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動画編集ソフトはDAWの夢を見るか?
動画編集ソフトは、生成AI機能の搭載によって、従来の録画編集に加え、動画生成機能を統合した新たな形態へと進化する方向です
これは過去、音楽制作におけるDAW(Digital Audio Workstation)が、作曲から録音、編集、ミックス、マスタリングまでを網羅するようになった流れと似ているような気がします
生成AIが、動画編集においても、素材の自動補完、シーンの自動生成、さらには動画全体のストーリー展開の支援まで行うという可能性があります
動画制作の効率化と表現の幅を広げる新たな可能性を拓く、その一方で「動画編集」という概念そのものが変化をするであろうという気がします
DAWってなんだ?
DAW(Digital Audio Workstation)とは、デジタルオーディオの制作・編集・ミキシングを行うためのソフトウェアのこと
音楽制作、音声編集、サウンドデザインなど、幅広い用途で使用されている
DAWは、録音、編集、ミキシング、マスタリングなど、音楽制作に必要な機能を統合的に提供するソフト
オーディオトラックの録音、編集、ループ作成、エフェクトの追加、ミキシング、マスタリングなど、様々な操作が可能
MIDIシーケンサー機能により、ソフトウェア音源や外部楽器の演奏を記録し、編集することもできます
DAWの歴史は、1980年代にコンピュータによる音楽制作が本格的に始まった頃に遡る
初期のDAWは、ハードウェアベースで、高価で操作が複雑だった
しかし、後には、ソフトウェアベースのDAWが登場した
今はそちらが主流
現在では、Pro Tools、Logic Pro X、Ableton Live、Cubaseなど、多くのDAWソフトウェアが開発されている
これらのソフトウェアは、機能や操作性、価格帯などが異なるため、ユーザーのニーズに合わせて選択することができる
DAWと動画編集ソフトを比較すると
現在の時点で、DAWと動画編集ソフトを比較してみる
いっぽうは音を扱うソフトで、いっぽうは動画を扱うソフトだが、使いでは良く似ている
たとえば、Vegas Proという動画編集ソフトは、もとはAcidというDAW(正確にいうと、元はループシーケンサーという音楽制作ソフトだが、今はDAWと言っていい機能をそなえている)から派生したものだ
トラックの構成やら、素材を重ねていく操作など、非常によく似ている
そのいっぽうで、まったく違う部分もある
今のDAWで音楽を制作するプロセスは大きく分けて、ふたつ
ひとつは、リアルに楽器を鳴らして録音し、オーディオデータにしてそれを編集するやり方
もうひとつは、いわゆる打ち込みだ
DAWの中で、ソフトウェアシンセサイザーという「楽器」で音を作るやり方である
いわゆるMIDIシーケンサー機能だ
動画編集ソフトは、基本もとが実写(カメラで撮影した動画)であれ、CG(コンピュータで作成した動画)であれ、動画素材じたいを作り出すことはできない
よそから持ち込んだ動画素材を処理するだけだ
動画編集ソフトの中で動画を作り出すことは(一部の例外を除いては)できなかった
動画編集ソフトが変わりつつある
生成AIが動画編集ソフトに搭載されるようになってきて、この概念が覆りつつある
今はまだ動画編集ソフトのメインの機能は、よそから持ち込んだ動画素材を編集することだ
しかし、たとえばAdobe Premiere Proにはこんな機能が搭載されているらしい
(Feloで調べた)
オブジェクト追加・削除:
この機能では、動画内の特定のオブジェクトを選択し、追加したり削除したりすることができます。手動での編集に比べて、数秒で処理が完了するため、時間を大幅に節約できます。
生成拡張:
この機能を使用すると、既存のクリップを延長することが可能です。AIが自然にフレームを生成し、スムーズなトランジションを実現します。これにより、撮影した時間以上に映像を引き延ばすことができ、編集の自由度が増します。
今はまだ完全に動画素材そのものを作り出すことはできないが、こういうことができるようになるなら、それも間近だろう
将来の動画編集ソフトはどうなる
数年後、動画編集ソフトを立ち上げると、まず「既存の動画素材を編集しますか? それとも生成AIで動画を作りますか?」と聞かれるのではなかろうか?(一部のソフトではもうそうなってるが)
まず動画素材ありき、の今の動画編集ではなく、動画を作るところからはじまる
それも他のソフトに切り替えることなく、動画編集ソフトの中でシームレスに使うことができるようになるのではないか
将来的にはむしろ、実写をするということが珍しくなってくるのではないか、という気がする
特定の人物が画面に登場することに意味がある、というシーン以外はAIで生成することがふつうになってくる時代も来るだろう
もちろんその頃には3DCGやモーショングラフィックスの技術も、AIに取り込まれていって変化しているだろう
極端な話、動画編集ソフトひとつで、他から何も持ち込まずに映像が作り出されていくようになることも日常的になるだろう
パーツごとに生成された動画を組み合わせる作業になる?
今の動画生成AIの一番の不満点は、パーツごとの生成がしづらいこと
たとえばキャラクターはいいのに、背景がダメ、といったことが起こり得る
プロフェッショナルな視点から言えば、キャラクターごとのパーツ、シーンごとの背景などを別々に生成して、組み合わせる方が生成された動画に修正を加えるより、ずっと効率的だ
AI生成動画編集にもこうしたレイヤーの考え方が取り入れられていくんじゃないか、というのは私の妄想である
動画編集者という職業はどうなる?
持ち込まれた動画の編集だけしかできません、というエディターは仕事がなくなる
動画を生成することができて編集者も一人前、なんなら一人でPCの前から動かず、動画の企画から構成から完成までやってしまう人が増えるだろう
つまり、動画編集という限られた領域のスキルはもはや最小限で、はるかにさまざまなスキルを必要とする時代が来るのだろう