【3時間待ちの大行列!】ドーナツ旋風の仕掛け人が語るマーケティングとは
こんにちは!トビタテマーケ会の内波です。
マーケに興味があるトビタテ生で運営されている会で、月1でマーケターの方をお招きし、イベントを開催しています。
先日、トビタテマーケ会#01 キックオフイベントを開催し、日本にドーナツ大旋風をもたらした「クリスピークリームドーナツ」の執行役員「清水元承」さんにマーケティングに関して語っていただく機会がありました。
今日はその際に聞いたお話を、簡単にまとめて紹介します。
<目次>
①クリスピー・クリーム・ドーナツとは?
②ブランドの根幹「経営理念」を語る
③オープン前〜広告費0円のプロモーション戦略〜
④オープン後〜ブランドの伝え方〜
⑤最後に
クリスピークリームドーナツ上陸までの話も非常にドラマティックではあるのですが、今回は「マーケティング」という文脈なので、「プロモーション」と「ブランディング」にフォーカスを当てて説明します。
※下記より、ですます調改めます。
①クリスピー・クリーム・ドーナツとは?
1937年に米国南部のノースカロライナ州で創業。2000年代から米国本土で多店舗展開を始めた。
2006年、ロッテと、流通業界へのコンサルや経営支援を行うリヴァンプの合弁会社としてクリスピークリームドーナツジャパンは設立。
2006年12月、新宿のサザンテラスに1号店をオープンして以来“行列のできるドーナツ屋”として成長を続けた。
当時の熱狂ぶりは凄まじく、平日でも2時間待ち、土日は3時間待ちがデフォルトであった。地方では8時間以上並ぶところもあったようだ。その行列はおよそ1年以上も続いた。
一体、どのような仕掛けでこの行列は作られたのか。
②ブランドの根幹「経営理念」を語る
行列の仕掛けを解説する前に、一つ大切なことを伝えたい。
それがクリスピークリームドーナツの経営理念「クリエイティブ・マジック・モーメント」である。
全ての戦略の背景に、この言葉があると念頭に置いた上で読み進めて欲しい。
③オープン前〜広告費0円のプロモーション戦略〜
オープン前、清水さんの任務は「広告費0」で「クリスピークリームドーナツのプロモーションを行うこと」であった。
すでに、ミスタードーナツが台頭している日本。そこで「広告費0」という制約の元、オープン前のドーナツ屋を広める...これはかなり難しい。
そこで清水さんがとった作戦は
【12個入りのドーナツを、昼間、新宿駅前で、毎日、200個配る】だった。
2006年11月。作戦はオープンひと月前からスタート。
ランチタイム真っ只中の新宿。ランチから帰ってきたであろう人々や、通りすがりの人々に、ゲリラ的に12個入りのドーナツを200箱配り始めた。
道ゆく人は、驚きおそらく困惑しただろう。
なぜ、私に無料でこんなにもドーナツをくれるのか。なぜ12個も入っているのか、と。
12個入りのドーナツを受け取ったランチ終わりのOLはオフィスに帰るなり、同僚たちにきっとこう言うだろう。
「駅前で12個もドーナツもらっちゃった!みんなでわけて食べましょう!」
「え?12個ももらったの?すごい!」
「なにそれ!どんなお店なの?」
「こんなドーナツ初めて見た!」
このようなコミュニケーションが派生するのは容易に想像できる。
12個入りのドーナツをもらった200人の人は、同僚や家族、周囲の人間みんなにその「大盤振る舞いドーナツサンプリング」の様子を事細かに力説するだろう。
事実、当時のmixiには新宿でドーナツゲットを報告する投稿が多く上がっていた。
1個ではダメだった。12個入りだったから話題になったと言える。
話題が話題を呼び、新宿はドーナツが配られる時間帯になるといつも人だかりができるようになった。
クリスピークリームドーナツの経営理念「クリエイティブ・マジック・モーメント」。この考え方を大切にした清水さんの「思わず誰かと共有したくなるような驚きと感動により、コミュニケーションを派生させ、話題を広げる」作戦は功をなした。
また、「日本人の国民性に着目したメディア戦略」も見事だった。
サンプリングが始まっても暴動を起こさず、きっちりと行列を作りサンプリングを待ってくれる人々の様子はメディアの目に止まるだろう、との考えのもと各テレビ局に連絡した。
「今、新宿で、大行列ができている」と。
思惑通り、このネタはテレビ各局が食いつき、こぞってワイドショーで放映した。またその放送を見たラジオや新聞、雑誌から取材希望が殺到した。
クリスピークリームドーナツは開店前にも関わらず、日本で一番HOTな場所になったのだ。
要約すると
・サンプリング時には「誰かに自慢したくなる仕掛け」を作るべし!
・ターゲットが拡散してくれやすそうな時間帯を考えるべし!
・話題が広がる道筋は積極的に生み出すべし!
ということになる。
④オープン後〜ブランドの伝え方〜
オープン前からの徹底したプロモーション戦略は功をなし、オープン後も行列が続いた。(GWの観光スポットランキングに、ディズニーランド、USJと並びランクインしていたらしい)
だが、単に開店前に話題になっていただけのドーナツ店に、1年以上も行列が続くのだろうか。
実は、「オープン後の徹底したブランド戦略」により、その行列は1年以上も維持されていたのだった。その「徹底したブランド戦略」とはどのようなものだったのだろうか?
1. 寒空の中のおもてなし
クリスピークリームドーナツがオープンしたのは12月。お客さんは寒空の下長い列を作り何時間も待っていた。
その様子をみて、焼きたてのドーナツ1個を、列をなす人全員に無料で配り始めた。受け取ったお客さんからは、思わず笑みが溢れる。
「今この瞬間をいかに満足してもらえるか」を徹底追及した施策だった。
2. まるでお菓子の工場!待ち時間の工夫
ドーナツを楽しみに待っていてくれるお客さんに対するおもてなしは、ドーナツ無料配布だけに止まらない。
調理場をガラス張りにし、ドーナツの製造工程を見える化することで、さながら工場見学のようなワクワク感を演出した。長い列に飽きてきた人を、より楽しませる仕掛けとして、製造工程をエンタメ化したのだ。
当時は製造工程を可視化しているお店はなかったため、瞬く間にネット上(mixi)で話題となった。
3. 「あのドーナツをゲットした」の魔法
待ち時間にフォーカスを当てて解説していたが、実は購入後にも仕掛けがあったようだ。クリスピークリームドーナツの箱は、ドーナツを平置きして入れられるようになっており、横に平べったく大きい。
12個入りとなると相当大きくなる。
その箱を持っている人が新宿駅に大量発生するとなると、かなり目立つ。
「あぁ、今話題のあのドーナツを手に入れたのか!」そのような羨望の眼差しもあっただろう。
自然と、ドーナツを購入したお客さん自身が広告になっており、ブームの火は長らく鎮火することはなかった。
⑤最後に
マーケの話も面白かったのだが、清水さんの出店計画時のプレゼンの話も面白かった。説明しだすとキリがないので、あえて割愛するが、一つだけシェアしたい。
プレゼンは、「自身の利益」と「相手の利益」と「第三者の利益」を伝えることが大切らしい。
例えば、
・私がここでドーナツ店をやると〇〇円売りが立ちます。
・テナント料として〇〇円確実に払えます。
・さらに、これくらいの来客が予想されるので、周辺のお店も賑わい、
〇〇円の経済波及効果が生まれます。
今回は第一回目でありながら非常に満足度が高いイベントとなった。トビタテマーケ会では、パネラーと参加者を随時募集中している。
今回のイベントの様子は、非常に優秀な参加者の方がまとめてくれたので、ぜひシェアをお願いしたい。
◾️note 担当
>塚崎 浩平(つかざき こうへい)
Airbnbのキャンプ場版、「ExCAMP」 のCEO
note
クリスピードーナツ立ち上げからの大ヒットの秘策〜行列ドーナツの仕掛け人「清水元承」さんが語るマーケティングの本質とは?
◾️グラフィックレコーディング担当
>中川千恵美(なかがわちえみ)
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