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取材はシナリオライターでもするべきこと?
はじめに
お話作りに行き詰ったときやアイディアが欲しいとき、
みなさんはどうやって解決をしますか?
私の場合は『取材』を行うことによって解決を図ることが多いです。
というよりもシナリオを書く前にはかなり下調べを尽くします。
あるシナリオを制作するのに10時間かかるとしたら、
おそらく7時間は下調べに費やしているのではないでしょうか。
『取材→下調べ』とするのは違和感を覚える方もいるかもしれませんが、
仮に下調べも取材の一部と捉えた場合、
もしも私が一切の下調べを放棄してシナリオを執筆する時間に費やせば、
約2倍の量の仕事ができることになります。
シナリオは普通、一本いくらで買い取ってもらえるので、
取材を放棄すれば単純に収入が倍になります。
やったね!
ですがそうしようにも取材や下調べを欠かすことは出来ないのです。
それなくしてシナリオの執筆はほぼ不可能と宣言しても過言ではありません。
そこで今回は取材や下調べはなぜ必要なのか、またそのやり方を解説いたします。
どうせ避けては通れない工程なので、しっかりと覚えて参考になさってください。
◆取材とは?
そもそも『取材』とはいったいどのようなものなのでしょうか。
以下は私の手持ちの国語辞典から引用したものです。
「報道記事・芸術作品などの材料・題材を取り集めること」
冒頭にて『取材→下調べ』としたのは作品のために材料や題材を取り集める行為そのものを取材と呼んでいるからです。
決してインタビューや突撃取材など、特定の人物にお話を伺うことだけではないということですね。
◆取材の種類
一義的に定義することはできませんが、以下に取材の種類を並べてみました。
・インターネットで検索する
・本を読む
・新聞を読む
・雑誌を読む
・マンガを読む
・音楽を聴く
・映画を観る
・アニメを見る
・劇場に足を運ぶ
・舞台を鑑賞する
・実際にその行為を体験する
・現地まで足を運ぶ
・人の話を聞く
・博物館に行く
・
・
・
はい。キリがありませんね。
ですがどれもが取材といえます。
要するに先ほど挙げた取材の定義を満たせば、どれも取材になりえるからです。
アニメの脚本を書く際に、そのキャラが以前に出演した作品を見るのは取材。
映画の脚本を書きたくて、参考のために名作映画を鑑賞しても取材。
なにもかもが取材です。
傍から見ると遊んでいるように見えますよね。
ですが違います。
私たちシナリオライターは業務のために必死こいて取材しているのです。
そのために本を読み、マンガを読み、映画を観て、現地まで足を運びます。
むしろそういった行為を経費で落としたいがために職業ライターになった人もいるのかも。
ではこれらの娯楽や旅行が、なぜシナリオを執筆するのに欠かせないプロセスとなるのでしょうか?
取材を行う必要性を説いていきます。
◆取材の必要性
まず職業としてシナリオを書くようになると、基本的に好きな話を書くことはできません。
大抵はクライアントに特定の題材を与えられることとなります。
たとえば『80年代のヤンキーを題材にしたドラマ』を書くことになったとしたら、どうすれば良いでしょう。
もしあなたがその時代に生まれていなかった、物心がついていなかった、ヤンキーに興味がなかったとしたら。
そのときに取材が必要になります。
当時の記録映像を確認し、ヤンキーが起こした事件を調べ、統計データを読み、類似作品を鑑賞する。
実際にヤンキーだった人の話を聞ければ最高かもしれません。
実際の生活ぶりや、まだ誰も知らないおもしろエピソードが聞けるかもしれないからです。
取材に充分な時間を割き、情報を仕入れなければ、未知の分野の題材で話を書くことなどできません。
ゆえにシナリオライターにとって取材は必要不可欠なのです。
もっと身近な例に置き換えてみます。
たとえば『ドラえもん』の脚本を書いてと言われても、一度もアニメ観たことがなければセリフの一行だってひねり出すことは困難です。
プロのシナリオライターとはいえ、世の中にあるすべてのアニメやマンガなどの作品をチェックすることなど不可能です。
ゆえにこれまで触れた事のない作品のキャラクターのセリフを執筆することは日常茶飯事として発生します。
しかもそのシナリオを楽しむのは、そのキャラや題材を熟知しているファンたち。
ほんの少しの解釈違いも見逃してはもらえません。
しかも大抵の案件は取材のために充分な時間を与えてはくれません。
数日以内に調べた付け焼刃の知識で執筆に取り掛かることが大半です。
ですがその付け焼刃を、ほんの少しでも硬く丈夫にするために、必死こいて火入れをしてクオリティーを高めていきます。
それがシナリオライターが必死こいて、齧りつきそうな勢いで作品を鑑賞する理由です。
また、取材が仕事の一部という根拠にもなっています。
というより、取材をしなければ自分の知っている題材以外は何も書くことなどできないのです。
知らないものは逆立ちしたって書けません。
◆よく知ってることでも取材は必要?
先ほどは業務として自分の知らない題材の作品を書く際に取材が必要であると述べました。
ではあなたがよく知っている題材であれば取材の必要はないのでしょうか?
あくまでも私見ですが、ただ頭に浮かんだことを書くだけならば必要はありません。
ですがクオリティーのアップを図るためには改めて取材をすることをお勧めします。
理由は以下の通りです。
・真偽の確認
これが取材をするうえで最も大きな動機かもしれません。
知ったかぶりをして適当に書いてしまうと観客から反感を買います。
そのためライターは必死こいて一つの題材を色んな角度から調べるわけです。
ネットからの情報だけでなく、辞書を引いたり本を読んだり映像を漁ったり。
たとえ題材についてあなたが熟知していたとしても油断はできません。
思い違いや偏った意見が反映されている可能性があるので、
一度調べ直すことをお勧めします。
・記憶の鮮明化と新発見をもたらす
人間の記憶はあてにならないもので、細かなことを忘れてしまいます。
もしあなたが書こうとしている題材のことをよく知っているとしても、
改めて取材をすることで何か新しい発見をしたり、忘れていた微細な
事項を思い起こすことにつながるかもしれません。
シナリオを書く際に記憶だけを頼らずに取材をすることをお勧めします。
・説得力やリアリティーが増す
人は新しい知識を得ると好奇心を覚え、関心を寄せるようになります。
そんな人間の習性を用いて話に釘付けにさせるのも一つのテクニックです。
職業人を描くときなど特にこの手法は重宝します。
普段目にしている職業の人たちの一日のルーティンはどうなっているのか、
独特な習慣を持ち、聞いた事のない用語を使って仕事をこなしていく。
そんな一場面を描けると、観客の関心をギュッと引きつけることができます。
こういった場面を描くのには取材は欠かせません。
適当に描くと白けるからです。
さらには嘘を書いたりすると、炎上します。
「シナリオは感性では書けない」と言われるのもこの点が引っかかるからです。
フィクションであろうとある程度の事実やドキュメント性が含まれているので、どうしても取材や経験が必要になるのです。
・盲点に気づける
取材をしていると急にアイディアが降ってわくときがあります。
取材をしていて一番楽しい瞬間です。
なぜそのようなことが起こるのか。
私が思うに、今まで凝り固まっていた取材対象へのイメージが、
取材をすることによって覆ることが原因だと思っています。
取材をすることで本や映像、人の意見など様々な媒体によって
情報を仕入れるわけですから、違った一面が見えるのも当然です。
そして知っているようで知らなかった盲点に気づくことで、
一気にアイディアがあふれ出すことになるのです。
そういったあなたが気づかなかった盲点は他人も気づいていない
可能性があるので、積極的に取り入れた方がよいと思います。
特に史実をもとにしたフィクションほど、盲点を取り入れると効果的です。
史実の間にフィクションの入り込む余地や盲点を探し、大きく膨らませる。
すると観客も、「そんな発想があったとは!」と膝を打って喜んでくれます。
またその際には、どうせですし大きな嘘をつくようにしましょう。
事実かどうかわからないようなちょっとした嘘はつまらないですからね。
◆取材で注意すべきこと
次に取材を行う上での注意点に触れておきます。
ちなみに誰かにインタビューを取り付けたとして、
取材時間に遅れるなとか身なりや言葉遣いはきちんとしろだのは、
一般常識として嗜むべきことなのであえて述べることはいたしません。
シナリオライターとして役立ちそうなことに集約することにいたします。
・本よりも人から
情報にも質というものがあります。
学校でも調べ物をする際にはインターネットの情報を鵜?みにせず、
図書館で本を借りて調べろと習った人もいるのではないでしょうか。
たしかに本や新聞、または論文などは有益な情報源であることは疑いようがありません。
ですが書籍に記載されている情報に至らぬ点も存在します。
それは生の声よりも建て前に近い情報が氾濫しているということです。
「あなたの言葉が本になる」などと言われたら取材対象は身構えるため、
慎重に言葉を選んだうえで本として掲載されることもあるからです。
(それでもネットの不確かで偏った意見よりはマシですが)
もしあなたがとある題材に対して真剣に取材をしたいのであれば、
書籍からだけではなく実際にその題材に携わっている人の、
生の意見を聞いてみることをお勧めします。
『農業』のことを書きたかったら農家の人に話を聞いてみるとかですね。
きっといろんな発見があるかと思います。
ただし取材対象が一人だと偏った意見を取り入れる可能性がありますし、
知りたいことを知れない可能性があるので、出来れば複数の対象者から取材をすることをお勧めします。
・取材結果をすべてさらけ出さない
ライターの業務の大半は取材であり、取材で得た情報は膨大なのですが、
その全てを作品内で披露する必要はまったくありません。
むしろ逐一発表していたらそれはシナリオではなくただのレポートです。
取材した情報はシナリオとして効果的に働くときに使うようにしましょう。
『100』調べたら、『6か8』を使うぐらいが丁度いいです。
「せっかく調べたのにもったいない!」と思うかもしれませんが、
取材して得た知識は今後の執筆活動に必ず活きるので安心してください。
・まずは自分の興味のあることを徹底的に調べること
有名なライターや小説家のデビュー作は、
その人の職業やライフスタイルを描いたものが多いと聞きます。
なぜならそれは徹底的に取材しつくされており、
他の作品と比べてディティールが突き詰められているからです。
あなたのよく知らない分野について取材をしたとしても、
長い期間を費やさない限りは付け焼刃の知識なので、
結局語れることは少ないです。
またどうせならあなたも時間を費やして取材をして執筆をするのなら、
よく知らないことを語るよりも自分に興味のあることや身近なことを
語りたいことでしょう。
であればまずはあなたの興味のある分野について、
徹底的に取材することをお勧めします。
そうすることで他の方では容易に収集できないほどの情報を用いて、
ディティールの濃い作品を生み出すことができるからです。
◆私がよく取材に利用するもの
最後に私が取材をする際によく利用するサービスや施設をご紹介します。
取材の仕方は人それぞれなので、参考程度に留めておいてください。
・図書館
調べ物の王道と言えば図書館。
ネットが普及した現代であってもその存在を欠かすことはできません。
最も有益な点は、無料で本を貸してもらえること。
そして図書館によっては読みたい本を購入、もしくは取り寄せしてもらえること。
図書館が廃れないようにするためにも、積極的に利用していきましょう。
・YouTube
近年の調べ物の王様はコレ。言わずと知れた無料動画配信サービスです。
眉唾物の情報や偏った知識のオンパレードですが、
巧みに有益な情報を上手くまとめている投稿者もいます。
真偽を見極めながら上手く利用していきましょう。
ちなみに私の場合は、「このキャラのイメージでセリフを書いて」などと
クライアントからよく注文されますので、その場合はそのベースとなる
キャラの切り抜き動画を小一時間ほど鑑賞して傾向をつかむなどの使い方をしています。
・wikipediaやニコニコ百科事典
場合によっては使ってはいけない案件もあるのですが、
手早く調べ物をするときには便利です。
ですが参考にすべきか迷った際には、違う情報源と照らし合わせて確認する必要があります。
・動画配信サービス
アマゾンプライムがコスパ最強ですね。
私はU-Nextに加入しています。理由は見放題が多いから。
アニメキャラをシナリオに登場させる際には、
原作アニメ等を1シリーズ鑑賞することもザラです。
・ブックオフなどの古書店
マンガや小説を買うときに、私は真っ先に大型の古書店を訪ねます。
特にブックオフの場合はECサイトで購入して店舗で受け取ると、
配送料が無料で入手できるので、商品を1点だけ注文するときなどは便利です。
・レンタルコミック店・レンタルビデオ店
有難いことに生活圏内にレンタルコミック店があるので、割安でマンガのシリーズを全巻読破することなども出来ます。
またレンタルビデオ店は、加入している動画配信サービスにて有料だったり配信されていなかったりする作品を鑑賞する際に、お世話になっています。
・その他
他にも、例えば大学等に所属している学生であれば大学図書館や閲覧できるデータベースなども活用することが出来ます。
専門的な書籍や論文を調べるときに有効ですね。
◆終わりに
そもそも取材、もとい調べものとはどういうことがキッカケで発生するのでしょうか。
一説には下記のようなプロセスを経ると言われています。
『問題意識』……「○○を知りたい」「××について考えたい」「△△が気になる」
↓
『観点』……「~ではなかろうか」「~だと思う」「~の可能性はないか」
↓
『検討材料の収集』
↓
『考察』
この『検討材料の収集』が取材に当たるわけです。
すなわち「○○を知りたい」という好奇心をなくしたり、
「~の可能性はないか」という注意深さを失っていると、
取材をしようという気持ちが働かなくなります。
あなたの作品のクオリティーを下げないためにも、
好奇心と注意深さを保てるように気持ちに余裕をもって過ごすこと。
それが取材をするためには何よりも欠かせない要素なのかもしれません。
最後までご覧いただきありがとうございました。
本記事と合わせてご覧いただきたいのは、
シナリオを書く取材のために大阪難波のゲイバーに赴いたときのお話です。ついでに級友との交流を深め合う目的があったのですが……。何が起きてどうなったのか、赤裸々に語らせていただきました。