ここだけのはなし[03]
2つめのお話です。
01.「家」の移り変わり
昔の住宅にはハレとケに象徴されるように、催事や法要の為の「ハレ」の場所があり、日常生活のための「ケ」という場所よりも、良い場所に配置し、家の格式や価値を左右していました。
近代になるに従い、核家族化が進み「ハレ」の行事は家では行わなくなり、外の施設を利用するようになってきます。さらに敷地や占有面積の関係もあって、限られた空間の中に日常生活<ケ>だけに特化した場所づくりが当たり前になってきました。
さらには、応接間などの接客スペースも少なくなり、最近では親しいお友達ならば、リビングやダイニングでお迎えすることも普通になり、お客様はほぼ家で向かえること自体がなくなってきました。
つまり、住宅の移り変わりは、個々の日常的な機能を充足させるように進展してきたと言っても過言ではないということです。
さらにプライバシーの尊重から、共有スペースよりも個室の個別化が重要になり、家族がバラバラになってしまっているのが実情かもしれません。
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02.いつも遊びに出かけているような家が良い
共働きで忙しいから、なかなか子供たちと遠出や旅行が出来ないから、せめて毎日楽しくみんなで過ごすことが希望でした。
この家族は共働きご夫婦なので、奥様(母)も仕事中心になり、子供たちとなかなかコミュニケーションが取れないと言う悩みがありました。マンションの購入も考えたが、子供が3人いるので3LDKでは少ないし、みんなで過ごすには規格の間取りでは小さく使いにくいと考えられていました。自由に家をつくるなら、可能な限り限られた時間を家族みんなで過ごす事ができる「家」ができるのではないかという思いがあったのです。
家族の団欒というのは、一般的には居間で展開されるというイメージがありますが、この家族では、平日なら夕ご飯前後、土日でも、全員揃うのはお昼と夜の食事の頃に集中するから、みんなで食卓を囲む場所を一番大切にしたいということでした。
それなら、思い切って「居間」のようなスペースはカットし、ダイニングをメインに空間を取ろうというお話になりました。
仕事柄ゆっくりとドラマなどを見ている時間もないし、子供たちと一緒に夕ご飯の支度をしたり、コミュニケーションを取るのにTVは邪魔なだけだから置かない。さらに、どんな時でも家の中に居る時は子供たちの様子が分かることと、ひと声掛ければ届くような距離感が良いので、最低限の区画でいい。
予算の限界もありましたから、個室の確保も最低限の仕切りにして、1ボックスの大きなダイニングをメインにして、1階には事務所機能とエントランスを設けています。
子供達が大きくなったら仕切りが増設できる仕組みや、部屋の増床のために、最大限の容積になるように骨組みは鉄骨で3階分の高さを確保しています。
言葉だけでは解りづらいかもしれませんが、例えて言うなら「鳥かご」のような様子です。構造的には、骨組みの鉄骨が家全体を外とウチとを区画しているのですが、可能な限りガラス張りにしています。
外の景色をそのまま取り込んで、天気が良くても悪くても外で食事しているようなダイニングになっています。食事をする機能ですから「ダイニング」ですが、ファミリールーム(みんなの部屋)です。
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03.家族の数だけ、「家」のカタチもあると思う。
普通の感覚では、なかなかこのプランニングは想像出来ないかもしれません。でも、このケースではご希望通り「数少ない食事の時間を思う存分楽しもう」という考えが、この家を象徴しています。
家族の形も変わりつつありますが、その家族には家族毎の特有のスタイルがありますし、色んな考えのご夫婦や親子がいる訳です。
少なくとも周りを見渡すと、家族構成もそうですし、住まい方や過ごし方の種類が家族の数だけあると思います。商品住宅や規格にハマらない家族像の方が多いのでは無いかと思うのですが、どうでしょう。
もちろん、こんなお話に対応できる「受けて側」の問題もあるかもしれません。昔に比べると設計者や工事業者のスキルも格段に良くなってきていると思います。それに、出会う機会や仕組みもたくさん考え出されてきたように思います。
カタログから選んで買うような「家つくり」もそろそろ転換期に来ているように思います。
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