手数を覚えりゃいいってもんじゃない
「はじめて踊る演目なのに、”できてない”って怒られるのはおかしくないですか!?」
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うちの道場は小中学生が多い。
となれば、当然なにかしら先生と保護者間の諍い(?)も起こるわけで。
その中身はというと、だいたいこれ。
先生:踊りは芸事 V.S. 保護者:琉舞は習い事
両者間における認識の相違。
なんだかんだ言っても道場のいち生徒でしかない私は基本的に傍観者なんだけど、このあいだは私のほうに先生へのクレーム(?)をいただいてしまい(たぶん先生とのコミュニケーションが決裂したのだろう)、まァ、ちょっと考えさせられるお話だったので書き留めておこうと思った次第です。
道場に通う中学生ちゃんのママから怒りのLINEは、ざっくりまとめると次のような内容であった。
曰く、
つまるところ、
「前から稽古していたわけじゃないのに、できなくて当たり前」
「はじめて踊る演目なのに、”できてない”って怒られるのはおかしい」
―――んでもって、結びの言葉は
「うちの娘は悪くない!」
ちなみに合同稽古っつーのは、ひとつの演目の出演者の道場や流派がばらばらのときに、日にち合わせて一緒に稽古すること。言葉の通り。
そうね、いきなり出演決まってようわからんまま合同稽古なんてハードル高いもんに行かされて、先生に怒られたんじゃあびっくりしちゃうし親御さんとしてもショックのはず。うん。私だって、こんなシチュエーションにぶち当たったらそれなりにムカついて、先生にキレちゃうかも。もちろん心のなかでね。
・・・・・・と、まァ、普通に考えたらそうなんだけど。
それじゃあ生き残れないのが芸事の世界なのだ。
残念!
合同稽古はよくある話
合同稽古ってのは、街ナカの道場だとよくあることだと思います。
なんたって、地域ごとにみれば琉球芸能は人手不足で人材不足。
道場あたりの生徒数がまぢで減少している今、田舎の文化祭やなんらかの周年記念の舞台となれば1道場で1演目なんて厳しいこともザラにあるし、群舞であれば「各道場から新人以上2名ないしそれ以上出して総勢20名で合同の演目やります」なんて当たり前。
舞台って誰でも出れるわけじゃなくて、新人賞以上だとか教師・師範に限る、だとかその時々で条件を指定されるのよ。新人賞クラスでOKなときは名前貸しして賞取ってない子が出たりするけどね。
*コンクールと賞については下記を参照
ちなみに、地域内の道場でタッグを組むため、流派はバラバラなうえに新報系とタイムス系がごっちゃになることなんて珍しくない。というかだいたいそう。
なので、良い刺激にはなります。
同じ歳の子がどんだけ上手なのかな、とか、自分の道場との踊り方の違いだとか、余所の先生に怒られる恐怖だとか、下手だと自分の先生が周りから白い眼で見られてしまう恐怖と緊張感とか、恐怖とか、恐怖とか。
ぶっちゃけ私は合同稽古苦手です。
いや、だって怖いし。
でも出してもらえる舞台は出たいので、行くんですけど。。
毎回胃が痛いのは、きっと私の精神が軟弱なのね。
できてないのは手数じゃない
”できてない”
先生がこの子に言った「できてない」が一体どういうできてないなのかというと、おそらく手数の問題じゃあないわけです。
(手数っていうのは踊りの振りのこと。念のため)
合同の演目なんて、地域の創作舞踊も多いし初回の合同稽古ではじめて手数を習う場合もあるので、初回で覚えてるか否かは左程重要ではない。(もちろん2回目、3回目の稽古で手数覚えてないムーブかましたら何かを覚悟しなければなりませんが。)
んじゃ何ができていないんだというと、それは所作。
姿勢だとか摺り足だとかこねり手だとか、、、基本的な動き。
お世辞にも踊りが上手とは言えない私から見ても、この子は弱い。
この点に関しては、まだ中学生だもんねぇ~とは言ってられないです。
だって中二から新人賞受けれるんよ?
(この子は中一)
今回の出演に関しては賞云々の条件はなかったみたいだけど(猫の手も借りたい人手不足なのでしょう)、こういうところに出てくる人たちってほとんど上手な人ばっか。そンなかで子ども舞踊が抜けてない未熟な所作を見せてしまったら目立つこと間違いなしである。
そんで、どうしてこの子がコンクール受ける手前の年齢になっても子ども子どもした踊りをしちゃってるかというと、そりゃあ・・・・・・
日 頃 の 稽 古 量
というか、そこそこ舞台出てていろんな演目踏んでたら、初見の手数でもおおかた次の動きが予想できるので、あまりきょどったりぎこちない動きしたりすることはないんですよね。当然ながらこういうところからも、日頃から稽古積めてるかどうかバレちゃうわけです。
稽古は最優先事項
・・・・・・とまでは言えないけれどね、今の世の中。
私だって、仕事第一だし。
とはいっても、この子は日頃の稽古への出席率が悪すぎる。
週二のうち一回来ればいいほう、月に2~3回くらいしかまともに稽古していないのだ。
お休みの理由は、頭が痛い、親が酒を飲んで送迎できない、家族で出かける、友達と遊ぶ(夜遊びじゃねぇか!)などエトセトラエトセトラ。
身体って動かさないと物理的にも感覚的にも固まるので、たとえ下手でも稽古の数が違うだけで動きって変わってくると思う。私も仕事とかで一週空けっちゃったあとの稽古はそこはかとなくかぎこちない感じがする。
だから、なるだけ稽古には出るに越したことはない。
間違っても、「友達と遊ぶから明日休みます」とか、お願いだから先生の面前で堂々といわんでくれ。空気が凍って砕け散る。
(たまに友人と遊ぶために理由は言わずしれっと休みますけど。私も人間なので)
体調に関してはね、無理しないほうがいいと思う。
うちの先生は、「子どもが体調不良になるなんてありえない!」という不思議な価値観をお持ちですが、子どもの身体の強度なんて十人十色ですし普通に体調崩しますよ。人間だもの。私が中高生の頃はジキ〇ンとイ〇とアリ〇ミンが手放せませんでした。
あと、これは持論なんですが、子どもの頃から無理をする癖をつけると自分を労ることができない大人になってしまって、社会に出たときブラック企業でこき使われるなどして損をする(と、私は考えている)。現代人は無意識にセルフDVをする人間が多すぎるのだ。そういうのやめたほうがいい。
それはさておき、私はよほど高熱が出ていない限り、体調不良でも稽古は行きます。
もし舞台の本番に具合が悪くなった場合、体調が悪いままでどのくらい踊れるのか、何に気を付ければ踊り通せばいいか、という感覚を覚えておきたいから。基本的に、本番というのは地球が滅亡しない限りドタキャンすることはできません。
けれど、去年だったかな。
なぁんか喉がカスカスしてた日、普通に稽古終えて帰宅したら熱が39度くらいあったんですよね。どおりで、秋なのにミョーに暑苦しいと思ったよ。そのあと一週間くらい仕事休んで寝込んだら治ったけど。あの日一緒に稽古してた子は、私の三日後くらいに発熱してコロナ陽性だったとか。
感染症っぽかったら、さすがに休みましょう。
私も陽性でした(完全に感染源)。
芸事/習い事
道場に通う親御さんを見てて思うのが、ちょっと子どもを稽古に行かせる優先順位低すぎないか、ということ。
今や琉舞もすっかり「習い事化」しているので、芸事というよりも書道や水泳同様、小さい頃にさせる習い事のひとつとして道場に通わせてる親が多い。小学校低学年のうちにいろいろとさせて、そのなかで本人に合ってるものに絞って継続させる、みたいな。かなりライトな感覚で子どもに琉舞させてる。
べつにそれはまったく悪いことではないし、地元の伝統芸能は気軽に触れられるものであってほしいと私は思う。・・・・・・のだけど、そうなると稽古への出席率にも響くんですよね。何かあれば強いては稽古行かせなくてもいいかなって感じで結構気軽に休む。く〇んとかE〇Cみたいな感じで。旅行とか、ちょっとした用事とか。舞台の直前でもわりと気にせず休ませる。
怖くないんか・・・・・・?
稽古不足で自分の子どもが本番で間違えたらどうしようとか思わないんか?
今とは別の道場にいた頃、リハや合同稽古で間違えたら容赦なく怒鳴られて蹴られてひっぱたかれた。それを親も間近で見てるわけですから、とてもじゃあないがおいそれと稽古を休ますなんてできない。送迎ができなかったら誰かに頼む、運転手に目的地を言づけて金を渡してタクシーに乗せる、熱が出てても解熱剤飲ませて連れていく。自分の子どもに辛い思いはさせたくないので親も必死だったのだ。
お母さんありがとう。
と、思い出話はひとまず置いておき。
芸を大衆の前で演じるというのは、重大な責任を負って舞台に立つことです。
(私がその責任を果たせているかは別の話ですが。)
稽古不足で本番を迎えるというのは、出演を許してくれた先生そしてお金を払って足を運んでくれた観客に対して無礼極まりないのだ。本来、人手が足りていたら稽古不足の子は出演カットされるんですけどね、いかんせん人が足らんので全員出れちゃうのだ。
こういう現状も相俟って、うちの道場では舞台は気軽に出れるもんだと思われがちなのに加えて、保護者側には「子どもの習い事だし」というライトな意識がなんとなく出来上がっている。
その認識諸々のずれが、先生に対して物申しちゃう原因のひとつなんだろうなと思います。
ところでLINEの返信
というようにいろいろ考えていると、LINEを返すのが面倒になってきた。
夜も更けてきたことだし。
「そうですね、大変だけど私も一緒に稽古しますので頑張りましょう💦」
みたいな返しをした。
ちょっとやそっとじゃあ、伝わらない気がするし伝えきれる自信がない。
私の考えが正解というわけでもないし。
そもそもの話、明らかにこの子休みがちなのに、先生の鶴の一声で「アンタこの舞台出すからね、来週合同稽古よ」となってしまったのが事の発端なのでは。
原因:人材不足
どうしようね。
明日も合同稽古なので、そろそろ寝ます。
おやすみなさい。
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