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夏の課題指定図書:杉村年彦著『難関大に合格する英文解釈Code 70』(かんき出版)

この本は才能あふれる著者によるデビュー作です。講師オーディションで審査して以来、ずっと心待ちにしていた裏オーディション(出版という舞台)に杉村先生が見事に挑んでいらっしゃいました。

杉村年彦先生の本を紹介する日が来るとは、なんと光栄なことでしょうか。

かつて講師オーディションの審査の裏で僕は「きっとこの先生はさらに大きくなって、審査員やオーディション視聴者、そしてまだ見ぬ読者や生徒の度肝を抜くはず」と感じ取っていました。僕もそのお人柄と仕事ぶりに大いに感銘を受け、今ではお仕事での交流も生まれています。誠実な仕事ぶりはその著作にもいかんなく発揮されており、今回受講生各位や読者の皆さまにもぜひ夏期の特別課題として取り組んで欲しいなと思いました。

杉村先生が難関大受験生の英文解釈の本を出版されたのですから、紹介しないわけにはいきません。

かんき出版から出版された杉村年彦著『難関大に合格する 英文解釈 Code 70』

全部で60講あります。以下に感想と課題に取り組む際のレベル感を紹介していきます。また、次の記事では具体的な取り組み方の例を紹介します!夏の課題としてやってみたい人にオススメの記事です。


1. 全体の感想

(1)杉村先生の英文選定力が異次元


英文解釈をする時に「それが何の目的なのか?」を明確につかむことが大切です。文構造と意味の両輪をつかみ、それを和訳という形でアウトプットする練習を重ねる本書では、最近の傾向にそった英文を選んであります。

僕は英文選定の目が厳しい方なので、わりと参考書を読むときにそこで著者の英語センスを見極めてしまうのですが、杉村先生は本当に優れた英文選定の力を持っていらっしゃり、その分野を解説するのに珠玉の英文をこれでもかと選んでいます。杉村先生の研究力に裏打ちされたthe very best of all(最高の中の最高)をぜひ体感しましょう。

これは料理人にたとえれば、産地直送の食材にこだわるプロとも言え、僕がはじめに舌鼓を打ってしまったポイントなのです。

はじめから東大の問題を扱っているので、もしかすると「私にはレベルが高いかも/ 僕にはレベルが合わないかも」と思う読者もいるかもしれませんが、英文の絶妙な選定バランスにより、むしろ「やりがい」を感じるスタートになることでしょう。杉村先生が優しい口調で、最高峰を目指すには「英文解釈力」がカギになるよと語りかけてくるようです。どんなにレベルの高い大学の入試でも「基礎の基礎」が大事なんだよというメッセージが明確に伝わる配列になっています。

(2)思考のプロセスを紡いだ解説


英文解釈の解析結果を最初から見せるのではなく、あくまでも思考のプロセスを生徒につけさせる解説スキルを持っていらっしゃいます。僕も唸ったポイントはp. 52の第10講 離れたモノの見つけ方①です。これは一見すると受験生が文章をうまく解釈できないように思いますが、実はあるポイントを意識しないと英文の正しい読み方ができないところなのです。

これは難度の高い英文を読むときに必要になる観点ですが、我々講師はえてして副詞は文型で排除すべきものとして教えてしまいがちです。しかし、杉村先生の日頃の発信からも、副詞の重要性が語られています。そして僕自身も最近特に痛切に感じていることですが、副詞のカタマリや副詞の理解こそが、真の読解力をつける上で重要なのです。これは杉村先生の著作が数ある参考書の中でもしっかりと言語化してくれていることですから、この項を読んでみると、いかに杉村先生の解説スキルが卓越しているかがわかるはずです。

ここで注目したいポイントが杉村先生の「種明かし」という表現です。英文の謎を解明する名探偵のように、読者の抱く疑問をクリアにしていきます。

それでいて、杉村先生の解説は技魅せではありません。むしろ、泥臭いほどに現場で鍛えた「生徒の間違った読み方の発見」と「正しい読み方」への指導の経験が垣間見えます。そこでオススメしたいのは杉村先生のプロセスと自分の考えた思考のプロセスの比較です。自分の考えが誤った読みになっていた時は、丁寧に杉村先生の解説の思考のプロセスを読み解くようにしてください。産地直送の素材にこだわるだけではなく、杉村本では「咀嚼力」も鍛えられます。「読者に噛ませる(よく噛み、味わい、それを栄養に変える)」ことを重視していると思われます。どうしてもすぐに正解を知りたくなると思うのですが、英文を読むプロセスを理解することに注力してみてください。

(3)使用の際の注意点 

レベル感で言うと、本書のターゲットは私立だと早慶大の受験生や国立の難関レベルがターゲットです。解説自体が詳しいため、それ以外の志望校の人にも役立つことは間違いないのですが、もしレベルが合わないという場合には杉村先生の本と相性が良い本とつなげることでこの本の効果を十分発揮できるでしょう。例えば、僕のオススメはこちらです。同じ講師オーディションで杉村先生と熱戦を繰り広げた岡崎修平先生の『動画でわかる英文法(読解入門編)』です。(これは僕の『ゼロから覚醒 はじめよう英文法』でも推薦図書にしています)思考のプロセスを解説するという点で、両者は大変相性が良いのです。

さて、次のnoteの記事では杉村先生の新刊を夏の課題として取り組んで欲しい受験生たちにオススメの取り組み方を紹介します!

ぜひ、この夏の相棒にしてみてください!



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