(創作物語)『明日への貴方へ』 その12

前回までのあらすじ。
ウォルトンとサーナは、ブロウスが独自に開発した装置で電脳空間に、謎の剣士と盗賊として入っていた。彼らは行く先々でナディア達を助ける。ナディア達はアレン博士の元で電脳空間内にあるモダンな街並みに入るが、そこには魔女ドリナ(悪性)がいた。ナディア達の邪魔をするために、影をよこし、戦闘になるが、またも謎の剣士と盗賊に助けられる。
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 アレン博士「では、今日はモダンな街並みで魔女ドリナを再び調査してみてくれたまえ」

 電脳空間に入るナディアとルシード。モダンな街並みの遊園地近くにアムルが暇そうにたむろしている。

 アムル「よぉ、ナディア。あまりにも暇だったから、こいつと魔法の練習でもしていたぜ。見てくれよ、こいつどんどん成長していくし、ポケモンみたいで楽しいな!」

 見れば、あんなに小さな小竜だったカスパルは人間の背丈位に成長していた。立派な大人のドラゴンである。少しばかり言葉も話せるようになったみたいだ。

 カスパル(中竜)「はじめまして。カスパルといいます。よろしくです」

 ナディア「こちらこそよろしくね!」

 ルシードは話し相手が増えたことが本当にうれしそうだ。

 アムル「さて、これからどうする?このテーマパークでも散策してみるか?もし、この前みたいに影に出会っても負ける気がしないがな」

 ナディア「過信は禁物よ。後でアレン博士のモニターで見たのだけど、私たちの影が気になることを言っていたわ。謎の剣士と盗賊は、『新型か?』って。何なのかしら、新型って」

 アムル「俺たちは旧型って事じゃないのか?古いとは、言いがかりも良い所だぜ」

 ルシード「魔女ドリナを探しに行こうよ~。カスパルもやる気だよ」

 カスパルは1人先にテーマパークの奥へと行ってしまう。慌てて追いかけるナディア達。

 アトラクションに入り、ジェットコースターのようなものに乗り込む。すると、そこには魔女ドリナがいた。どうやら、配下のあの影もいるようだ。

 アムル(影)「またやられに来たのか。懲りないね、お前ら」

 ナディア(影)「しょうがないわね、もう一度遊んであげるわ」

 ジェットコースターが動き始め、宇宙の星々が輝く夜空の風景に辺りは変わる。魔女は影をもう一人出した。ルシード(影)である。

 ルシード(影)は大きな声を出す。空圧で周りの物が吹き飛ぶほどの威力だ。

 ルシード「あいつは僕に任せて」

 声vs声の音圧バトル。魔法vs魔法、それぞれがぶつかり合い、接戦となる。

 

 その状況を遠くから見ていた謎の剣士と盗賊。

 謎の盗賊「どうする?手助けする?」

 謎の剣士「いや、今日の敵に勝てなければ、先々苦しむことになるだろうから」

 2人は敢えて見守ることにした。

 状況が不利と見た魔女ドリナ(悪性)は分が悪いとみて、ここもこの場から逃走する。

 かれら影を倒したナディア達。影の後には、小さな玉が落ちている。手に取ると、ナディア達に吸収され、新たな力を得たような気がする。

 

 一方、生体部門のウォルトンは再びブロウスに呼び出されることに。

 ブロウス「ついにアレン博士から試作品が来た。こいつは実機を電脳空間に送り込む戦法だ。」

 見るとRGHJ-1800の試作機がすでに出来上がって後は接続テストを行う段階である。ブロウスは電脳空間につなぎ、実際にRGHJ-1800が電脳空間内に表示されるかモニタで確認を行う。RGHJ-1800は無事、電脳空間に転送された。

 ブロウス「ついにやったな。アレン博士よりもはやく電脳空間に実機を転送に成功だ!この転送装置は、お前に預ける。くれぐれも無くすなよ」

 転送装置を受け取るウォルトン。その転送装置をサーナに見せたくて連絡しようとしたとき、サーナから緊急連絡が入ってきた。

 サーナ「ついに見つけたわよ!あのアムルとか言う少年の本体!今すぐ会える?」

 サーナは急を要している様子であった。

 サーナ「この前、研究棟に特殊な部品を取りに行った時、偶然ある部屋の一室を覗いたら、アムルにそっくりな少年が円柱のガラスに入っていたのを見たの」

 サーナは証拠の写真をウォルトンに見せる。その写真には眠っているようにも見えるアムルの姿が写っていた。ウォルトンとサーナは適当にこじつけて、急いでその部屋に向かう。見ればなるほど確かにその部屋の円柱状の装置の中にはアムルそっくりの少年がいる。

 ウォルトン「まだしばらく様子を見る必要があるな」

 サーナ「ええ。誰がこの件に関わっているか、調べなきゃ」

 2人はこの部屋に見つからない監視カメラを設置して部屋をあとにする。

 

 しばらくして、研究棟のアムルの本体が保管されている一室のドアが開く。カツカツした靴の音を響かせている。足音から判断するに、どうやらハイヒールを履いているようだ。

 リーミラ「私の可愛い坊や。こうして見ているだけでも、幸せだわ。もっとあなたのデータを頂戴。そしていずれは・・・・・できるようになるから」

 ウォルトンとサーナがモニターする中、ブロウスがウォルトンの家にやってくる。そのモニターを見るや否や、叫び声を出すブロウス。

 ブロウス「お前!この映像は、何処の映像なんだ?」

 ウォルトンとサーナは堪忍したらしく、正直に話し始める。研究棟の一室でアムルの本体にソックリな者を見つけたこと、この部屋に監視カメラを設置した事、そして今目の前に見知らぬ女性がアムルを利用しようとしていること。

 ブロウス「この女は、リーミラ。別れた妻だ。でもなぜここにいる?そして、あの少年に何をしようとしているのだ?」

 リーミラは、研究棟のパソコンを立ち上げ、何やらデータを打ち込んでいる。電脳空間にどうやらアクセスする気でいるらしい。

 リーミラ「もう少しよ。もう少しで、電脳空間の人間をこちらの現実世界へ引き戻せる。そして、アムルは最強の魔法使いとなるわ。その後は、私の思うつぼ」

 
 その頃、アレン博士の所では、モニタに映るアムルに変化が現れ始めていた。

 ナディア「ねぇ、アムル、どうしたの?体調が悪いの?」
 
 全く動かなくなるアムル。しょうがないので、アムルを背負うルシード。心配そうにカスパルも手を貸す。

 アレン博士「一体どうしたというのだ?アムルの本体はまだこちら側では見つかっていないはず。ん?あの瘴気は何だ?」

 アムルの身体の周りから瘴気が出はじめ、徐々に目が赤く染まる。

 アムル「うぅぅぅぅぅ・・・・・・うがーーーーー!!!!!」

 頭を抱えてもがき苦しむアムル。ナディア達はどうすることも出来ずにただただ見守るだけ。次の瞬間、アムルは電脳空間から消え去った。

 すぐにアレン博士はナディア達を現実世界に引き戻し、研究棟全域に警報を発令する。ナディア、ルシード、そして電脳空間内のみに存在するはずだったカスパル(中竜)までいる。

 ナディア「あなた、こっちの世界に存在できるの?!」

 カスパル(中竜)「どうやら、電脳世界のアムルは、現実世界に出てきたようです。私がこうしてここにいるのですから」

 

 その頃、研究棟の一室で、円柱のガラスに収められたアムル本体を見るもうひとりのアムルがいる。その目は赤く光り、瘴気を失っている。

 リーミラ「うふふ、いいわ。思い通りにこちらの現実の世界に出て来たわね。どう?世間の空気は?電脳空間と違って、美味しいでしょ?」

 アムル「うぅぅぅぅ・・・・・こいつと・・・・・・合体する」

 アムルは円柱状のガラスに収められたアムル本体を指さし、ニヤリと笑う。

 リーミラ「それはまだ駄目よ。あの魔女ドリナをこちらの現実の世界に呼ぶことが、私の本当の目的。貴方はそのきっかけ。それまで、あなたに活躍してもらうわよ」

 

 アレン博士は緊急会議を開く。電脳空間の人間が現実世界に出てきたともすれば、大問題である。

 アレン博士「・・・・・というわけである。アムルという少年を捕らえるのだ」

 ザカロン「電脳空間から現実の世界に出て来たなんて、聞いたこと無い。証拠を見せよ」

 ブロウス「私は、アムル捕獲には反対だ。アムルという少年を泳がせて本当の黒幕の目的を探るべきだと思うが?」

 アレン博士「ブロウス君、君は最近私の許可もなしに独自の装置を開発し電脳空間へアクセスしていると聞くが?」

 その会議に、ウォルトンとサーナが飛び入りで参加する。

 ウォルトン「この女がアムルを電脳空間から現実世界に引っ張り出した人物だ」

 ザカロン「この女は・・・確かリーミラ」

 アレン博士「昔の私情を挟むべきではない。ブロウス君。君の元奥さんじゃないか」

 その時、会議室のドアをけ破る音がした。煙の中から現れるリーミラと赤い目のアムル。

 リーミラ「おや、皆さんお集まりなのね。丁度いいわ。私の可愛い坊やのアムル(赤目)を紹介するわね」

 アムル(赤目)は魔法を唱え、皆を身動き出来なくする。

 アレン博士「ぐ・・・・・何・・・・を・・・・する・・・つもり・・・・だ」

 そこへ駆けつけてくるナディアとルシード。アムルが魔法をナディア達にかけるが、効かない。

 ナディア「ルシード、あれはもう昔のアムルじゃない!声で、攻撃して!!!」

 ルシードはためらうが、思いっきり声をアムル(赤目)に対して放つ。凄まじい爆風がアムルを襲う。アムル(赤目)は咄嗟にガードし、数メートル引きさがったところで耐える。

 ナディア「これならどう?!」

 ナディアは渾身の一撃をアムルに対してお見舞いするが、ガードされてしまう。今度はターゲットをルシードに切り替えたアムル(赤目)。極大の魔法攻撃をルシードに放つ。

 アムル(赤目)「ルシ・・・・・・・ード!!!」

 ルシード「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 目を閉じて受け身を取るルシード。が、ルシードの前にはあのカスパル(中竜)がいた。

 カスパル(中竜)「自分も電脳空間から出てきたんだ。目を覚ませ!アムル!!!」

 カスパルはアムル(赤目)の極大魔法を押し返し、中和する。

 リーミラ「ここはひとまず、退散ね。行くわよアムル坊や」

 そう言うと、リーミラとアムル(赤目)は研究棟の方へ消えていった。



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登場人物

 ナディア:体は機械、脳は人間のアンドロイド。
 特技:〇〇、高速移動

 ルシード:正体不明の少年
 特技:似顔絵書き、高速移動、生命反応探知、声

 アレン博士:脳科学者で、偏屈者。自身で、超巨大な設備を持つ。

 アムル:アレン博士の所で電脳世界に入った時、ルシードが出会った少年。200年前、脳移植時に事故が起こり、電脳空間に閉じ込められた少年。母は、魔女ドリナ。
 特技:電脳空間時に魔法使用可能

 ザカロン:アレン博士の研究所の製造部門長。

 サーナ:製造部門で働く女性社員。情報通。彼氏はウォルトン。

 ウォルトン:生体部門で働く男性社員。彼女はサーナ。

 ブロウス:生体部門の部門長。アレン博士とは別に、独自に電脳空間に入れる装置を開発した秀才。アレン博士とは対立している模様。

 リーミラ:ブロウスの元妻。研究棟の一室で、アムルの本体を隔離し、個人的にアムルのデータを何かに利用しようとしていた。本当の目的は魔女ドリナを電脳空間から現実世界へと出す計画を練っている。



アレン博士の研究所

 研究棟:身体に電極をつなぎ、電脳空間へと飛べる装置がある。電脳空間の出来事はモニターで閲覧可能。また、日々進化する技術の推移を集めた頭脳集団がいる部門。とある部屋の一角に、アムルの本体が保管されているのをサーナが偶然見つける。

 製造部門:最新のAIやロボットを製作する部門。

 生体部門:人間の生体と機械を繋ぐことを目的とする部門。

 スクラップ置き場:廃材を重機で押しつぶし、再利用する場所。

 生活棟:研究者や製造スタッフが寝泊まりできるくらいの施設。一つの町と言ってもいいほどの広さがある。



製造しているアンドロイドや、アイテムなど

 RGHJ-1700:新モデルで、旧タイプより130%性能がアップしている。

 RGHJ-1800:1700の後継機種のアンドロイド。場所を選ばずに電脳空間に実体を移動できる機能が搭載される予定。

 転送装置:現実世界の実機を電脳空間に直接転送できる装置。ブロウスからウォルトンに渡される。



アレン博士の研究所での謎

 生体部門:ウォルトンが発見した、分厚いガラスで何重にも守られた部屋に冷凍保存された男女一対の人間。

 研究棟の奥の部屋:円柱状のガラスの装置内にアムルの本体と思われるものを発見。サーナが偶然見つける。ウォルトンとサーナは、研究棟の奥の部屋に監視カメラを設置。



アムルが捕らわれている電脳世界

 魔女ドリナ:アムルを電脳空間に閉じ込めた魔女。普段いつも自分の家で、まじないの薬を調合しているが、3日に1回、近くの森、廃墟へ出かける。息子は、アムル。師匠は、水の神殿にいるアルバーノ

 森:魔女ドリナが3日に1回訪れる森。一つ目の巨人サイクロプスが住むとされる地域。

 廃墟:魔女ドリアが3日に1回訪れる廃墟。凶悪なドラゴンが住むとされる地域。

 水の神殿:アムルが発見した電脳世界の新地域。アルバーノが守護している聖域。

 砂漠の遺跡:アムルが発見した電脳世界の新地域。

 モダンな街並み:アムルが発見した電脳世界の新地域。


 魔女ドリナ(悪性):魔女ドリナのもう片方の一面。何故悪性に変わるかは不明。
 特技:召喚魔法

 謎の剣士:砂漠の遺跡に向かうナディア達をサイクロプスから守った剣士。現実世界のウォルトン。

 謎の盗賊:剣士と共にいた盗賊。現実世界のサーナ。

 アルバーノ:初老の水の神殿の守護者。ナディア達と出会ったあとは、彼らを支援することに。弟子は、魔女ドリナ。

 カスパル(小竜):アルバーノがアムルに手渡した小さな竜。アムルの魔力に比例して強くなる。モダンな街並みのテーマパークで鍛錬することにより、中竜となる。

 ナディア(影):魔女ドリナ(悪性)が生み出したナディアそっくりの影。テーマパークでナディアたちに倒され、ナディアの力となる。

 アムル(影):魔女ドリナ(悪性)が生み出したアムルそっくりの影。テーマパークでアムル達に倒され、アムルの力となる。

 ルシード(影):魔女ドリナ(悪性)が生み出したルシードそっくりの影。テーマパークでルシード達に倒され、ルシードの力となる。





 電脳世界でのアイテム等

 古い書物:砂漠の遺跡の最深部にあった書物。各地域の成り立ちなど、この電脳世界での歴史が書かれている。水の神殿に入る時に必要。

 光る石:水の神殿に行くときに行商人から購入した奇麗な石。

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