(創作物語)『明日への貴方へ』 その6

前回までのあらすじ。
電脳空間でルシードとナディアは、1人の少年アムルに出会う。彼はバラの針に捕らわれ魔女の家にあるまじないの薬で自分を解放してほしいという。魔女の所に向かうルシードとナディア。魔女の似顔絵をアムルに見せると意外な言葉が返ってくるが、果たして・・・・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 現実世界に戻ったナディアとルシード。眠りに付けないナディアはルシードに話しかける。
 
 ナディア「ねぇ、ルシード、まだ起きてる?あ、あなた、眠らないんだね」

 ルシード「うん、僕は眠らないから」

 ナディア「電脳空間でのあのアムルの言葉だけど、どう思う?」

 ルシード「アムルは、自分のお母さんだって言っていた」

 ナディア「でも、なぜ電脳空間にアムルのお母さんがいたんだろうね。親の顔を間違えるはずもないし・・・・」

 ルシード「僕も、お母さんの顔の似顔絵、書けるよ!」

 ナディア「そうだよね。間違えるはずもないわよね。何かが引っ掛かるの・・・・・今回の出来事・・・・」

 考えているうちに、いつしか深い眠りへと落ちてゆくナディア。

 

 翌日、アレン博士は再びナディアとルシードに電極を付け、電脳空間へと送り込む。電脳空間では、あのアレンが再びバラの針に捕らえられている。

 ナディア「ゴメン。突然いなくなってしまって」

 アムル「やあ、来てくれてありがとう、それにルシードも」

 ナディア「この似顔絵、お母さんって言ったわね。間違いない?」

 アムルは深くうなずき、ナディアは質問を変える。

 ナディア「アムルの小さい時の記憶を辿ってほしいの」

 アムルはうつ向き、小さな声で話し始める。食い入るようにルシードも聴く体制に入る。

 アムル「あれは、僕が生まれて間もない頃。僕は手足が全く動かせなかった。未熟児だったんだ。医者たちの懸命の努力も叶わず、そして僕は、脳科学センターに運ばれた。脳科学センターでは、機械への脳移植を数多く成功させ、アンドロイドとしての生命活動が約束されたはずだった」

 ナディア「だった・・・?」

 アムル「脳科学センターでの突然の電源トラブル。丁度僕の脳移植が行われている最中だった。手術は半分成功、半分失敗となり、僕の意識は無くなった。目が覚めたら、この電脳空間でこの状態だったんだ」

 ルシードの目から、涙がこぼれる。

 ルシード「・・・・アムル、かわいそう・・・・・友達助けたい!」

 ナディア「そうね、助けよう。アムル、私たちはあなたの事は絶対に見捨てないわ。必ず、助けると約束するから」

 ルシードは涙をぬぐい、立ち上がる。

 ルシード「アムルのお母さんに、会いに行こうよ。確かめなきゃ!隠れる必要なんて無いよ!」

 ナディア「そうね、アムルのお母さんなら悪い人じゃないわ。ましてや、魔女ではないはず」

 今度は、堂々と魔女ドリナに会いに行くと決意したナディアとルシード。

 再び、地図で魔女ドリナの家に行くことに。家に着くと、ちょうど誰もいなかった。どうやら、外出らしい。家に入り、まじないの薬を探すナディアとルシード。探すと、ちょうど調理場の近くに薬らしきものがあった。その薬っを手に取り、魔女ドリナの家を出ようとしたとき、出くわしてしまう。

 ナディア「うわっ!走って!ルシード!」

 ルシードも慌てて走り出すが、魔女ドリナは魔法で2人の足を遅くしてしまい、あっさりと捕まってしまう。

 魔女ドリナ「そこの二人、待ちなさい!他人の家に無断で入るなんて、いけませんことよ」

 恐怖におびえるナディアとルシード。本物の魔法を受けたのも初めて、思うように体が動かない。焦りを感じ、ナディアが口を開く。

 ナディア「ごめんなさい。これには訳があるの」

 ナディアは魔女ドリナに事の経緯を説明。ルシードがアムルの似顔絵を書き、魔女ドリナに手渡す。

 ナディア「この少年アムルが、バラの針に捕らわれています。あなたの家にあるまじないの薬で解放されると聞いて、私とルシードが取りに来ました」

 ルシードの書いたアムルの似顔絵を見ると、魔女ドリアの頬を涙が伝う。

 魔女ドリナ「この子は、、、、この子は、まぎれもなく私の子よ。どうか、連れて行って」

 ナディアとルシードと魔女ドリナは、アムルのいる場所まで行くことに。ようやく、お互いが対面し、まじないの薬をアムルが飲む。すると、バラの針が徐々に解けていき、アムルは自由の身となった。が、その時、激しい頭痛と共に、その場に崩れ落ちる魔女ドリナ。

 ナディア「大丈夫?ドリナ・・・・・・」

 もがき苦しむ、魔女ドリナ。そして、数分後目を覚ます。以前とはずいぶん雰囲気が違う。解放されたアムルを見て、こう告げる。

 魔女ドリナ(悪性)「おやおや、バラの針を解いてしまうなんて、悪い子だわ。もう一度捕らえてあげるから、おとなしくしなさい!?お前達2人も、一緒に捕らえてやろうか??!!」

 ナディア「何か、雰囲気がおかしいわ・・・・・」

 ルシード「走るから、僕につかまってアムル!!!」

 ナディアとルシードは持ち前の俊足で一気に魔女ドリナ(悪性)から遠ざかる。

 魔女ドリナ(悪性)「ひっひっひ、この私から逃げられるとでも思っているのかい?!出でよ、巨人サイクロプスよ!奴ら3人を見つけ、根絶やしにせよ!!!」

 魔女ドリナ(悪性)が呪文を唱えると、一つ目の大きな巨人が現れる。大きな棍棒を持ち、一振りでありとあらゆる物を吹きとばせるほどの破壊力を秘める。

 サイクロプス「承知。そのすばしっこい3人を捉えればいいのだな」

 魔女ドリナは、次に、狼を召喚し、サイクロプスと共にナディア達を追わせた。

 ルシードはアムルを背負い、ナディアと共に遠くへ逃げる。地図を見れば、何処にもない地点に来てしまう3人。随分とサイクロプスと魔女ドリナから離れたので、一旦休むことに。

 アムル「・・・・・お母さん・・・・・。あれは、お母さんじゃない」

 ナディア「誰かに操られているみたいだったわ。あの魔女ドリナの家にあったあの薬は本物だったようね」

 ルシード「・・・・・アムル・・・・・、元気出して・・・・・」

 アムル「・・・・・うん。でも、なぜ急に変わってしまったの?どうして・・・・・」

 ナディア「きっと何かわけがあるのよ。一緒に解決しましょうね、いい?」

 アムル「ありがとう。僕も精いっぱい頑張るよ!」

 ルシード「僕も、アムルのお母さんを助けたい」

 アムル「ありがとう」

 ナディア「ところで、私とルシードは、何故この空間にいるのか説明していなかったわね」

 アムル「僕と同じ捕らわれているの?」

 ナディア「いいえ。優秀なアレン博士という脳科学者の元で、現実世界からこの電脳空間に飛ばされているの。だから、本体は別の所にあるってこと。わかる?」

 アムル「うーん、よくわからないけど、この世界には実際には存在していないということ?」

 ナディア「あのバラの針につかまっていた時、『ここ』から抜け出せないって言っていたわよね?この空間のことよね?」

 アムル「うん。僕は生まれた時から、『ここ』にいたから。そして、誰かが僕をバラの針に捕らえた」

 ナディア「そこなのよね。貴方をだれが捕らえたのか・・・・・」

 ルシード「誰かが、僕たちの方に向かって走ってくるよ、すごい速さで」

 ナディアが後ろを振り向くと、底には魔女ドリナが召喚した狼が3匹いた。

 爪を立て、牙をむき出しにし、今にも襲い掛からんとする勢いでこちらに向かってくる。

 アムル「僕に任せて」

 アムルは呪文を唱え、サークルを描く。炎が狼に向かって飛び立つ。避ける狼。

 アムル「くっ、もう一度!」

 アムルは再び呪文を唱える。今度は一気に6個の炎の玉を出し、狼に向かって打ち放つ。炎はオオカミに命中し、狼は消滅。ビックリして、アムルの方を見るナディアとルシード。

 ルシード「ねぇねぇ、今の何?僕にも教えてよ~」

 ナディアは魔法について過去の文献をダウンロードし、ルシードに説明する。

 ナディア「古く神々と人間がいた時代、魔法は誰しもが使えた。時が経つにつれ、人間は魔法を悪用し反乱を起こし戦争が起こる。これが神の怒りにふれ、神は堕落した人間から魔法を奪った。一部の特別な人間を除いては」

 ルシード「アムルのお母さんは、魔法使いなんだね。だから、アムルも魔法使えるんだ」

 アムル「・・・・うん」

 ナディア「ねぇ、私思ったのだけど、現実世界でのアムルの本体を探した方が良いと思うの。どう?」

 ルシード「いると、向こうの世界でも遊べるね」

 アムル「・・・・・僕は・・・・・・ここから出られない」

 ナディア「そうね。だから、現実世界でのアムルの本体を、私とルシードで探すわ。あの悪い魔女とサイクロプスに見つからない場所がこの空間にあればいいけど・・・・・」

 ルシードが辺りを見渡すと、すこし離れた所に小屋のような建物がある。3人が近づくと、誰もいないようだ。中に入り、鍵を閉める。この建物の中で待つように言うナディア。アレン博士に連絡を取り、電脳空間から抜け出すナディアとルシード。

 アレン博士「さあ、今日は何か進展はあったかな?」

 ナディアは魔女ドリナの家に行き、まじない薬を取ってきてアムルのバラの針を解いたこと、魔女ドリナがその時急変し、サイクロプスと狼を放ち自分たちを襲ってきたこと、アムルが魔法を使い狼を退治した事をアレン博士に伝えた。

 アレン博士「ほほう、大変興味深い内容だね。そのアムルという少年、助かるといいね。さて、今日はもう疲れただろう、施設に行って休むといい」

 足早に施設を後にするアレン博士。ナディアとルシードも、今日の所は宿泊施設に戻ろうとする。が、ナディアがルシードに声をかける。

 ナディア「ねぇ、ルシード、今からアムルの本体を探すのを手伝ってくれない?」

 ルシード「姉さんは、この施設内にアムルの本体があると思うの?」

 ナディア「そうね。まずはこの施設の全容を知る必要があるわね。ついてきて」 

 

 

  

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

登場人物

 ナディア:体は機械、脳は人間のアンドロイド。
 特技:〇〇、高速移動

 ルシード:正体不明の少年
 特技:似顔絵書き、高速移動

 アレン博士:脳科学者で、偏屈者。

 アムル:アレン博士の所で電脳世界に入った時、ルシードが出会った少年。200年前、脳移植時に事故が起こり、電脳空間に閉じ込められた少年。母は、魔女ドリナ。
 特技:電脳空間時に魔法


アムルが捕らわれている電脳世界

 魔女ドリナ:アムルを電脳空間に閉じ込めた魔女。普段いつも自分の家で、まじないの薬を調合しているが、3日に1回、近くの森、廃墟へ出かける。息子は、アムル。

 森:魔女ドリアが3日に1回訪れる森

 廃墟:魔女ドリアが3日に1回訪れる廃墟

 魔女ドリナ(悪性):魔女ドリナのもう片方の一面。何故悪性に変わるかは不明。
 特技:召喚魔法

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?