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動画プロダクションマネージメントのノウハウをまとめてみる

私は、1982年にTV-CM制作会社に入社して、最初は制作進行(プロダクションマネージャー)という職についた
最初にやった仕事はローカルTV-CM(当時はフイルム制作なので、TV-CFといっていた)の制作進行だった
後にはVP(ビデオパッケージ)などの企画演出に変ったのだが、最初に映像制作に携わったのは制作進行だったのだ

このプロダクションマネージャーという仕事は、プロデューサーやディレクターに比べて知名度こそ低いが、映像制作においては大切な仕事である
雑用もすべてこなす底辺職だが、予算管理やスケジュール管理をまかされているという点では、重要だ

肩書が変わったのは1985年なので、今から40年くらい前の仕事だが、特に実写畑では今でも通用することが多いと思う
ボケてしまう前に覚えていることを書き留めておけば、後進の役にも立つだろうと思い、体系的にまとめていこうと思っている

思い出し思い出しつつの執筆になるが、よかったらお付き合いねがいたい


映像制作会社の仕組み

私は、1社しか勤務したことがないので、他の会社の仕組みを知らない
だから、私が勤務していた会社の仕組みを書いていこうと思う

私が勤務していたのは、東京に本社を置き、大阪に支社を置く、業界大手のTV-CMプロダクションだった
私が勤務していたのは大阪支社

ちなみにプロダクションというのは制作会社という意味
芸能マネージメント会社と勘違いしている人もいたが、芸能事務所が◯◯プロダクションと名乗ることがあったのは、制作会社を兼ねていた時代があったからだ

TV-CMの制作会社というのは、基本は広告代理店から仕事をもらう
CMの作品じたいは単独でも制作できるが、オンエアするためには広告代理店を介さないといけない
ごく例外的には直接取り引きもあったが、それ以外は広告代理店の下請けとして機能していた

私のいた会社には、営業マンという人はいなかった
基本、営業に当たるのはプロデューサーだった
営業といっても、行く先はというわけで広告代理店である

プロデューサーは広告代理店から仕事をとってきて、その仕事の総責任者をつとめる

プロダクションマネージャーというのは、プロデューサーの下で働くわけである

その他には、社員としてCMプランナー、ディレクターもいた
プランナーというのは、まだ演出をまかせてもらえない若手だ
ディレクターになっても、基本は企画を考え、自ら演出をすることが多い

私がいた頃は、まだ映画会社の尻尾をつけていたため、カメラマン、カメラ助手も社員または契約社員で在籍していた

東京本社には、その他に照明技師(ライティングディレクター)やキャスティングディレクターといった専門職もいた

とはいえ、基本はプロデューサーとプロダクションマネージャーがチームを作って制作にあたることが基本だった

後には技術職はすべてフリーランスとして独立していって、純然たるプロデュース会社になっていった

プロダクションマネージャーの職務

プロダクションマネージャー(制作進行)というのは、何でも屋なのだが、大きくは4つの仕事がある

1.予算管理

制作する作品ごとに実行予算が組まれる
この予算を組むのがプロダクションマネージャーの一番大きな仕事だった
もちろん、予算を組むだけではなくて、その予算を使って制作そのものを遂行していかなければならない

制作を遂行していくと想定外に出費がかさんだりすることもある
そういう場合は、なんとか他の項目を抑えて全体として利益を圧迫しないようにするのがプロダクションマネージャーの腕の見せどころだった
制作会社としては、利益を確保することが一番重要なので、職務として一番大事なところである

2.スケジュール・スタッフ管理

次に大切なのは制作スケジュールの作成である
納期に間に合わせるためには、いつ頃に撮影をして、いつ頃に仕上げるのか、スケジュールを作るのはプロダクションマネージャーの仕事だ

社内だけならスケジュールの調整もやりやすいのだが、制作には外部の業者やフリーランスのスタッフも参加する
それら多数のスタッフのスケジュールを調整するのもプロダクションマネージャーの仕事だった

3.発注管理

TV-CMの制作にあたっては、外部の業者に数多くの発注をしなければならない
たとえば、セット撮影ならばスタジオを押さえて、そこにセットを建て込まなければいけないことになる

セットを建てるとなったら撮影美術会社に発注をするか、フリーランスの美術デザイナーに依頼をするかということになる
当然、最初はイメージを伝えて見積りをとったり、発注金額を折衝したりといったやりとりをしなければならない

そうした発注管理もプロダクションマネージャーの仕事だ

4.現場進行

撮影をするとなると、当然人が動く
たとえばオープンロケ撮影ならば、まず撮影場所を決めるためにロケハンをしなければならない
ロケハンも撮影も主宰するのはプロダクションマネージャーである

参加するスタッフの都合を聞いてスケジュールを押さえる
移動手段や宿を手配する
コースを決めるなども、すべてプロダクションマネージャーが行う

全体のスケジュール以外に、どういう段取りで撮影を行うのか、日々のスケジュールを作るのもプロダクションマネージャーである
ロケ場所を撮影に貸してもらうための折衝などもしなければならない

この他に、現場関係の雑用はすべてプロダクションマネージャーが行うことになる

私が現場にいた頃は、ひとつの作品をひとりで仕切ることも多く、現場に入ると手が足りなかった
後には、プロダクションマネージャーも複数制になったようだ

プロダクションマネージメントの大切さ

このところの動画制作業界のあり方を私はあまり知らない
私がプロダクションマネージャーをつとめていた頃のような、システマチックな働き方ではなくて、ひとりで何役もつとめるクリエイターもいるらしい

しかし、もし実写作品を作るとしたら、機材は変わっていたとしても、同じような作業をする人が絶対に必要なはず

動画制作にとって、プロダクションマネージメントというものが大切なことは今も昔も変わらないはずだ

だから、ここに書き留めておく、古い世代のノウハウが役に立つこともあるだろうと思う


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