見出し画像

作品を書き上げる理想のペースは?

◆はじめに

本作中の私は脚本家学校を修了するために、決まった期間ごとに作品の提出を行っていました。
どこかの作家が言っていたように、「作品は締め切りがあるから出来上がる」とは言い得て妙です。
私の通っていた学校も基礎課程の頃には明確な締め切りを設けていました。
また同校でよく言われていたことのひとつに「とにかく作品を出してください。失敗をどんどんして、習作を積み重ねていってください。どうせプロになったら失敗はできないのだから」という格言めいた言葉をしばしば聞きました。
一方で、「一度書いた文章を消し、再び同じところに句読点を打ったら作品の完成」「自分の納得できないものを世に出して一体何になる」「作品が出来たときが締め切り」と言い切る作家さんも目にしたことがあります。
『締め切りを設けて、完璧ではなくとも決まったペースで作品を仕上げる』
『締め切りなど設けず、完璧に仕上がった自信作のみを世に公表する』
さて、いったいどちらが正しいのでしょうか。

あくまでも私の見解ではありますが。
どちらが正解というわけではなく、上手くいくのであればどちらのスタイルを適用していけばよいと思っています。
実際に『締め切りなど設けずに完璧なものを仕上げてから世に広める』タイプの方も見受けられます。
そのうえ、著名な作家さんが多いように思われますね。名前を挙げるのは控えますが。
そういった方々に憧れて、一流アーティストや大御所らしく、業界を肩で風を切るように振る舞いたい気持ちは大いに分かります。
ですが一方で、「理想の作品を書くまで待っていたら、いつの間にか何も書けなくなっていた」という方をよく見かけます。
特に脚本家学校にはそういった方が多いように感じましたね。
なのであえて自ら喝を入れるかのごとく、大枚をはたいてまで脚本家学校への入校を決心したのではないかと思っています。
つまりは締め切りをあえて設けるために、学校に通っていると言い換えてもよいかと。
『習慣が人を作る』と言います。
シナリオライター等に必要な筆力が不足している場合、それを高めるには、書くことを習慣化することが最も妥当な方法です。
素晴らしいアイディアを思いつき、超新星の天才作家やライターとしてデビューしたくて素人ながら執筆を始めるも、どうしても作品を完成させることができない。むしろいつまで経っても完成しない作品を作ることに飽きて筆を置いてしまった。それでも作家やシナリオライターへの夢を諦めたくない。
そんな悲しき獣が脚本家学校に集結しているのが現状なのかもしれません。(全員がそうだとは、もちろん言いやしませんが)
脚本家学校での『失敗をどんどんして、習作を積み重ねていってください』という言葉は、きっとそんな作品を完成させられない人々の悲しき枷を解き放つための呼びかけなのでしょう。
ゆえに書くことを習慣化できない人は、あえて締切日を設けて完璧でなくても作品を出す。習作ならばなおのこと遠慮せずに出すことをオススメします。
また書くことが既に習慣になっている人は、自らの定めたペースに従ってノビノビと執筆されるのが良いと思っています。
ここからは書くことを習慣化できない人のために、作品を書き上げる理想のペースについて述べていきます。

◆理想の執筆ペースについて

まずは目的別にわけるべきです。
シナリオや小説を書く目的を仮に下記のように大別します。

・仕事として
・習作として
・コンクール等への投稿を目的として

仕事の場合はあえてこの場では述べないようにいたします。
それだけで何千文字と費やしそうですから。
あえて結論を簡潔に述べると、私の場合は締め切り二週間前には書き上がっていて、締め切りの数日前には見直しを完了させて提出するのが理想だと思っています。
実際はそれだけたっぷりと納期を設けている案件は少ないので、書き上げた翌日~3日後に見返して修正し、提出することが常々です。

習作とはつまり、練習のために作った作品のことです。
脚本家学校での課題の提出などがそれにあたります。
習作ゆえに出版などして世に公表されることは原則としてありません。
コンクールでの賞や仕事での報酬などの何らかしらの成果や対価を目的としたものではありません。
あくまでも自己研鑽のために執筆するものです。
ゆえに失敗作でもよいといえます。
とにかく出すことが大事で、他者からの評価や指摘をうけて次回はより良いものを作り上げていくように自らをブラッシュアップしていく。
みっともないものを出したくなくてなかなか作品を書けない人にはあえて締め切りを設ける。
とにかく書き手が書くことを習慣をして身につけさせるために、脚本家学校等はあえて締め切りを設けているのでしょう。
ですが別に、締め切りを設けるのが脚本家学校等の他者でなくても構いません。
未完成でもとにかく世に出すという鉄の意思が書き手自身にあれば、自ら締め切りを設けてもよいのです。
実は本コラムやブログの記事等も、「必ず週に一度投稿する」とあえて私自身が自らに誓って投稿しています。
「クオリティーが十分じゃなくても出す」と決めているので、読みづらい点が多々ありますが、どうかご容赦ください。

では習作を書く場合、どの程度のペースで執筆を行い、公表や提出を行っていけばよいのでしょうか。
一概には言えないことを前置きしつつ、下記に一応の目安を言及しておきます。

・一日に10分程度

習慣化するには毎日書く機会を設けることがよいと思います。いわゆる日課にすることですね。
お風呂や歯磨きや寝る前のヨガのように、それをやらなくては落ち着かないまで日課として落とし込めれば成功です。
また日課とするからには、毎日行っても負担のないように時間帯や作業量を調整するのがよいと思います。
あえて提案するとすれば、寝る10分前や仕事のお昼休みの10分間、仕事を始める10分前などはいかがでしょうか。
仕事終わりにファストフード店やカフェに寄って執筆を行う人もいると聞いたことがあります。
決まった時間帯や場所で行うのがおすすめです。
ちなみに10分程度では短すぎると思われる方もいるかと思います。
それも当然で、一旦書き出すと大抵の方々は10分では時間が短すぎると感じるものです。
執筆に限らないことですが、作業というのはやり始めるまでが一番苦痛を伴うものです。「ああ、面倒くさい……やりたくない」と。
ですが一旦作業を始めてしまえばある程度は没頭できるものです。面倒くさいと思って始めた掃除にいつの間にか没頭している感覚と同じですね。
あえて時間を10分としたのは、「10分ぐらいなら机に向かえそう」と、あえてハードルを低く設けるためです。
『なにがなんでも毎日2時間書く』といった目標を掲げていると、よほど意志の強い人以外は委縮してしまいますよね。それでは長続きしない人が続出するかと思います。
それでも10分間でも机に向かうのが苦痛という人は、そもそも書こうとしている作品を書きたくないと思わせる致命的な何かがあるかもしれないので、イチからアイディアを練り直すのをオススメします。

補足
近年の動向として、小説投稿サイトやSNSに小説や漫画等を毎日掲載されるかたもいらっしゃるそうです。
そうしないと人気ランキングで上位にいくのが難しいのだとか。
とても大変なことですね。
一日10分程度の執筆ではとても間に合いそうにありません。
どのような目的や執筆スタイルで取り組んでいくかは書き手によって異なります。
私の意見である「一日に10分程度」はあくまでも参考程度に留めておいてください。

・ひと月に一度、もしくは隔週に一度のペースで短い作品を提出

脚本家学校に在籍していた頃の私はおよそ2週間に一度のペースで作品を提出していました。
ある過程を修了する条件が、決められた課題を30こ提出しないといけないというものだったので、ひと月に一回では3年以上かかると感じたからです。
そんなに時間をかけていられないので、2週間に一度。つまり隔週で課題を提出していました。
課題ですのであくまでも習作であり、コンクールに出すための作品ではありません。
またどの課題も400文字詰め原稿用紙10枚程度の短いものばかりです。
短い作品であれば上記のペースでコンスタントに執筆するのがちょうどいい具合かもしれないですね。
1週間に一度、かならず毎週課題を仕上げて提出するとなると、ややタイトな印象がします。
課題ですので各々にテーマが設けられていて、そのテーマに沿った作品を作る必要がありましたから。
例えば『結婚式』という課題では、結婚にまつわる映画を観たり、独身なのにゼクシィを購入して読んだりもしました。
そういった経験が今でも仕事に活きています。(〇〇みたいなキャラクターでセリフを制作してと言われて、そのキャラクターが出演する作品を調べ尽くすなど)
毎週一度、必ず作品や課題を提出、または公開するとなると、少々タイトすぎるかもしれませんね。
上記の課題であれば、テーマに沿った作品を作る時間の猶予が足りません。結婚にちなんだ他の作品を鑑賞したり、調べ直したりするのに時間が割けないかも。
自然とこれまで自分の頭の中にある情報だけで物語を構成して、とにかく時間に間に合わせるためだけに作って、前回に提出した課題や作品の講評のフィードバックなどしていられないとなると、出来上がる作品はとても薄っぺらいものとなるでしょう。
あくまで習作なのであれば、書くことのできる時間に少し猶予をもたせて執筆をすること。
それには短い作品であれば2週間に一度程度がベストなのではないかと私は思っています。
(週刊連載の漫画家さんは、商品になる漫画を毎週執筆していますね。頭が下がるばかりです)
重ねて申し上げますと、2週間に一度というのは絶対的な指標ではありません。
私が脚本家学校に通っていた頃の同窓生には毎週作品を提出していた人がいましたし、今現在の私はとある場所へ短い文章量の作品をひと月に一度提出しておりますので。
なんにせよ、習作は決まったペースでそれほど長く期間を空けずに、短めの文章量のものを提出するのが、上達にはオススメです。

・1年に1回、もしくは2回はコンクールに出品を

さて、習作ばかり積み重ねてもシナリオライターや作家になれるわけではありません。
どうしても世に公開する必要があります。
今現在ではプロになるための道が多種多様に開かれています。
アマチュアの小説投稿サイトへの投稿やSNSへの掲載などは、もはやデビューの手段として主流といえるかもしれません。
倍率が数百、数千倍もする厳しいコンクールに応募して狭き門を突破せねばデビューはできないなんてことはなくなりました。
それでもシナリオライター、脚本家志望の方々は、出来るなら有名なコンクールにて栄誉ある賞に輝いて華々しくデビューをしたいと考える方も多数おられることでしょう。
そういった場合、『1年間に一度、もしくは二度』のペースで応募をするのがちょうどいいと私は聞かされていました。
理由は、焦って毎月応募するよりも半年に一度のペースで作り込んで投稿した方が受賞できる確率が高いとのこと。
それが定かかはわかりませんが、言わんとしていることはわかります。毎月投稿するとなると腰を据えての執筆が難しそうです。
中編以上の長さがあれば、書き直しや推敲をすることすらままなりません。
また小耳に挟んだ話ですと、『年2回出す作品は、ひとつはメジャーな賞、もう一つは小さな賞にしておく』とも言われていました。
大きな夢がかなうと至福の瞬間を味わえますが、大きな獲物を狙い過ぎてなんの成果も得られないことが続くと萎えてしまいますからね。
とにかくデビューをすること、自信をつけることが大事だと言えます。

◆おわりに

以上が執筆のペースにまつわる私の見解になります。
重ねて申し上げておきたいのが、あくまでも私の見解であり、読者の皆様は各々のご都合に合わせて柔軟にペースを作っていただきたいということです。
そのうえで、どうしても執筆活動が長続きしない、作品の提出が遅すぎて焦る、早すぎて疲れるなどの問題でお困りのうえ、執筆のペースを調整したいと思われた方は、本コラムの内容を取捨選択して取り上げていただけますと幸いです。

◆最後までご覧いただきありがとうございました!

本記事と合わせてご覧いただきたい記事は下記の通りです。

課題にテーマはつきものです。その際にテーマに関してどう捉えるべきかを解説しています。

本コラムではコンクール等に投稿するのは年に二度ほどを目安にするほうがいいと述べています。そのうえでどのような賞を狙うべきか、そしてその理由に関して詳細に述べています。

いいなと思ったら応援しよう!