![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/33113348/rectangle_large_type_2_53ed046375f76ebfa48392a0b7004d5b.jpg?width=1200)
メグオーム呼びを強制してはいけない
はじめに
MΩ ← これ、なんて読みますか?
SI接頭辞のMegaと、電気抵抗のOhmが組み合わせられたもので、字面通りであれば「メガオーム」と読むと思いますし、私はそれが正しいと考えています。
ところが、これを「メグオーム」と読む人が居ます。
少なくとも、航空機整備の業界では「メグオーム」と呼ぶことが常識化しています。
なぜ同一の単位で異なる呼び方があるのか。
本稿ではその理由を探ります。
文献を探る JIS編
日本産業規格(JIS)ではどのように定められているのでしょうか?
JISは他の国際規格との整合性を図るよう制定されているため、参考資料としては確実です。
まず、JIS Z 8203:2000 (国際単位系(SI)及びその使い方) において、10の6乗を表すSI接頭辞をメガと定めています。
同規格の中で、抵抗(直流)及びインピーダンスの単位としてのΩと、SI接頭辞との組み合わせとしてMΩという記号が表現されていますが、これについては読み方まで定義されていません。
MΩの読み方がJISで定義されているかと言うと、してるとも言えますし、してないとも言えます。
JIS C 1302:2014 (絶縁抵抗測計) では、単位または量として「メガオーム」として明記されています。
しかし、同規格の最新版 JIS C 1302:2018 を探しても「メガオーム」という文字は出現していません。
なお、このどちらにも「メグオーム」は出てきません。
あわせて、JISのウェブサイトでは単語による検索が可能ですが、
・「メグオーム」 0件
・「メガオーム」 10件
という結果になるため、少なくともJISからメグオームであると発信している形跡は無いようです。
文献を探る NIST編
次にメグオームに関する資料を探したところ、ウィキペディアのオームのページで、これをNISTが容認しているという記載がありました。
実際にNIST Guide to the SI, Chapter 9: Rules and Style Conventions for Spelling Unit Names - 9.3 Spelling unit names with prefixesにて、メグオームに関する記述があり、これによると、次の3つの単位表現において、省略形を使う場合があると記載されています。
・kΩ (Kilo Ohm → Kilohm)
・MΩ (Mega Ohm → Megohm)
・ha (Hecto Are → Hectare)
NISTの表現としては、MΩをメグオームと呼びなさいというものではなく、呼ばれることがあるという、慣習について説明したものと捉えることができます。
メグオームの起源
は正直なところ分かりません。
ご存知の方おられましたらコメントお願いします。
しかし恐らく、英語圏文化のリエゾン、リンキングに依るものだと推測しています。
これは連続する単語を発音するとき、スペルの一部を省略、または異なる音に置き換わるもので、身近なものでは Thank you. → サンキュー (kとyが繋がる)が例として挙げられます。
NISTの例では、どれもSI接頭辞の最後、及び単位の最初が母音で、SI接頭辞の母音が削除される傾向が見られます。
これが是であれば、他のあらゆるSI接頭辞及び単位の組み合わせでも成立すると考えることが出来ます。
結局どちらが正しいか
端的に言えば、メガオームでもメグオームでも、MΩであることが伝われば何ら問題ありません。
メガオームが標準語だとすれば、メグオームは方言みたいなものではないでしょうか。
どちらも誤りではないという認識を持ち、知らないことを卑下するような態度を取ってはいけません。
しかし、国内の規格においてはメガオームの記述があるため、今後はメグオームからの離反を推し進めるべきだと考えます。
著作権表示
ヘッダー画像:Umberto NURS / CC BY-SA