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Vtuberであるから『こそ』歌える曲の魅力

はじめに

皆さんはVtuberのオリジナル曲を聞いたことがあるだろうか?

推しのVtuberがオリジナル曲を出したから、お気に入りの音楽系Vtuberがいるから...などなど、Vtuberの音楽を聴く理由は様々あると思う。

現在、iTunesで聴くことができるVtuber関係の楽曲は、約900曲以上。全部を聞くために要する時間は58時間以上にもなる。その他のサイトやBoothで配信されている曲や未配信の曲を合わせると、かなりの数にのぼるだろう。

「それだけ歌が上手かったら、あえてバーチャルでやる必要ない」

これは、とあるvirtualアーティストをVのオタクの友人にお勧めした時に言われた言葉だ。

なるほど、確かに一理ある。

今現在も歌い手は山のようにいてオリジナル曲を出しているし、ネット配信が盛んな現代において、顔出ししないで音楽活動することも難しくないだろう。

じゃあ、逆説的に考えてvirtualな存在だからこそ歌える曲やその人しか歌えない曲というものがあるのではないだろうか?
そして、virtualな存在を好きな私たちだからこそ、その楽曲がより心に響くのではないだろうか?

そこで、今回は私の好きで推しているVアーティスト・シンガーの中で、その人だからこそ歌える曲についてまとめてみた。

石燕霊歌

石燕霊歌(@Sekien_Reica)は2019年9月にオリジナル曲「灰を纏う夢」でデビューしたバーチャルシンガーだ。石燕霊歌は高音が美しく後述する設定の関係上、無機質で透明感のある歌声をしており、寂寥感溢れるこの曲に非常にマッチしている。現在、チャンネルにはオリジナル曲が1曲、歌ってみたが2曲投稿されている。


彼女を語る上で、まずは「灰を纏う夢」の概要を引用させていただく。

はじめまして。
私の名は、石燕霊歌(せきえん れいか)という。
狐面に宿った付喪神だ。
歌うことで、魂の聲を伝えたいと思っている。
外の世界をのんびり歩くことと、油揚げが好きだ。大好きだ。
これは、私のはじまりの歌であり、再出発の歌である。
どうかこの想いが、あの日笑いかけてくれた貴方の元へ届きますように。
そしてどうか…………私を大切にしてください。

上述の通り、石燕霊歌は狐面に宿った付喪神(長い年月を経た道具などに神や精霊[霊魂]などが宿ったもの)という設定に基づいてVシンガー活動をしている。「灰を纏う夢」は付喪神として眠りから覚めた石燕霊歌から貴方(特定の誰かか不明)への想いが綴られている。彼女は人の想いがあったからこそ付喪神として生まれ、誰かに認識されないと存在を保てない。あたかも、ネット上で誰かに見付けて貰わないと認識されないVtuberに通ずるものがある。

石燕霊歌(Prroject SekieN)の詳細は音楽全般を担当しているgrief art(@grief_art)さんのnote"バーチャルシンガー「石燕霊歌」の在り方"を参照すると、彼らの考えるVtuberの一つの在り方を見ることができる。

現在、石燕霊歌はツイッター上で日常の出来事をツイートしたり、フォロワーと会話をしたりしている。付喪神の彼女が人との関わりを通して、今後どのような歌を紡いでいくのか、個人的にとても楽しみにしている。

また、石燕霊歌の”中の人”であるクバレ(@dddokubari2019)さんも"クバレがかぷかぷ歌うよチャンネル"で歌ってみたを精力的に公開している。石燕霊歌とはまた表情の異なる彼女の歌を聴いていただければと思う。

波羅ノ鬼(ハラノオニ)

ハラノオニ(@HaranoOni)は2019年7月の第二回アルテマ音楽祭のシークレットゲストとして初めて人の目に触れた。その後、9月のDIVE XR FESTIVAL@幕張メッセに出演。11月には秋葉原で路上ライブを開催し、警察が途中で中止させるほど聴衆が集まった。現在、YouTubeチャンネルにはオリジナルが1曲、歌ってみたが5曲投稿されている。

彼女の初オリジナル曲である「余命宣告」はロック調の疾走感溢れるナンバーだ。過去の辛い経験から自分を隠して生きていた彼女が、過去から脱却するために、自分自信の存在証明<歌>への強い気持ちを歌っている。
つまり、「余命宣告」は彼女でしか歌えない曲であり、聴き手はMVと歌詞からハラノオニのバックボーンを踏まえたうえで、彼女が歌わなければいけない意味を理解することができる。
ハラノオニの詳細は私のnote"波羅ノ鬼(ハラノオニ)という存在について"にも書いているので興味がある方は読んでいただけると幸いである。

エルセとさめのぽき

エルセとさめのぽきは、ある日海の底に落ちてきた記憶喪失の女の子、エルセ(@Else_PJblue)ちゃんと、エルセちゃんの名付け親である、さめのぽき(@samenopoki)との男女混声ユニットである。聴いた人に海を想起させる世界観の楽曲と、エルセちゃんとぽきさんのハーモニーがとても美しく素晴らしい。
今回、触れさせていただく曲は「deep in」だ。

貴方は深い海を見た時に何を感じるだろうか?
好奇心だろうか?安心感だろうか?美しさだろうか?

私は孤独と恐怖だ。

「deep in」(奥深くに)という意味の本曲を聞いた時に初めに感じたことは、暗い海に体一つで放り出された孤独と、深海に落ち続ける身の竦むような恐怖であった。
そんな折に聴こえてきたエルセちゃんとぽきさんの優しい歌声と慈しみを感じる歌詞に包まれた時に救われたような感覚を得た。
聴く人に強烈なビジョンを植え付ける世界観の構築はProjectBLUEのMVの映像美もさることながら、ぽきさんの作る曲とエルセちゃんの歌声のなせる技だと考える。

海の世界に住んでいるエルセちゃんとぽきさんはファンを人間(さん)と呼び、明確な住む世界の違いを提示している。しかし、10月に投稿された「ブルーアワー」は人間世界の実写の映像をMVに使用している。従来のエルセとさめのぽきの世界観を飛び出した楽曲に仕上がっており、枠に囚われない今後の楽曲展開が楽しみである。

AZKi

AZKi(@AZKi_VDiVA)はホロライブ擁するカバー株式会社の音楽部門、イノナカミュージック所属のVシンガーであり、Virtual Divaのコンセプトのもと2018年11月に歌ってみたを投稿してデビューした。
現在、歌ってみたが26曲(コラボ含む)。オリジナル曲は驚異の24曲。おそらく1年のうちで最も曲を出しているVシンガーではないだろうか。また、リアルイベントも積極的に開催しており、Diva(歌姫)の名に相応しいと言える。
私も3回のソロライブと1回の対バンに参加しており、生歌パフォーマンスのクオリティ、歌に対する真摯な姿勢、開拓者(ファンネーム)への熱い気持ち、全てが素晴らしく大好きで推しているアーティストの一人だ。

ここでは、Vtuberしか歌えない曲というもっと大きな枠でAZKiの「いのち」を挙げさせていただく。
まずは一度歌を聴いて、次にライナーノーツを読んでいただきたい。

「いのち」はその名の通りVtuberにおける命の終わりと、AZKiと開拓者との関係を歌った曲である。
AZKiは「いのち」でこう歌っている。

最後まで私は生きているかわからないけど
君がくれた言葉は確かに残ってる

最後まで私のこと覚えててくれるの?
いつ死んでしまうだろう わかんない わかんないよ ねえ
痛いくらい気持ちがシンクロする時もあるけど
君が忘れちゃったら私は居なくなるの

命のような夢を見てるよ
またね、バイバイ。

Vtuberとしての命が尽きたとしても、開拓者がAZKiの歌を覚えている限り、AZKiは居なくならない。
とても胸を打つ歌詞である。

約10,000人を超えるVtuberがいる現在、ネット上ではVtuberの活動休止や引退の文字が目に入る。なかには実際に辛い別れを経験した人もいるだろう。
幸い私の推しや大好きなVtuberはまだ活動しているが、いつまでもこれが続くかは誰も保証はできない。
さらに、自分がVtuberの配信を見れなくなったり、イベントに参加することが出来なくなったりする可能性があることも忘れてはいけない。

「いのち」を聴いて痛感したことは、『推しは推せるときに推せ』という言葉はお互いがあってこそ成立する言葉なのだ。
ゆえに、私は推しに会えるときには会いに行くと心に決めている。

AZKiは12月29日に4th LiVE REPEAT THiS LiFE WiTH Uを開催する予定である。現在チケットが絶賛発売中であり、一番安いチケットは1,000円で購入できる。おそらくこんな機会は二度とないので、気になった方は是非ライブに来て欲しい。
AZKiの曲は良曲揃いである。少しでも気になった人は先日YouTubeで開催された"1周年記念ライブ"を観て、AZKiの生歌の凄さを感じて欲しい。

さいごに

今回は”Vtuberだからこそ歌える曲”ということで、私の好きなVアーティスト・シンガーの曲を紹介させていただいた。冒頭にある通り、まだまだ数多くのVtuberのオリジナルソングが存在している。機会があれば、また好きなVアーティストと曲を書かせていただければと思う。

2019.11.28
Kei_Waga(@k_waretuma

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