「1回は前方エリアに入ってみて、自分の身の丈を考えよう」になります。

そもそも、前方を買えるオタクの条件なんてものは存在しません。1回くらいは前方、もしくは最前くらいでライブを楽しめばいいでしょう。とくにライブ回数が少ない遠征組なら、時間とお金をかけた甲斐があったと感じられる体験が得られる確率が上がります。

そして、前で診るのが楽しいと思ったなら、それからも前で見続けるのが、自分のためにも、ライブを主催するイベンターのためにもなるでしょう。ただ、地下アイドルオタクはライブの回数が圧倒的にかさみます。どこかで、前方チケットに投じたお金に見合わないなと感じる体験をすることもあるかもしれません。

もし、「あれ、前方チケットって買う意味あるんだろうか?」と思ってしまったら…またこのnoteにもどってきて一緒に考えましょう。


追記(2023.08.20)「夢と金」を読んで、前方チケットの意味を考えた

最近、西野亮廣さんが新しく出した本「夢と金」を読みました。とても参考になる内容だったので、簡単な本の紹介と、感想として考えたことを記します。

内容

「『お金』が尽きると『夢』は尽きる。これが真実だ。」の衝撃的な書き出しから始まる本書。ファンビジネス、クラウドファンディングの先駆者である西野さんの経験に基づいた、夢を応援してお金を出してもらう考え方、そしてNFTの活用法の解説本です。

難しい話は抜きにして、普通の人では考えつかない「お金の作り方」や生成系AIの使い方は知っておく価値のあるものでした。無知は、ときに人を殺すことを覚えておきましょう。


感想

この本で印象的なフレーズに「『熱狂的なファン』と『富裕層』を見誤ってはいけない。」というものがありました。ここでの熱狂的なファンと富裕層の定義は以下のようなものです。

  • 熱狂的なファン:作品を買っている人、アーティストの姿を間近で見たい人

  • 富裕層:アーティストを応援したい人、作品を社交場として利用する人

本書では、野球のスタジアムチケットの話を例に説明していました。富裕層が買うような最も高いチケットはバックネット裏のチケットではなく、選手から最も遠い個室観覧席です。これには、作品を楽しみながら友人との会話を楽しみたい、なおかつレベルの高いサービスを楽しむためにお金を出しているという富裕層への配慮がなされています。


そして、これはアイドルオタクがライブを見る場所についても言えることのように思います。最近話題になったこちらの画像でも言えることです。

オタクは「最前管理=推しメンを近くで応援している=そのグループのファン」という見られ方をしがちだし、オタク自身もそう勘違いしがちでしょう。しかし、地下アイドル現場に通っている皆さんなら、実態はそうじゃないことに気づいていると思います。強引に先程の構図に入れこむなら以下の通りです。

  • 最前管理:推しメンの姿を一番近くで見たい

  • グループのファン:推しメンを応援したい、ファン同士で交流したい

もちろん最前管理がグループのファン、TOということも多いかもしれません。しかし「応援する気持ちがあるなら、前方で見なくてはいけない」みたいな義務感は必要ないと思います。前方チケット代は運営側がぼったくっている部分もあるでしょうし、そんなのは最前管理に買い占めさせておけばいいんです。

大切なのは「推しメンを近くで見たい」と「推しメンを応援したい」を切り分けることだと思います。その気持ちが一致するなら前方チケットを買えばいいですし、疑問が残るなら無理に買う必要はないでしょう。ただし、前方チケットを買うオタクがいるおかげでライブ・フェスが成り立っている、後方チケットの価格が安く抑えられているのも事実です。だから後方にいるとき、最前管理にはある種の敬意を払う必要があるでしょう。

おわりに

まとめます。

お金があるなら、全部のライブに前方で入りたい。

以上です。


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