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心理描写『セリフは嘘つき』

◆セリフは嘘つき

劇中にこんなセリフがでてきたとしましょう。

「君のことを本当に愛しているんだ!!」

果たしてあなたは、その言葉を素直に受け取ることができるでしょうか。
現実でのできごとでなくても「噓くさい……」と思ってしまうのではないでしょうか。
セリフで直接的に感情を盛り込むのは、あまり上手い手段とはいえません。
きっと読者を白けさせてしまうことでしょう。
ではこの場合は、どうするのが最適解といえるでしょうか。
「好き」と直接言わせずに、「好き」という感情が伝わる方法……。
むしろ登場人物には逆のことを言わせてみてはどうでしょう。

「あんたなんか……大っ嫌いよ!」

さて、登場人物がこのようにセリフを発した直後。
それでも、その登場人物がある人物に好意を抱いていると読者に伝えるには、あなたはどのように表現しますか。

私であれば、セリフを発した直後に顔を真っ赤にしながら下唇を噛みしめつつ顔をそむけるなどの動作を入れたりするかもしれません。
または恋仲のお相手に抱きしめられて、「大っ嫌い」と言いつつ突き放そうとするものの、最終的には背中に腕を回してしっかりと抱きしめたりとか。
「大っ嫌い」と言った直後に走り去ったものの、お相手が追いかけきて、途中でつまづき道路に倒れ込んだところ、思わず立ち止まって引き返し、お相手に手を差し伸ばすといった展開を考えるかも。

どれも陳腐なやり口ですが、ともかくセリフで感情を伝えないよう努力をしています。
また大抵のシナリオライターもセリフを書く際に、逐一そういった安直な手法を回避するように勤めています。
というのも、セリフで直接的に感情を伝えるのは、もはやセリフではなく説明になってしまうからです。
「私はあなたを愛しているんだと説明したい!」などというセリフにいったいどんな魅力があるでしょうか。
説明というのは物語の流れをとめて、場を白けさせます。
そして自分の心の内をベラベラしゃべるキャラクターはどうしても魅力的には見えません。
むしろ現実を生きる私たちは、本音を隠しつつ、思ってもいないことを口にして生きています。
それが人間というものです。
あなたが脳みそに汗をかいて創造したキャラクターを人間たらしめる為に、積極的に本音をかくして嘘をつかせましょう。
でもどこかで本音や心の中で思っていることがポロリとでてしまう。
それが登場人物を魅力的にみせるコツです。
ゆえに「セリフは嘘つきである」などという言葉が、シナリオライターの間では半ば常識になっているのかもしれません。
ちなみに、「嘘のあとで本音を描く」ということも重要です。頭の片隅に覚えておいて下し。
(例外として、物語の核心的な場面などで感情をさらけ出すときなどには登場人物が心に思ったことを正直に述べることもあります。感情セリフは使いどころが肝心ですね)
(また、昨今の傾向として思ったことを素直に長々と喋る登場人物や作品が好まれる傾向もあります。読み手が登場人物の感情についてあーだこーだ考えたりして疲れないようにする配慮なのかもしれません)

◆最後までご覧いただきありがとうございました!

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本記事で解説している『セリフ』に関して述べています。主に原稿用紙にどのようにして書くか、ですね。ぜひ合わせてご覧ください。


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