僕がそんなにモテるわけ 第9話
ピピピ…
〇〇:…朝か
目覚めは特段良いわけではなかった
だが身体は軽かった
昨日里奈ちゃんとの会話の中で得たもの、これまで積み重ねてきたもの、全ての準備は出来ている。
心は…色々あるが…
いつもよりも早く出てCM撮影のスタジオへ向かうと
おはようございます!
〇〇:あ、
里奈:おはようございます!
〇〇:早いですね
里奈:ん?まぁいつも入りは早いですよ?
〇〇:何か手伝うことあります?
里奈:じゃあ控え室とこっちの待機テーブルに水とお茶置いて、テーブルにはそこのお菓子置いてください!
〇〇:わかりました。
プロに徹する里奈ちゃんは名前を呼べないくらいオーラが出ていた
だけども普段から出る優しさや気遣いはやはり監督という立場なのか周りがよく見えてるように見えた。
〇〇:ふぅ…
里奈:ありがとうございます!そろそろスタッフも揃うと思うので少し休みますか?
〇〇:もうそちらは大丈夫ですか?
里奈:あとはスタッフに任せますので
〇〇:じゃあコーヒー入れますか?
里奈:私お茶がいいです!いいですよ、淹れますよ?
〇〇:いやいや、これくらいやりますよー
里奈:いやいや私が!
その時手が触れた
〇〇:…
里奈:あ…
幸也:あってなに?
里奈:あ
〇〇:あ
幸也:なーに朝からラブラブしてんだよ笑
〇〇:ラブラブ?
里奈:準備ある程度終わったので休憩です!
幸也:今のところ見られてたらあとから来る3人に恨まれても仕方ないよな笑
久美:誰のこと?
幸也:…あなたですね1人は
〇〇:…おはよう
兎にも角にも目を合わせられなくて気づいた時には
久美:朝からなんだ!?私はなんで〇〇のイチャイチャを見せられてんだ!?ああ!?
首の神経がちぎれるほど体を揺さぶれていた
〜〜〜
里奈:と、なります
幸也:以上が進行スケジュールと先方の確認事項の共有でした。質問等は後に最終打合せで擦り合わせてお迎え出来るようにしましょう。よろしくお願いします。
よろしくお願いします
保乃:〇〇さん大丈夫ですか?なんか首曲がってますよ?
〇〇:え?あ…ね、寝違えて…
保乃:気をつけてくださいよ?〇〇さんがいないとWEB部門のことわからないんですから?
美玖:あのー
〇〇:え?
美玖:こっち向けますか?
〇〇:うーん…そっち向くと首が取れるかもしれないね…
どれだけ首は回らなくともまるでクローズのワンシーンに出てくるような人物の視線を久美から感じていた
幸也:容赦ないね全く笑
久美:別に
幸也:まぁ今日終わったら打ち上げね
久美:…行かない
幸也:少しは俺に傾けよ
久美:…誰があんたなんかに
里奈:〇〇さーん
〇〇:はい
里奈:WEB担当はオフショット撮影班と一緒に動いてください。それで編集も出来るところから始めてもらえれば助かります!
〇〇:わかりました
里奈:うちのスタッフがつくので特に何かするわけではないのですが見ながら編集するところとWEBで使うところをだいたいでいいので決めておいてください!
〇〇:はい
里奈:よろしくお願いします!私は戻りますね!
保乃:すごいですね里奈さん
〇〇:ん?
保乃:普段とまるで違う動きと言動…
〇〇:それが本当のリーダーなんだろうね…
幸也:まぁあれだけのタスクこなすには体2つくらい必要なんだろうけど里奈ちゃんはバイタリティの塊だから笑
美玖:凄い…
久美:〇〇
〇〇:え?
久美:あのさ…その…
〇〇:ど、どうしたの?そんな深刻な顔して…
久美:え?私なんか暗い?
〇〇:いや…いつもの久美の笑顔じゃないから…
久美:気のせいでしょ?
〇〇:いや、それは気のせいじゃない。ずっと見てるからわかるよ
久美:…なにそれ笑ストーカーみたいなこと言ってるよ〇〇笑
〇〇:え?え!?
久美:ぷっ…笑なんか元気出たわ〜じゃあ頑張るよ!
幸也:お前は本当に…罪なやつ笑
〇〇:罪なやつって?
幸也:無自覚な天然だよ笑
無自覚な天然
ずっと言われ続けてきたけど自分が何をどうなのかわからないものだ
結局僕は僕を好きになることも僕を知らないだけなのかも知らない
AD:まもなく入られまーす!
里奈:はーい!それでは皆さん今日も一日お願いします!
お願いしまーす!!
おはようございます!
…おはようございます
AD:ご紹介します!今回のCMの主役となります太田一平さんです!
太田:よろしくお願いします
マネ:一平、もっと愛想良く!
太田:お願いします
保乃:なんか気難しそうですね
幸也:まぁプロだから映像では変わるでしょ
マネ:あの
〇〇:はい?
マネ:今の挨拶部分カットでいいですか?
〇〇:え、あ、はい
マネ:よろしくお願いします
〇〇:…普通あんなこと言います?
編集:ん?まぁたまにあるよ、気にしないで仕事をしよう
〇〇:はぁ…
里奈:それじゃあリハーサルいきまーす!
違和感は違和感のままあることが多い
先ほどのマネージャーの発言やタレントの発言と周りにいる人に派生しやすくそれこそ空気感に変わっていく…
里奈:はい!OKでーす!リハ前に小休憩行きましょう!
久美:マネージャーさんすみませんお忙しいところ…
マネ:あ、あとででいいですか?
久美:あ、はい…
美玖:なんか凄い表と裏が…
〇〇:やっぱり?僕もそう思う…
里奈:まぁ噂通りって感じです笑
〇〇:え?里奈さんは知ってたんですか?
里奈:クライアントから言われた時はマジか!?って思ったくらい業界では有名なんですよ笑でもファンは多いし画面越しにはそれがわからないからね〜あ、戻りまーす笑
幸也:里奈ちゃんがプロとして接してるんだ、俺らもきちんとやろうぜ
〇〇:う、うん
保乃:そうですね
しかし違和感はそう簡単に拭えるものではない
雨は雨なのだ
里奈:うーん…もう一度いきましょうか?もう少しメリハリが欲しいです!
太田:…はぁ
幸也:ん?
太田:もういいすか?今4回目ですよ?普通ならもう終わってますよね?俺明日から海外で仕事なんすよ?なのになんでCMの撮影でこんなに時間取られなきゃいけないんすか?
里奈:それはいい作品を作るためで…
太田:もう十分撮れたんじゃないの?編集すればいいでしょ
里奈:そうではな…
それは違いますよ
里奈:え?
保乃:ん?
美玖:…へ?
久美:は?
幸也:…始まった笑
口が先に動いていた
〇〇:いい作品のために撮ってますよね?それは今が良くないからですよ?だから撮り直しているんです。それに気がつかないんですか?
あ、言ってしまった
クビだ
それでもいい
この瞬間を無駄にしたら終わりだ
〇〇:確かに編集で繋げばそれなりのものが出来ます。でもそれはあくまでもそれなりです。あなたへの評価もそれなりということです。それが自分でわからないならプロとしてどうなんですか?いや、人としてどうなんですか?
太田:テメェ…
〇〇:別に僕はこの場から居なくなっても会社をクビになっても構いません。どうぞお好きなように。ただし僕はあなたのやっていることに納得しません。永遠に。
太田:…
〇〇:僕は偉くもないし芸能界の関係者でもありません。ただ1人のここにいるスタッフとしてあなたがいい仕事をしていける人だとは思いません。だからこそ、今なら戻れます。もっと周りの人を見て感謝の気持ちを持ちましょう。そうすれば変われます。
太田:…
〇〇:…へ?
幸也:あの野郎…笑
保乃:あらま笑
美玖:おーっとと…
久美:そんなこと言う人だっけ?
里奈:……
〇〇:……失礼しました!!!!ダッ!!
太田:…
僕は外で頭を抱えていた
虚無感そして罪悪感、そして…
〇〇:クビだクビだクビだクビだクビだクビだクビ…
ポン…
幸也:やりやがったなお前は笑
〇〇:クビだぁぁぁぁ!!!!
幸也:そうなったら一緒に辞めてやるよ笑
〇〇:え?本当に?
幸也:まぁ嘘だけどな笑
幸也:幸也ああああああああ!!!!
あの…
幸也:ん?
美玖:あの〇〇さん
〇〇:え?
美玖:中で皆さんがお待ちです…
〇〇:え"
幸也:契約破棄で違約金かな笑
〇〇:…
歩いていく足がおぼつかない
そしてこの扉の先にはきっと悪魔のような光景が待っているとなるともはや今すぐにでも逃亡をはかりたかった
ガチャ…
〇〇:……
里奈:……
〇〇:…あの
里奈:あなたさっき感謝の気持ちを持ちましょうって言いましたよね?
〇〇:…はい
里奈:……ありがとう
〇〇:…え?
マネ:この度はうちのタレントのことを叱っていただきありがとうございました
〇〇:へ?
マネ:私達はタレント第一主義を履き違えていたのかもしれません。怒らないのではなくいつの間にか怒れなくなっていました。彼の態度は改めなければならないところを…ありがとうございました!
太田:…ありがとうございます
〇〇:…うぇ?
里奈:さぁ!ひとつのチームになれました!ここからはみんなの力でいい作品を作りましょう!
〇〇:…どういうこと?
久美:今起きてることがそのまま答えだよ
幸也:お前の勇気で変わったんだよ、気づけよ
〇〇:……
保乃:〇〇さん
〇〇:ほ、保乃さん
保乃:凄い素敵な言葉でしたよ
〇〇:え?
保乃:ただ少し空気読んで言った方が良かったですね笑
〇〇:え、なんか…ごめんなさい…
美玖:かっこよかったです!
里奈:そこうるさい!!はい!やりますよ!!
〜〜〜
人は変わらない
でも誰かが誰かのために動けば何かを変えることは出来るかもしれない
きっかけや優しさとは理屈では表せない
行動でしかわからない
〇〇:ふぅ…
里奈:お疲れ様でしたー!
〇〇:あの…僕だけ人使い荒くないですか?
里奈:一時的にでも空気を悪くしたのはどこの誰ですか?
〇〇:…すみません
里奈:あっはっは笑冗談ですよ笑でも手伝ってくれてありがとうございます!
〇〇:もうみんな帰りましたよ?
里奈:ほい!お茶!
〇〇:ありがとうございます!ゴクゴク…美味え!
里奈:ふふふ…
〇〇:ん?
里奈:やっぱ〇〇さん可愛いですよ笑
〇〇:え?
里奈:食べちゃいたい笑
〇〇:た、食べる?
里奈:うん
〇〇:意味はわからないけど…
里奈:わからせてあげる!
チュッ
〇〇:…へ?
里奈:…
〇〇:…
里奈:ひとつ教えてあげようかな
〇〇:…
里奈:ガルフって知ってる?
〇〇:…は?は!?
里奈:あのねぇ〜私はあなたのことをサポートする係なの!
〇〇:はあああああああああああ!!!!??
パチン!
ガルフ:ガハハハハ!!!
里奈:久しぶり〜!
〇〇:はあああああ!!??
里奈:まず私が動けていることに不思議がりなさい笑
〇〇:え?じゃあガルフは里奈さんの里奈さんで里奈さんはガルフ??
ガルフ:意味わからんぞ
〇〇:え?え?え?えーっと…
里奈:良かったね!私のこと好きになったらダメだったんだよ笑
〇〇:どういうことだぁああ!!!!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?