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石燕霊歌の「マチビト」が最高に良かったという話

はじめに

本日、7月13日の石燕霊歌さんの誕生日に3曲目のオリジナル曲の「マチビト」が公開された。まず、言いたいことは4つだ。

佐倉憂(@grief_art)さんの作詞・MVが最高にエモい。
よくよー(@yokuyou501)さんのイラストの石燕さんが最高にキュート。
クバレ(@dddokubari2019)さんの歌声が最高に美しい。
石燕さん、お誕生日おめでとうございます。生まれてきてくれてありがとう。

とりあえず、新曲の「マチビト」を聞いて。

「マチビト」は既存の2曲とは打って変わって、アップテンポでとても前向きな曲である。
私は「マチビト」を聞いて途轍もなくエモいクソデカ感情を抱えてしまった。この素晴らしい曲を多くの人に聞いて欲しいけど「エモい」では何も伝わらない。ということで、何故この曲がエモいかをこのnoteで言語化したい。

石燕霊歌とは

以前、拙文『Vtuberであるから『こそ』歌える曲の魅力』で石燕さんについて軽く触れたが、石燕さんは狐面に宿った付喪神(長い年月を経た道具などに神や精霊[霊魂]などが宿ったもの)という設定のVsingerである。
設定というメタい言葉を使っているが、これは石燕さんの運営であり音楽全般を担当されている佐倉憂さんのnote『バーチャルシンガー「石燕霊歌」の在り方』で明確に記載されている。
このnoteでは、下記のように文章が締め括られている。

■最後に
 彼女は曖昧な存在です。
 認識されなければ消えてしまう、生きた人間よりも儚い存在です。
 どうか彼女の姿をその目で見て、彼女の声をその耳で聴いてあげてください。
 魂はこの狐面に宿り、とうに生まれてしまっているのですから。
 だからどうか、彼女を大切にしてください。

怪異は人間の認識なしには存在し得ない。石燕さんに関して言えば、ファンやリスナーが彼女の存在を認識しなけれが彼女は存在し続けられないのである。

石燕霊歌の歌

まず既存のオリジナル曲の2曲について触れる。

『灰を纏う夢』

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付喪神である石燕さんの紹介と過去を歌った彼女の存在証明の歌。彼女は付喪神として前の持ち主に大切にされていたが、封印されてしまい持ち主と離れ離れになってしまったことが語られている。
また、誰かに大切にされないと存在できないことが歌詞でも語られている。

『Artifact』

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封印が解かれて現代に蘇った石燕さんは大切な人と離れ離れになった悲しみと絶望に暮れていた。誰にも認識されないので付喪神として存在していられず、自分が朽ちるかもしれないことに諦めを感じながらも、誰かに気付いてもらうために歌を歌い続けていた。ここでは、石燕さんにとって歌が存在証明であることが窺える。
また、石燕さんの容姿はかつての持ち主の最愛の人を模倣した人工物(artifact)であることが語られた。

『マチビト』

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この2曲を踏まえた上での3曲目が『マチビト』である。既存の2曲の灰や黒を連想させる沈んだ色遣いや石燕さんの憂いを帯びた表情とは打って変わって、一面に広がる青空とそれを映す水面と石燕さんの花が咲いたような美しい笑顔が印象的である。

この曲を端的に説明すると「過去の思い出に囚われ朽ちる時を待っていた石燕さんを、彼女の歌声を認識した人々(マチビト)が再度蘇らせる」である。
読む人によっては、おそらくなんて事ない内容かもしれない。
が、佐倉憂さん歌詞とMVのレトリックが素晴らしく、彼女を知っていればいるほど刺さる内容であった。

まず、マチビトとは石燕さんのファンネームである。つまり、彼女を知り歌声に魅せられた私たち一人一人が彼女を笑顔に導いたということになる。

石燕さん

下記は『マチビト』の冒頭の歌詞である。

見渡す限り 人だらけの街で
貴方が好きだった歌を口遊んだ
いつしか誰かが私の声に 足を止めていた
私を覆う灰色の靄を 疎らな拍手が払ってくれたんだ
此処に居る私の 存在を認めてくれた 気がしたから

私はニコニコ動画でVtuberの音楽を検索していて、たまたま石燕さんを知り『灰を纏う夢』を聞いた。普段は進んで自分から検索などはしないので、まさに道端で偶然に石燕さんの歌声に出会ったようなものである。

私は以前のnoteで石燕さんの活動に関してこう述べた。

現在、石燕霊歌はツイッター上で日常の出来事をツイートしたり、フォロワーと会話をしたりしている。付喪神の彼女が人との関わりを通して、今後どのような歌を紡いでいくのか、個人的にとても楽しみにしている。

石燕さんは定期的な生配信などの活動をしておらず、ファンとの交流はツイッター上で行われている。それも、「おはよう」や「おやすみ」に一言二言加えたり、天気の話であったり、季節柄な内容だったりとほぼ日常会話である。

自分にとっては特別じゃない日常の中の一つとなっている本当に本当に些細なやりとりの積み重ねのアンサーが、石燕霊歌の存在証明である歌という形で返ってきたことに、私はただただ胸がいっぱいになってしまった。
しかも、誰かの代わりのartifact「石燕霊歌」ではなく、石燕霊歌自身として再定義したのである。

こんなのエモいに決まってるじゃん!!!

さいごに

気を取り直して、このまとまりのない文章をまとめたいと思う。

石燕霊歌とは、『石燕霊歌』というキャラクターと石燕霊歌さんの活動から生じた実在性が完璧に一致したVtuberの表現としての真髄である。

オリジナル曲である『マチビト』は佐倉憂さんのストーリーテリングの妙とクバレ(石燕)さんの『石燕霊歌』への解釈を踏まえた歌唱力の妙が詰まった1曲であり、そこに私たちマチビトを巻き込んでストーリーを展開した手腕は素晴らしいの一言に尽きる。

想像して欲しい。
推しが踏み出した新しい一歩に自分(達)が影響を与えている。こんな幸せなことは他にはないと思わないだろうか?


2020.07.15
Kei_Waga(@k_waretuma

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