ピアノとソナタ 第7話
学園祭前日
美空:おー〇〇似合ってるじゃん!
〇〇:そ、そうかな?
美空:総馬昔からこういうの着てたからだね〜
ガラガラガラ
瑛紗:おー…って…〇〇…
〇〇:な、なに?
瑛紗:うん!似合ってる!カッコいい!
美空:でしょ!!?〇〇ってこういう執事みたいな格好似合うんだよ!
瑛紗:背高いし顔も悪くないし…これでモテないの…やっぱ性格だね!
〇〇:池田さん…なんで必ず最後落とすの…
美空:ぷっ…くくくく…
ガラガラガラ
総馬:おーい!昼だし腹減ったから飯買いに行こうぜって〇〇…お前…カッコいいんだな…
〇〇:ねぇ総馬…この格好で買い物行くの??
ーー
ウィーン
店員:ありがとうございました!
〇〇:店員さんめちゃくちゃ笑ってたけど…
総馬:そりゃあいきなりこんな服装してたらイケメンでも笑うよ笑
瑛紗:私はいいと思うけどね笑
〇〇:笑いながら言われても…
美空:明日は総馬、やっぱり少しも顔出せないよね?
総馬:午前中みっちり練習だしなぁ…美空の巫女さん見たいんだけどなぁ…
瑛紗:私と美空どっちのが見たいの?
総馬:んなもん美空だけだよ俺は
瑛紗:こういうこと言えなきゃダメだよ〇〇?ムカつくけどね!!!
総馬:最後が余計だよ!!
美空:ねぇ…〇〇…
〇〇:なに?
美空:あとで話せない?
〇〇:う、うん
美空は僕にとっては中学からの友人
そして過去を知る人
だけども…
僕は彼女のことを知らない
僕は逃げてきたのだ
自分の人生から
他人に関わることも
ーー
美空:やっと終わり見えてきたから少し出てきていい?
瑛紗:いいよ?
美空:ありがとう!〇〇行くよ!
〇〇:あ、うん、
瑛紗:……
総馬:心配か?
瑛紗:ううん、なんか…最近わかんなくて
総馬:お前のことは俺にはわかってやれない
瑛紗:うん…
総馬:寄り添うのはあいつしかいない
瑛紗:うん
総馬:結局あいつが変わるしかないんだよ
瑛紗:それでも…やっぱり伝えられないのは…
総馬:美空はおそらく…俺とお前の秘密に対してなにか思ってるんだろうな
瑛紗:……
総馬:どうするかは瑛紗次第だ
ーー
美空:こうやって〇〇と2人で話すの中学以来かな?
〇〇:そうかもね、急にどうしたの?
美空:ねぇ…〇〇は瑛紗のこと好き?
〇〇:え?え?え…
美空:どうなの?
〇〇:好き…がわからない…うん、好きってなに?
美空:一緒に居て楽しい?
〇〇:うん…4人でいる時楽しい…
美空:違う!2人でいる時の話してるの!!
〇〇:……
美空:ごめん…最近総馬が瑛紗と話してる時楽しそうで…その時の目が…なんか私とは違う目で見てて…
〇〇:……
美空:焦っちゃいけないし…瑛紗がそういう子じゃないのはわかってる…けども…私自信がないの…高校に入って…あっという間に時間だけ過ぎてる気がして…総馬が…離れてる気がして仕方がないの…ごめん…だからといって〇〇に瑛紗を押し付けるわけじゃないの…
〇〇:うん…
美空:〇〇の気持ちが知りたいの…
〇〇:僕は…ごめん…それでもわからない…
美空:……
〇〇:ただ…今言えるのは…美空が総馬のことを好きなら…それに応えくれるのが総馬だと思う…あいつは…そういう人だから
美空:うん…うん…グスッ
総馬:……
瑛紗:……
総馬:真実ってこういう時残酷だよな…
瑛紗:それでも…
総馬:今は俺の役目でも無いよ
瑛紗:……
総馬:戻って俺らはなにも知らなかったことにしよう
瑛紗:うん
ーー
ガラガラガラ
総馬:おう!遅いぞ!
美空:ごめんごめん!〇〇が意気地無しだったから!
〇〇:え、え、えー??
瑛紗:美空にもそんなダメなの?ダメな子だね〜
〇〇:ご、ごめん…
美空:準備も片付けも大丈夫そうだね〜じゃあみんなお疲れ様!
お疲れ様!!
総馬:明日頑張ろうな!
瑛紗:総馬はいないでしょ!!?
総馬:俺は軽音部頑張るんだよ!!
〇〇:…ふぅ
瑛紗:ちょっといい?
〇〇:え?うん…
総馬:美空ちょっとこっち
美空:え?
総馬:座って
美空:うん…
総馬:俺は美空に1つ…いや、2つだな、隠し事してる。1つはまだ言えない、それはとある事情がある。もう1つはね
美空:……
総馬:俺は美空のことが好きだよ?なにがあっても
美空:……
総馬:瑛紗はああいう奴だからな笑それに…うん、やっぱいいや…
美空:なに?
総馬:なに思ったかはわからない、でもそれが話せるようになった時、俺らはまた〇〇を支えなきゃいけなくなるかもしれない
美空:え?なんで〇〇?意味わからない…
総馬:これだけは言っておくよ…瑛紗は…
瑛紗:……
この空気は初めてだ
重い
彼女のいつもの空気じゃない
逃げたい
でも…
瑛紗:ねぇ〇〇
〇〇:は、はい…
瑛紗:なーにそんな腑抜けた顔してるの?
〇〇:え?
瑛紗:明日学園祭なんだから楽しまないと!
〇〇:え、あ、うん?
瑛紗:わかる?楽しむってことがなにかを?
〇〇:わからない…
ムニュッ
〇〇:ふぇっ?まちゃじぇしゅか?
瑛紗:ピアノ弾いてるときはあんなに楽しそうなのになんでもっと自分の人生を楽しめないの?いいんだよ?君は自由なんだから
〇〇:……
瑛紗:ピアノも自由、絵も自由、私も自由、だから〇〇も自由…恋も自由
〇〇:…え?
瑛紗:だから…明日出し物の時間以外は私といること
〇〇:え?え?
瑛紗:拒否権なんて無いから?ね?楽しも?
こういう時の彼女の笑顔にドキりとしてしまう
彼女は僕に光をくれているのに
僕は一体なにをあげれるのだろう
恋も愛もわからない
与えられるものなんて限られてる
僕は逃げていく人生を変えていかなければならない
彼女のためにも
ーーー
学園祭当日
美空:みんな着替えた!?
〇〇:ちょっと!!待って!!
美空:早くして!って瑛紗もいない?
〇〇:よし終わった!
ガラガラ
〇〇:え…
瑛紗:に、似合う??
美空:似合うよ!可愛い!
そこにいる彼女は今まで見たこともないくらい恥ずかしがっていたがその姿が僕には綺麗すぎて目を逸らした
瑛紗:なんか言ってよ…
〇〇:うん…可愛い…
瑛紗:…初めて可愛いって言ったね
〇〇:…
ガラガラガラ!
総馬:あ!居た!〇〇!
〇〇:え?なに?なに?
バッ!
総馬:お前に頼みが…いや…一生の頼みだ…
〇〇:なに?なんで土下座…
総馬:キーボードを…弾いてくれ…
〇〇:え…
総馬:バンドのやつが体調不良で…お前しかもういない…
〇〇:僕は…
総馬:まずは来てくれ!
〇〇:え!ちょっ!
美空:ど、どうしよう…
瑛紗:とりあえず行ってくる!
美空:え!?瑛紗!!?
ーー
〇〇:…なんで?
総馬:3曲だから頼む!
〇〇:いや、僕は…
総馬:…クラシックじゃないからなんとか…とりあえずこの曲聴いて覚えてくれ!
ーー
〇〇:……♪
トントン
瑛紗:めちゃくちゃ追い込まれた顔してる笑
〇〇:笑うなら笑えよ…
瑛紗:本当に弾くの?
〇〇:あそこまで言われたら…
瑛紗:本当に弾けるの?
〇〇:…わからない
瑛紗:……
〇〇:でも…総馬が…僕は…やるしかないんだ…
瑛紗:なら…私のために弾いて?
〇〇:へ?
瑛紗:あなたは私のためなら弾くでしょ?
〇〇:それは…半ば強制的に…
瑛紗:それでも〇〇は私のためなら怖くないでしょ?
〇〇:……
ギュッ
瑛紗:あなたなら出来る…私のためなら…
〇〇:わ、わかったから…手を離してくれないかな…練習出来ない…
瑛紗:あ、ごめん!耳コピで覚えられるの??
〇〇:まぁ、これくらいなら…
瑛紗:さすが…
〇〇:やるしかないもん…
瑛紗:巫女の姿で言う台詞じゃないけど…気合い入れなきゃしめるから
〇〇:…神様に失礼だよ…
瑛紗:ふふふ笑
ーーー
〇〇:……
総馬:本当にいけるのか?
〇〇:わからないよ…でも…池田さんが…弾けって言うから…やるしかないんだ…時間が無いから…
総馬:ふっ笑
〇〇:なに?
総馬:いや?お前はやっぱり瑛紗しか勝たんだな笑
〇〇:え?
ザワザワ
瑛紗:さすがにこの格好は恥ずかしくない?
美空:あの2人が出るなら絶対見ないとでしょ!?
瑛紗:そうだけど…
美空:ねぇ…1つだけ聞いてもいい?
瑛紗:うん?
美空:総馬のこと好き?
瑛紗:好きだよ?友達としてね!絶対彼氏としては無理!!…あ
美空:ごめん…彼女で…
瑛紗:言いすぎた…でも彼氏にしたいとかはない!
美空:そうなんだ…
瑛紗:私はね〜今自分の恋が楽しいんだ〜
美空:それって…
ブー
パチパチバチ
総馬:よし、最高の時間を過ごすぞ!
バンド:おー!!
〇〇:ふぅ…
総馬:ポン…頼むぞ
〇〇:うん…
美空:きた…
瑛紗:……
ドクンドクン…
久しぶりのこの鼓動…
僕にはピアノを弾くことは…
キーボードだ…ここは違う…
座ってしまった…
もう後戻りは…
あなたは弾けない…
自由に弾いてはいけない…
うるさい…
言うことを聞きなさい…
うるさい…
あなたは…
こらー!!しっかりしろバカ〇〇!!
総馬:え?
〇〇:え?
美空:瑛紗…メガホンはやりすぎ!
〇〇:…プッ笑…本当にそなたは…笑
大丈夫だ…彼女のために…
そして…今出来ることを…
総馬:…コクン
〇〇:…コクン
Official髭男dism/Universe
こんな大勢で
しかも全く違うジャンル
でもここで弾けてる…
ザワザワ…
凄い…
バンドのレベルも高いけど…
ピアノの子…
美空:総馬…〇〇…
瑛紗:ウッ…ヒグッ…エッ…
美空:瑛紗…
なぜかわからない
理想とか現実とか
過去とか未来とか
どうでもよかった
今出来ることだけ
自分がやれること
それは彼女のため
総馬:(おいおい、主役はお前じゃないんだぞ笑)
〇〇:(ごめん総馬…笑)
美空:笑ってる2人…
瑛紗:……
美空:見てあげて…
瑛紗:いいの…目を閉じれば…感じれるの…音を…いつまでも聴いてたいの…彼の…音を…グスッ…
スキマスイッチ/全力少年
僕は一体なにから逃げてたんだろう
そう思ってしまうほど楽しい時間だ
ただ…僕の弾いてるピアノじゃない
それでも、この空間や時間が好きだ
ウワアア!!
なにしてるの…あいつ…
ーーーーー
パチパチッ
総馬:ほれ、ジュース
〇〇:総馬…ありがとう
総馬:お礼言うのはこっち、あ、でも一生のお願い使っちまったわ笑
〇〇:もうやらないよ笑
総馬:うちのキーボードより上手いとか言われてたけど当たり前だわな笑
〇〇:失礼だよそれは笑
総馬:でも…嬉しかった…
〇〇:うん
総馬:後夜祭の火って切ないよなぁ
〇〇:優秀賞取れたんだからもっと喜びなよ笑
総馬:お前に全部持っていかれたからな…来年は頑張るよ!
美空:お疲れー!
総馬:美空!どうだった?俺らの演奏は!!?
美空:瑛紗が泣いちゃって笑
〇〇:え?
総馬:そんなに俺の美声が良かったのか!!
美空:んなわけないでしょ笑
総馬:それは傷つくぞ…うん…
美空:〇〇…行っておいで
〇〇:どこに?
美空:瑛紗…教室にいるから…
〇〇:あ、うん…行ってくるね
総馬:やっぱあいつは不器用というか…拗らせ男子だよな笑
美空:なんか…安心した…笑
ーーーー
ガラガラガラ
〇〇:……
瑛紗:……
〇〇:月が…綺麗だね…
瑛紗:それ…夏目漱石が作った告白だよ笑
〇〇:うん、知ってる笑
瑛紗:なんか悔しかった…
〇〇:なんで?
瑛紗:私しか聞いてなかったピアノを聴かせてしまったのが悔しい笑
〇〇:あれは君に聴かせてるピアノじゃないよ笑
瑛紗:それでも…人前で弾けたね…
〇〇:無我夢中だったし…それに…池田さんが叫んでくれなかったら…
瑛紗:…ねぇ…もし…このまま弾いてって言ったらどうする?
〇〇:わかんないなぁ…でも…前よりは弾きたいかな…それでも…聴かせたいのはやっぱり池田さん…
ガバッ
〇〇:え?
瑛紗:ねぇ〇〇、あと3分だけこうしててもいい?
〇〇:3分でいいの?本当に?
瑛紗:そんなあざといこと言うんだ〜
彼女から抱きしめられた
僕はそっと優しく抱きしめ返した
ずっとこうしていられることを
願わずにはいられなかった
ーーーーー
総馬:瑛紗は…〇〇しかいないんだよ
美空:どうして?
総馬:瑛紗は〇〇のことを知ってるから
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