大学数学の自習配信を450日間継続した話


はじめに

大学数学の自習を450日間連続で継続し、その様子をMirrativで配信しました。経緯や得られた経験を以下に示します。

著者のプロフィール

アラサーのプログラマです。情報系の分野で修士号を取りました。

きっかけ

もともと数学には興味があり、学生のときも数学に近い分野のことを勉強していました。しかし、数学科の学生が勉強するような純粋数学の基礎がないことがコンプレックスだったため勉強を始めました。

自習の方法

iPadとApple Pencilを使って参考書を写経して勉強しました。その様子はMirrativで配信し、公衆の面前で勉強するというスタイルを取りました。独学は文字通り一人で行うものですが、配信することでいくらか孤独感の解消に役立ちました。

ニコニコ生放送やツイキャスは無料だと1回の配信時間の上限が30分程度なのに対し、Mirrativは無料でも配信時間の制限が非常に緩く(おそらく上限が10時間)自習配信に適しています。また、コメント読み上げ機能もアプリに内蔵されているため配信者としては楽でした。

なぜ続けられたか

最初に読んだ『多様体の基礎』が読みやすく、勢いが付きました。通常であればしばらくするとやる気が落ちて継続できなくなります。しかし、Mirrativでは連続配信記録がつけられ、それに応じて称号を付与する等の配信者のやる気を煽る機能があります。

これらの機能のお陰でモチベーションが維持できました。連続配信記録が伸びるほどにますますやめられなくなり、一種の強迫観念に囚われ半強制的に自習を継続させられる状況に陥りました。徹夜で睡眠不足の日、ワクチンの副反応が出た日、遠出をした日、精神的に落ち込んでいた日、引っ越しにより普段のネット接続環境がなかった日、どんな日でも絶対に15分は自習配信をするようにしました。

学んだ内容

配信継続開始前の段階では、学生の頃の教養で習った数学に加え、『集合・位相入門』、『ベーシック圏論』、『線形代数入門』といった本を(一応)読んだことがありました。配信では、多様体、群・環・体・加群、ルベーグ積分、代数的位相幾何(学習中)を学びました。この記事の最終節に勉強に使った本の書評を掲載しましたので、独学する方は参考にしてください。

配信の様子

視聴者はほとんどいないため、集中して勉強できました。たまに数学に関するコメントを残してくれる方がいて、その方とコミュニケーションは適度な息抜きとなりました。

自習配信を通して得たもの

どういう形であれ、毎日コツコツ頑張る習慣が身についたことが最大の収穫です

昨年末頃に自作OSSを開発したことをきっかけに、毎日GitHubを更新するのが日課となりました。これも自習配信と同様に連続更新記録がある種の呪縛となり、毎日少しずつ努力できるようになりました。

しかし、私より才能のある人・努力を積み重ねた人は星の数ほどいるのでしょう。そういった人たちに追いつけるよう、より一層精進します。

おまけ:書評

多様体の基礎 (松本 幸夫)

多様体の入門書として最も有名な本です。評判通り読みやすかったものの、多様体の基礎的な概念が並べられているだけで、多様体を使った数学の面白さはあまり伝わってきませんでした。しかし間違いなく読みやすい本であり、前提知識もそれほど多くないので独学におすすめの本です。

詳解 代数入門 (弥永 昌吉/有馬 哲/浅枝 陽)

群・環・体・加群の入門書です。定義や証明を1文字でも短くしてやろうとする著者の意思を感じました。演習問題も難しいものが多かったと感じます。ガロア理論の章は難しすぎてギブアップしました。他にも代数の良い入門書があるはずなので、まずはそちらを最初に読むことをおすすめします。

A User-Friendly Introduction to Lebesgue Measure and Integration (Gail S. Nelson)

ルベーグ積分の入門書です。今まで私が読んだ数学の専門書の中で最もわかりやすかったと感じます。題名の「User-Fiendly」は伊達ではありません!以前日本語のルベーグ積分の本で勉強しようとして挫折しましたが、この本は最後まで読み切ることができました。英語もシンプルであり、数学英語の入門にも適しています。

トポロジー入門 (クゼ・コスニオフスキ)

勉強中の本です。英題の「A First Course in Algebaic Topology」の通り、代数的位相幾何の基礎を解説する本です。今のところ、極端に難しいと感じた箇所はなく、独学でも普通に読み進められています。

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