The Best Albums of 2021(2021年振り返り:音楽アルバム編)
今年は良いアルバムが多すぎて、10枚選ぶこと自体が悩ましかったのだけど、2021年は新たに現れたアーティストたちの音楽が良すぎるあまり、結局ニューカマー表彰祭のようになってしまった。
音楽は、あらゆる芸術の中で最も速く社会の変化を敏感に感じ取り、それを反映、更新していくものでないかと思う。
そう考えると、それぞれのアーティストたちの背景を探ることが、もしかすると音楽を知るうえで一番の手助けになるのかもしれない。
Cleo Sol / Mother
今年一番、何度も繰り返し聴き続けたアルバム。
2021年のサウンドトラックと言えばクレオ・ソル。それくらい自分にとって特別なアルバムだった。
母親になったばかりのクレオ・ソルが我が子へ寄せる、愛情と微笑みの音楽。
オーガニックで、メロウで、やわらかい。
キャロル・キングを連想する、2021年のエヴァーグリーン。
Mustafa / When Smoke Rises Mustafa
聴いて一瞬で虜になった、ムスタファのデビュー・アルバム。
詩人としてのキャリアの後、友人の死をきっかけに若い黒人コミュニティの厳しい現実を伝えるためシンガーソングライターに転身する。
そのバックグラウンドを知ると、どの曲からも孤独感、痛み、悲しみ、そして静かな深みを感じさせる彼の歌声の響きの理由が頷けてくる。
彼は、自分の音楽を「インナー・シティー・フォーク・ミュージック」と呼んでいるそうだ。
The Vernon Spring / A Plane Over Woods
デビューと言えば、ヴァーノン・スプリングのアルバムも素晴らしかった。
心を浄化してくれるような、終始控えめで繊細なピアノは、どことなくゴールドムンドを連想する。
その一方でエレクトロニック・アンビエントな側面も持ち合わせていて、そのバランス感はニルス・フラームを思い浮かべる程、驚異的なセンスも終始漂わせていて、ともかく好み。
その後リリースされたEPに収録されたマーヴィン・ゲイのカバーもとても素晴らしかった。
Gabriels / Love and Hate in a Different Time
これまた今年デビューの(今年、どうかしてる)ガブリエルスによるEPも、まあ全曲素晴らしく、収録曲の「Professional」は、いっときは毎晩仕事が終わった後、必ず掛けることを習慣にしていたくらい今年良く聴いた1曲だった。
ファンク、ゴスペル、そしてなんと言っても70sソウルへのリスペクトが強く感じられ、夜が似合う官能的な艶やかさがたまらない。
Nala Sinephro / Space 1.8
そして今年デビューで一番の驚きといえば、ナラ・シネフロのこのアルバム。
アンビエント・ジャズなんて簡単に括れない、未体験ゾーンまっしぐらな、日常の時間をゆっくり溶かしていく麻薬的なこの感覚。
瞑想的で、同時に脳を溶かしていく美しさと危うさがあって。
WARPからリリースというのもまた良いですよね。
そして、、彼女、22歳ですってよ。
何というかこういう人を天才と呼ぶのでしょうね(白目)
Thommy Andersson / Wood Circles
1曲目の伸びやかなボーカルの第一声の鳴り響きから、一気に吸い込まれてしまう美しさ。
一歩ずつ一歩ずつ、森の中へゆっくりと足を踏み入れていくような、森の匂いがするようなアルバム。
今年、よく本を読むときに、小さな音でリピートでずっと掛け続けていた記憶がある。
Arlo Parks / Collapsed In Sunbeams
アーロ・パークスは去年シングルで耳にした「Black Dog」で一気に好きになり、いよいよ!なデビューアルバムもやっぱり最高で、今年何度となく聴き続けたアルバム。
柔らかいのだけど芯も感じられ、温かいのだけど爽やかな清涼感もある。
その一見相反する性格が同居するアーロ・パークスのサウンドは、繰り返し聴きたくなるポジティブさがあって、この身近さがとても気に入っている。
Scott Orr / Oh Man
フォーキーなシンガー・ソングライター、スコット・オアは、シルクのような滑らかな歌声と音数の少ない、終始控えめな繊細さが好みで、全てのアルバムが好きなアーティストなのだけど、今回のアルバムはこれぞ名作!な輝きを放っている。
ぜひ来日して欲しいアーティストの一人。
Amaro Freitas / Sankofa
ブラジルのピアニスト、アマーロ・フレイタスの新譜も凄かった。
前作『Rasif』も愛聴していたけど、今作の静と動とが入り交じるスリリングさは、ジャズという音楽の面白さというか豊かさのようなものを改めてこのアルバムを通じて感じる事ができた。
内省的な繊細な美しいメロディーが響いたと思えば、呪術的とすら言えるような怒涛の激しさで畳み掛け、複雑で力強い鍵盤の音に困惑したかと思えば、打って変わって神秘的なほど静かで美しい旋律が鳴り出す。
この渦に一度、生で聴いて飲み込まれてみたい。
Laufey & Philharmonia Orchestra / Let You Break My Heart Again
これだけはアルバムでなくシングル。
2021年の圧倒的ベストソングは、レイヴェイがロンドンのフィルハーモニア管弦楽団をバックにして歌うこの新曲「Let You Break My Heart Again」。
なんと言っても、この美しいオーケストラのアレンジが本当に魅惑的で、まるで往年のバート・バカラックが手掛けたような、上質で、洗練された、全人類に贈られたと言っても言いすぎでない程の、豊かな旋律と静かな余韻は、これ以上何を求めよう?な音楽の魅力が詰まっている。
50年前にリリースされたと言っても驚かず、または50年後にリリースされていても不思議でないほどの、タイムレスな音楽。
(おまけ)全てのアルバムから1曲ずつ選んだプレイリストも作ってみました。