シーン設定~講師の「具体化」テクニック~
「たとえ話」「対話」と、ここまでは助走。
ここからが、実際にシナリオライターのテクニックの応用編となります。
まずは「シーン設定」ですがこれは演劇で言えば一幕ものの劇のようなものです。
シーンとは何か?
「シーン(Scene)」とは「場面」といった意味です。
映像でいうシーンとは「場所を移動することもせず、登場人物が大幅に入れ替わることもない一場面」とでも言えばいいでしょうか。
講師の「具体化」テクニックにおけるシーンとは、「日常生活の一場面を切り取ったひとつの場面」とでも定義しておきましょう。
前項の「対話」と大きくちがうのは、シチュエーションの要素が追加されることです。
「対話」のときは、二人の登場人物の役割のほか、何も規定しておりませんでした。
これが「シーン」となることによって、ふたつの要素が加わります。
場所の規定
シーンに必要なのはまず「場所」です。
これから描写する出来事が、どういう場所で行われたのか、それを明らかにする必要があります。
会社のオフィスなのか、家庭のリビングなのか、都会の街頭なのか。
そういった「場所の情報」が付け加わるわけです。
時間の規定
もうひとつ明確にしておきたいのが、時間です。
時間にはいくつかの意味がありますが、まずは「時間帯」です。
朝なのか、昼間なのか、夜なのか。
どういう時間帯に行われた出来事なのか、を明らかにします。
もうひとつは「時代」です。
昭和の出来事、令和の出来事、未来の出来事だってあるかもしれません。
特に言及しなければ、現代のことと推定されます。
しかし、別の時代の出来事ならば、それを明らかにします。
なぜシーンを設定するのか?
「具体化」を定義した時に、「相手の頭の中にイメージが浮かぶように伝える」ことだと申しました。
シーンを設定することは、まさにこの「頭の中のイメージ」を浮かべてもらうためです。
場所と時間を明らかにすることによって、漠然としていたイメージが一気に明確になるはずです。
オフィスでのコミュニケーションについて解説する講座だとします。
コミュニケーションは主に会話ですから、ポイントを並べて紹介するよりも、実際に交わされる会話にして伝えたほうが、よっぽど理解しやすいとは思いませんか?
登場人物の設定
「対話をつくる」の項でもふたりの人物を登場させました。
シーンを設定したからには、当然人物を登場させなければなりません。
今度は、ふたりに限りません。三人でも四人でも登場させられます。
ただし、必要以上に人物の数を増やすことは感心しません。
「対話をつくる」では、登場人物に役割を与えることを紹介しました。
今回も役割を割り振ることはもちろんですが、それと若干のプロフィールを付け加えると、よりイメージが明確になるでしょう。
たとえば、退勤時間の過ぎたオフィスでの出来事を例にとります。
課長 = 体育会系の熱血上司。熱血が過ぎてパワハラと言われることもある
若手社員A = この課のエース的存在。要領がよくて、人当たりもよい
若手社員B = いわゆるダメ社員。やる気が見えず、覇気もない
こんなふうに性格を割り振るのです。
これは聞き手(読者)にこのように紹介してもいいですが、しなくても自分のメモに書いておくだけでもOK。
こういうプロフィールの設定をしておくだけで、会話が生き生きしてきます。
会話の作りかた
シナリオの本体はセリフとト書きに分かれます。
セリフはもちろん会話を表します。
セリフの頭には誰が発した言葉なのかわかるように、名前を書いておきます。
シナリオでは、セリフだけでどういう雰囲気で発せられた言葉なのかわかるのが一番よいのです。
しかし、なかなかそうはいかないので、括弧つきで雰囲気を書き込んでもかまいません。
こんな感じですね。
本当のシナリオを書いているのではありませんから、小説風の書き方にしてもいいと思います。
シナリオ風のほうは、若手社員Bが帰社したことを課長のセリフで知らせています。
小説風のほうは、ト書きで記述しましたから、課長のセリフは必要なしとしました。
会話のセリフには一行一行、役割があります。
文芸作品ではないので、ムダなセリフを入れるのはやめたほうがよいと思います。
どんなシーンを作ればよいのか?
シーンを作る目的は「相手の頭の中にイメージを生じさせること」でした。
ですから、人によって大きく違うイメージを生むようなシーンを作るのは、よくありません。人によって伝わるイメージが異なってしまうからです。
オフィス、家庭のリビング、通勤電車の中、など、誰でも経験するような、また人によってイメージがそんなに違わないような、一般的なシーンを作ることが一番伝わりやすいと思います。
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