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背徳のクラシックガイド 鈴木淳史著 洋泉社新書Y(2009年10月発行)
以前に同じ著者の「クラシック批評こてんぱん」をご紹介しましたが、それと同時に購入したのが本書です。こちらも残念ながら新刊では購入できなさそうです。
キワモノと呼ばれる音楽や演奏から得られる快楽には何物にも代え難い極上の味わいがある。 フルトヴェングラーの「第9」が名盤といわれるのは、その逸脱の度合いが尋常ではないからである、 というあたりまえのことをなぜ認めようとしないのか? ありきたりの規範的価値観や名曲名盤主義では語れないいつ立ちと驚異のさまざまな形を提供し誘う、 読者垂涎の背徳と異端のガイドブック!
カバーの見返し部分には上記のような紹介文が書かれています。構成としては「演奏篇」と「作品篇」に分かれていて、一曲ずつ「変な」ところが紹介されています。さらに収録CDの紹介もあるため、実際に聞いてみたいと思った時には、それが手に入るかどうかはともかくとして、便利な作りになっています。
音楽に対して「変」といってもそんなのは個人の感想だろう、と思われがちですが、よほど多くの楽曲を聴いているのか、演奏篇については「変」な部分に対する指摘が具体的で、わかりやすく書かれています。そして、それを読むと、聴いてみたくなるんですね、これが。
クラシックはそれなりに聴いてはいますが、目を閉じて深く感動するというより、何かのBGM程度でしかなかったので、本書を参考に、どんな感じか試してみたいですね。おそらく著者のようには聞き取れないと思いますけど。
もう一方の作品篇では、タイトルや構成、テーマなどが「誰が見ても変」という楽曲が紹介されています。あのモーツァルトに「俺の尻をなめろ」という作品があるのは知っていましたが、それに類似するような作品が約50作品紹介されています。音楽の教科書でおなじみの顔ぶれです。
通読して「面白かった」というより、手元に置いておいてちょっと時間が余った時に「ちらちら」と読み、「ふふふ」と笑う。そんな読み方が一番合っているような本でした。
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